54.お忍び皇子と商談する
帝都カーター、OTK商会、その応接室に通されている。
ソファに座りながら、私はスマホをいじってる。
全知全能を使って、今から商談を行う人物を検索していた。
【面白いこと】が書かれていた。
「やや、お待たせして申し訳ないでござるよ!」
ばんっ、と扉が勢いよく開いて、入ってきたのは、分厚い眼鏡をかけた男だった。
身長は180。けっこーでかい。
でも、太ってるし、髪の毛が油でべとべとしてる。
商会のトップとは思えない……と、【普通の人なら】そう思うだろう。
リシアちゃんは立ち上がると、お辞儀する。
「お初にお目にかかります。ゲータ・ニィガ辺境の領地、デッドエンドで領主をしております、リシア・D・キャスターと申します」
「これはご丁寧に! 拙者OTK商会の商会長をしております、【ショー・イーダ】と申すもの! 以後お見知りおきをでござる!」
ふぅん……。
「拙者の顔に何かついてますか? ミカりん殿?」
「いや、別に」
……ま、今はそれはどうでもいいんだ。
「さっそく商談と参りましょうか! どうぞおかけくださいませ」
そもそもリシアちゃんがここに来たのは、デッドエンドに、商人を呼ぶためだ。
商人がいないと、デッドエンドの人たちは生活必需品が買えない。
また、何も売っていないのでは、あの領地に人が訪れない。
「そこで、帝国の大商会である、OTK商会様に、来ていただきたく存じます……!」
とリシアちゃんが要求を述べる。
ショーはニコニコと笑いながら話を聞いてた。
「では、OTK商会はデッドエンドに定期的に商人を送ることにしましょう!」
「! い、いいんですかっ?」
「ええ。ただし、条件がござりまする。デッドエンドで取れる薬草と水を、いただきたいのです」
「薬草と水をお渡しする代わりに、商人様が来てくださる……と?」
「そのとおりでござるよ! どうです、いい話ではありませんか?」
「はいっ! 水も薬草も、うちには腐るほどありますしっ!」
「それは重畳! 我ら商会も喜ぶ、領地の民たちも喜ぶ。お互い、WINーWIN、でござるな!」
……はぁ。
「どうしたでござるか、ミカりん殿?」
「大人げないと思わないわけ?」
ほんとは傍観するつもりだったんだけどね。
あんまりにも、リシアちゃんが不憫だったから。
「どういうことでござるか?」
「あんたの呈示した条件はこう。デッドエンドの薬草と水をよこせ、代わりに商人を派遣する。そうね?」
「そうでござる。良い条件でござろう? 商人の馬車がここへ来るまでにかかる費用は要求しないのでござるから、むしろこっちが少し損をしてるのでござる」
よく言うよこいつ……。
「商人がデッドエンドで商売して、儲けた金は、デッドエンドに一切入ってこないじゃあないのよ」
リシアちゃんが遅まきながら気づく。
こいつの出した条件は、不平等すぎるのだ。
だって、OTK商会は、良質なポーションの素材となる、デッドエンドの水と薬草をゲットできるうえ、デッドエンド相手に商売までできるのだから。
「一見すると相手の要求を快くのんだように見えるけど、実際にはあんたは、自分だけが儲ける仕組みになってるのに、その情報を伏せていた。子ども相手に」
だから、大人げないっていったのだ。
「伏せていたのではないです。言っていなかっただけでござるよ」
何も悪びれもないように言う。
「こうしましょう。薬草と水は買い取らせて貰うでござる。その上で、商人を派遣するというのは?」
「ええっ?」とリシアちゃん。
「駄目。足りない」
「えええええ!?」とリシアちゃん。
ショーがため息をつく。
「ずいぶんとわがままなのですね、ミカりん様は」
「デッドエンドのポーションは、失った手足を蘇らせるほどの強い回復効果があるの。それが大いなる利益を生むことくらい、あんたもわかってるでしょ?」
だというのに、こいつはケチって金をよこさないのである。
「では、何がお望みですか?」
「錬金術師を派遣しなさい。デッドエンドでポーションを作らせて売るためのね」
OTK商会にポーションを作らせて、デッドエンドで売る。こうすれば、リシアちゃんたちは儲かる。
「それでは、うちにうま味がないでござるよ?」
「デッドエンドのポーションを、うちで買ってよそで転売するつもりでしょ、どうせ」
「ふふふふ、あはははは!」
突如として、ショーが笑い出す。
「いやぁ……お強い女性ですな。気に入ったでござるよ~」
「私はあんたみたいなのは嫌いよ。腹の底で何考えてるかわからない、【嘘つき】はね」
