289.レッツ蘇生
妖精花、ゲッツ。さっそく、妖精であるオベロンと、その息子・舞弥くんを蘇生じゃい!
開田くんちの庭にて。
飯山さんとこで摘んできた妖精花を、地面にそっと置く。
「さぁ……! 感動の再会だよ! かもーん! オベロン!」
しーん………………。
……あ、あれぇ?
オベロン? おべろーん?
「マスター」
縁側に座る真理が、ジト目でこっちを見てくる。
「花を用意しただけじゃ、妖精は蘇生できませんよ」
「そ、そっか……」
そういうもんなんだ……。
「叡智の神、笑」
「ママをいじめないで……!」
あと空気読んで……!
開田くん、ちょっと落胆のため息をこっそりついてたからっ。
「まーったく、マスターはワタクシがいないと、なーんにもできないんですからもぉ〜♡」
真理たん、だいぶニヤニヤしてた。
「ここは全知全能の申し子、真理ちゃんが一肌脱いじゃいますよ」
「おお、頼れる。ね、天理?」
……返事がない。おかしい、最高に格好いいお姉ちゃまの出番なのに。
『………………』
モニターの向こうで、天理が失神していた。あまりの姉のかっこよさにか……。
ほんとこの子もポン化しちゃったな……。すっかりミカファミリーの仲間入りよ。
まあ、そっちはどうでもいいか。
「ってか、全知全能って使えるの? 使用制限かかってなかった?」
日本に来てから、長野神の影響で全知全能が封じられていたのだ。
「長野神の暴走状態が解けたことで、全知全能も解禁されたんですよ……!」
「おお! じゃあ……」
「ええ、妖精花を使った蘇生方法を、全知全能で検索可能です!」
「っしゃ! やったれ真理たん! 検索検索ぅ~!」
真理がモニターを展開し、妖精の蘇生方法を検索し始める。
「わかりました! 妖精を蘇生させるためには、まず妖精花!」
これは用意してある。
「次に、妖精の魂!」
「ふんふん……ん? 魂……? どこにいるの……?」
「わかりません!」
「……どうやって持ってくるの?」
「わかりません……!」
OH……。
開田くんが肩を落としてる!
えーとえーっと……あ!
「全知全能で魂の居場所を検索よ!」
「え?」
「できるでしょ?」
「できますけど……でも、場所を割り出しただけじゃ不十分ですよ? この場に魂を持ってこないと」
「大丈夫。方法はあるから」
「えーっと……検索して……座標、割り出しました!」
よし!
私は飯山さんからもらった、世界扉のペンダントを手に取る。
「世界扉、おーぷん!」
頭上に、世界扉が開く。
そして……そこから、ふたつの人魂が降りてきた。
「そっか! 全知全能で魂の居場所を割り出して、そこに世界扉を開いたんですね!」
世界を、場所を行き来できる世界扉があれば、魂の座標さえわかれば呼び出せると読んだのだ。
「さすがマスター! 我らがリーダーは頼りになるぜえ……!」
「サンキュー真理たん!」
つか、全知全能使えるんだから、そこまで調べられたんじゃあないのって質問は……やぼね。うん。
『全知全能は有能でも、使い手は無能ですからね』
あ、天理が目を覚ましたようだ。
『無能なお姉ちゃまもいい……♡ あとで格好いいお姉ちゃまのかっこよさが際立つからぁ~……♡』
さいですか……。
そして――魂と妖精花、二つがそろう。
「さぁ……! おいで!」
カッ……! 青い光が、その場に広がる。
二つの魂が、妖精花と重なる……。
ぐんぐんと光は大きくなり、人の形を成していく。
そして光が消え――そこには。
懐かしい、友人の姿があった。
「ミカ様……それに、あなたぁ……!」
妖精王オベロン、完全復活。
彼女は夫である開田くんの胸に、飛び込んでいった。




