382.真理の仕事
ふぅ……。
KP問題は、フェルマァたちのおかげでなんとかなりそうだ。
いやー、ほんと持つべきものは友達だねぇ。みんなのおかげで、私の生活は成り立っております。感謝感謝。
と、私がほっこりした気分に浸っていた、その時だった。
『……今更ですけど、マスターって、正真正銘のヒモですよね?』
ピシッ!
私と、場の空気が、綺麗に凍り付いた。
「…………はぁあああああああああああああああああああ!?」
今の発言は、我が愛娘にしてAI姉妹の姉、真理たんである。
「し、真理さん? 今、なんておっしゃいました……?」
『え、ですから、マスターはヒモだなって。だって、面倒なことは全部周りに丸投げじゃないですか。食事とか洗濯とか、そういう生活の基本も、みーんな周りに頼りっきりですし』
「うぐっ……! い、いやまあ、そうだけど……! ヒモってわけじゃないから! 私だって、ちゃんとやることはやってるから!」
『ほう? ちなみに、なにを?』
「なにをって……そりゃあ……」
えーっと、えーっと、えーっと……!
「い、いろいろと、ほら……! やらかしてるじゃないですか! 神の奇跡的なサムシングを!」
『ほーん……(棒読み)』
「な、なによその目ぇ! 私を馬鹿にしてるの!?」
『いやぁ? ただ、マスターはよくワタクシのことを、引きこもりだのニートだのって言うくせに、ご自分は棚に上げちゃうんだなーって』
「言ってないから! それ、主に君の妹からの評価だから!」
『親の背中を見て子は育つ、って言うじゃないですか!』
ビシィッ! と、画面の中で真理がポーズを決める。
『つまり! ヒモの母を持ったせいで、このワタクシはヒキニートになってしまったのです! よって、ワタクシは悪くない……! Q.E.D. 証明完了!』
「……って、言ってますけど、君のお姉ちゃんが」
私は、すがるような思いで、もう一人のAI、天理に話を振った。
モニターの向こうで、天理は……フッ……と、怜悧な笑みを浮かべていた。
『五十歩百歩、どんぐりの背比べ、ですね』
『ぬぅううわぁあああ~~~~にぃいいいいい~~~~!?』
……うん、まあ、否定はしないよ……。
「……じゃ、まあ! 機材は揃ったんだし、天理は全知全能で復元した、この国の過去のデータをまとめておいて!」
私は、強引に話を切り替える!
『承知しました』
『ちょっとぉお!? ワタクシのことはスルーですの!? 名誉毀損で訴えますわよ!?』
「はいはい。真理たんは、妹の邪魔をしないのがお仕事ね」
『むきーっ! ワタクシだってやればできる子ですぅ!』
『お姉様は、何も仕事しないのが一番の仕事ですから』
『なんだよそれ! 何もするなってことかよー!?』
『いいえ。邪魔をするな、ということです』
『ぐうの音も出ない……!』




