385.後遺症
サツマ君に頼んで、パソコンのキーボードを改造してもらった。
書かれているローマ字を、この世界のジンナー文字へと変えてもらうだけの、簡単なお仕事だ。
コンッ、とサツマ君が神鎚ミョルニルでキーボードを軽くたたく。
すると錬成スキルが発動し、キーの一つ一つの文字が、ぐにゃり、と液体のように変形。そして、見慣れないジンナー文字へと変わっていく……らしい。
「あらん……? なんか……」
「どうしたんですか、ミカ神様?」
隣で見ていたおさげ文官ちゃんが、不思議そうに私に尋ねてくる。
「いや……。あのさ、この文字って……本当にジンナー文字になってる?」
「? ええ。これで読めるようになりました! さっきまでは、見たこともない記号が書かれていましたし……」
ほぉん……? おおん?
『どうしたのマスター?』
「いや、なんか……私にはまだ、普通にローマ字に見えるんだけど」
サツマ君たちが、ちゃんと文字を変えてくれたはずなのに。
私の目には、変わる前と全く同じキーボードに見えるのだ。
『ああ、それは多分、召喚された時にマスターの脳が改造されてるからですよ』
………………ん?
「ちょ、どういうこと!?」
『? だからー、現実世界の人が、こっちの世界にすぐ適応できるように、召喚魔法には異世界言語を自動翻訳する機能がついてるんですよ。脳みそに直接』
「なっ!?」
なんじゃそりゃ……!
『だって、そうしないとマスター、こっちで喋ったり文字を書いたりできないでしょ?』
「そりゃまあ、そうだけど……」
え、つまり……。あの神様が、私をこっちに送る時、ついでに私の脳みそをいじってたってこと……?
だから、異世界の文字や言葉が、最初から普通に使えたし、理解できたってことぉ!?
「まじか……。そうだったんだ……」
『ちなみに、その改造に失敗して脳がパーになることもあるらしいですよ……。あ、分かった! マスターの知能が最近ちょっと低下してるの、その時の後遺症が今になって現れてるからですね……!』
「一言余計じゃ、コラ」