このギルマスは最大の隠し事をしてるのだ。
まあ、それを暴くつもりはない。
「つまり、デッドエンド側の要求をまとめると……。1.商人の派遣、2.錬金術師の派遣、ということですな」
「そういうこと。こっちはあんたらに何も払うつもりはないよ」
どうせこいつらデッドエンドのポーションを横流しにするつもりだろうし。
「……それは、少々こちらを舐めすぎでは?」
丸眼鏡の奥で、銀の瞳がこちらを鋭くにらみつけてきた。
「交渉のイニシアチブは、我々OTK商会側が握ってるのですよ?」
「それはどうかな」
私はポケットから、スマホを取り出し、机の上に置く。
「そ、それはぁああああああああ!?」
ショーが身を乗り出してくる。
「漂流物では!?」
「イエス」
「しかもこんな、新品同様の漂流物なんて初めてみました! す、すごい……!」
目を輝かせるショーをよそに、リシアちゃんが首をかしげる。
「ミカりん様、漂流物とはなんでしょう?」
「異世界から流れ着いてくるアイテムのことよ」
ごくまれに、地球産のアイテム……家電とか、本とかが流れ着いてくる。
それらを総称して、漂流物という。
大抵はこっちに流れてくるときに、壊れるから、ほぼゴミなんだけども。
「ミカりん殿、それは我が祖先が持っていたという、スマホではないですかっ!?」
全知全能に書いてあったのである。
ショー・イーダの正体、そしてこいつがほしがるようなものが。
「取引よ。このスマホをあんたにあげる。その代わり……こちらの要求を全てのむこと」
「いや、ミカりん様……? 何を言ってるのですか……?」
リシアちゃんが言う。
「そんな、ペラペラの板きれ一枚で、こちらの言うことを全部聞いてくれるわけが……」
「要求を全て飲もう!」
「ほら、要求を全てのもうって……え、えええええええええええ!?」
リシアちゃんが驚愕の表情を浮かべる。
そりゃそうだ、異世界人である彼女からすれば、こんなのただの板きれにしかみえない。
それ一枚で、相手が言うことを聞くなんてって普通思うだろう。
でも私は知っている。こいつが、異世界のアイテムに目がないってことは。
「交渉成立」
すっ、と私はスマホをショーに渡す。
KAmizonで買ったSIMフリーのやっすいスマホだ。
たった数千のKPで、リシアちゃんの領地に、大商会の商人とお抱えの錬金術師が派遣されてくるのだ。
大もうけといってもいいだろう。
「じゃ、リシアちゃん。交渉成立の握手を」
「は、はいっ!」
リシアちゃんが立ち上がって、ショーと握手する。
「とてもいい商談でござった! これからも、我が商会をごひいきに」
「は、はいっ! こちらこそっ!」
よし、目標達成。
「さっさと帰りましょ」
リシアちゃんが隣にやってきて、深々と頭を下げる。
「ありがとうございます、ミカりん様! あなた様のおかげで、商談がうまくいきましたっ! なんとお礼を言って良いやら」
「気にしないで。私、子ども好きだし。それに……子どもをいじめる大人げない大人は、だいっきらいだしね」
私はショーをじとっとにらみつける。
あいつは「誰のことですかなぁ~」とかのたまってる。あんただよ。
「ではミカりん殿。また」
「じゃあね、皇子様」
「!?」
~~~~~~
ショー・イーダ・ディ・マデューカス
マデューカス帝国第二皇子。
身分を隠し、OTK商会のギルマスをやっている。
魔道具、特に漂流物に興味を持っている
~~~~~~
こいつの正体を最初から私は知っていたのだ。
だから、交渉を有利に運べたのである。
「……面白い女性ですね、あなたは」
ショーが眼鏡を外す。
そこには……銀髪の美青年が立っていた。
「え、えええ!? へ、変身した!?」
「変装してたんでしょ」
私と一緒で。
イケメン皇子となったショーがこちらに近づいてきて、私に微笑みかける。
「ミカりん殿。どうでしょう、我が婚約者になってはいただけないでしょうか?」
「えーー!?」とリシアちゃん。
私は……にっこり笑って言う。
「絶対、いや」
「えええええええええええ!?」
とリシアちゃんは叫ぶ。
「それは残念。ですが諦めませんよ」
「悪いけど結婚は考えてないんで。じゃっ!」
私はリシアちゃんとエルメスを連れて、その場を後にするのだった。
「ふふふ……ミカりん殿か。面白い女性だ。僕は貴女をいっとう気に入ってしまったよ」
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