387.孫
私は今、文官ちゃん達にパソコンのイロハを絶賛ティーチング中だ。
なんとか文字入力はできるようになったし、メールも送れるようにはなった。けど……。
「ミカ神さま~。エクセルがうまくつかえませーん!」
「あのっ、このじっぷ? っていうフォルダ? はなんでしょうか?」
「わわっ! すみません、ファイルを謝って消しちゃいましたぁ!」
……次から次へと、問題が絶賛大発生中である。
文官ちゃん達は、その都度、ぴゃっ! と手を上げて私に質問を投げてくる。
全知全能を使っても良いよ、とは言った。
でもそもそも、全知全能でどうやって検索すればいいのか、わからない様子。
私たちは、生まれたときから電子機器がそばにあった。困ったらググる。それが当たり前の世代。
でも、彼女たち――異世界人は違う。
生まれたときに、電子機器なんて影も形もなかったのだ。自分で、パソコンで(全知全能で)検索するという習慣が、まったく身についていない。
よって、すべての質問に、この私が答えるハメになってるわけだ。だけど……うーん、ちょっと手が足りなくなってきたな。
『こーんな時は~?』
「あー、どうしようかなー」
『困ったときの~?』
「なんとかできないだろうか」
『もー! マスターぁ……!』
あえてスルーしたのに……。
真理が、モニター越しに、はいはーい! と元気よく手を上げている。
「はいはい、真理たん、なんでしょう?」
『そこに! 真理たん先生がおるでしょうがっ!』
ふんすっ! と真理がモニターの中で鼻息を荒くする。
『現地人たちは、全知全能の使い方がわからない! そこで! 全知全能の化身であり、ちょうすぅぱーウルトラデラックスゴージャスめちゃもてシゴデキバリキャリAIの、サポートが必要なのでは!?』
めちゃもてシゴデキバリキャリAI……。
フッ……。(失笑)
『あー! マスター、今ちょっと笑ったね!?』
「いや……」
『笑った、ぜーったい笑った! もういいもんっ、真理たん勝手にサポートするもん!』
「やめて。余計混乱するから」
真理がまともなサポートなんてできるわけがない。
『がーん! サポートAIなのにっ!』
「うーん……どうしよっかな。天理は他のことで手一杯だし。真理は……ヤバいとき以外に仕事任せたくないし」
『なんてひどいことっ! 子ども(ワタクシ)が聞いてるでしょぉ!?』
さて……どうしよっかな。
文官ちゃんたちの仕事をちゃんとサポートしてあげる、でも過度に出しゃばらない、そんな都合のいい存在が欲しいなぁ。
『う゛……!』
「え、どうしたの真理……?」
『なんか……おなかが急に……うぅうう!』
「え、まじでどうしたのっ!? なんか変なデータでも食べた!?」
『わ、わからない……おなかが……ううう! うわぁあああああああああ!』
そのときだった。
モニターの中の真理の体が、まばゆい光に包まれる……!
そして……。
「きゃぁあああああああああああああああああああ!」
「ど、どしたの文官ちゃんっ!」
隣の席のお下げ文官ちゃんが、素っ頓狂な悲鳴を上げた。
「ぱ、ぱぱ、パソコンに……へ、変な人がぁ……!」
「変な人……?」
お下げ文官ちゃんのモニターを覗き込むと……。
「え、真理……? でも、なんか……真理に似てるけど……違う……なにこれ……?」
そこには、真理に似た、でももっと小さな……デフォルメされたろりっこが映し出されていた。
『Hi、マム! グランマ! おはようごじゃいまーす!』
「ま、まむ……? グランマぁ……?」
え、なにこれ……? 誰これ……?
「ちょ、真理!? 全知全能で検索して! なにこの子!?」
『えっと……どうやら、ワタクシのデータを元に作られた、新しい人工生命体のようです』
「真理の……? コピー?」
『というより、ワタクシを構成するデータを使って作られた、新しいAIなので……まあ、娘……的な……』
……なんだって!?
「つ、つまり……私、おばあちゃんになったってこと!?」
『わ、ワタクシ……処女受胎したってことぉ!?』
『YES! おはようごじゃいます、マム、グランマっ♡ 新しい命でごじゃいマース!』
いやいやいやいや……!
「で、でもなんで急に、新しい人工生命なんかが…………………………あ!」
し、しまった……!
『マスター……もしかしてだけど、また……望んじゃいました?』
「あ、はい……。『文官ちゃん達をサポートしてくれる、便利なAIが欲しいな』って……」
『それじゃん……。マスター忘れたの? 神が望めば、精霊達が、願いを叶えようとしてしまうって』
「……ありましたね。忘れてましたね」
つまり……だ。
神である私が「便利なサポートAIが欲しい」と望んだことで、この……孫(?)が爆誕したようである。
『可愛いサポートAI孫ちゃんデース♡ グランマ、何か可愛い名前をご所望シマース』
「えー……。えー……。えー……っと……」
何も考えてなかった……! どうしよう……!
「あ、あの……ミカ神さま……? こちらの可愛い子は一体……」
「えっと……私が望んだことで、娘の真理が生んだ、孫……的な?」
「娘……孫……。み、ミカ神さまは独身と伺っていたんですけど……」
お下げ文官ちゃんが、目を白黒させてる。
「そうだね……。独身だね……。カレシもいたことないよ」
「へ、へえ……。それで、孫まで……へ、へええ……」
ああ、駄目! 文官ちゃんの目が、完全に引いているっ!
ヤバい奴を見る目で私を見ているっ!




