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287.立派になったね



 飯山さんからもらった、複製の世界扉ワールド・ドア


 それに触れた瞬間、使い方が頭の中に流れ込んできた。

 たとえるなら、手足の動かし方。あれって、誰かに習ったわけじゃないよね?


 それと同じ。こうすればいい、という“最適な操作法”が、私の中に自然と定着していた。


「開け!」


 ペンダントが光り輝く。

 次の瞬間、目の前に世界扉ワールド・ドアが開かれる。


 私は真理とともに、それをくぐった。


 ぐにゃり、と視界がゆがむ。

 あれだ……天理に異世界転送してもらったときと、同じ感覚。


 上下左右が反転し、立っていられない。

 軽い船酔いのような不快感を覚えた後——


「お、戻ってきた……?」


 私は、開田くんちの庭へと帰ってきた。


「数日しか経ってないのに、ずいぶん昔に出た気がするわ」

「実際、執筆には数ヶ月かかってますからね」


 真理たん、またメタ発言してるし……。


「何者だ!」


 庭を見回っていた黒服の男が、私に気づいて警戒を強める。

 懐から銃を取り出してきて……って、銃ぅ!? ここ日本ですよ!?


 なんで銃を携帯してるんですか……やれやれ。


「ひかえおろう! ここにおわすお方をどなたと心得る! 恐れ多くも先の副将軍、ナガノミカであられるぞ! ずがたかーい! ひかえおろう!」


 真理たん、私の背中に隠れながらなに叫んでるの……。


「ナガノミカ……高原様のご友人の!? し、失礼しましたぁぁああ……!」


 ずしゃあっ! と黒服さんが勢いよく土下座する。


「いや、あれは五体投地ですね」


 したり顔で解説する真理たん。

 似たようなもんじゃないの……?


「おやおや、これは……」


 と、真理がなにかに気づいたような顔になる。


「そっか、なるほど……そういうことね! ふっふー!」


「なにその無駄なハイテンション」

「いやぁ! なんでもないですよ! さ、それより開田くんとこ行きまっしょい!」


 黒服さんを立たせ、私はそのまま開田くんのもとへ。


 客間に通されると、どたどたと足音を立てて、彼が駆け込んできた。


「ミカ! 戻ったか……!」

「うん、ただいま」


 開田くんは汗だくになりながら、私の元へやってくる。


「無事でなによりだ……部下から聞いていた。かなり……危険な状況だったと」


 あ、そうなんだ。部下……次郎太さんかな。


 たしかに、あれは危なかった。でも、まあ。


「だいじょーぶだいじょーぶ。余裕だったよ」


 ……ほんとは、けっこうギリギリだった。でも、そんなの言ってもしょうがない。

 友達に、心配なんてさせたくないし。

 (多分、部下も本当のヤバさまではわかってないだろうしね)


「ふふん、そうですよ。マスターからすれば世界を救うくらい、余裕のよっちゃ——あいたっ!」


 ああもう……真理たんってば。

 天理、叱ってやって。


『いやです』

「いやってなに!?」

『おねえちゃまはポンコツな方が、決めるときにかっこよさが際立つんです~♡』


 え、えぇ~!?

 天理さん、あんたもしかして……真理化してる!?


「む、失礼な。真理化じゃなくて、マスター化でしょ? 子は親に似るんですよ」

「私に似てる……って、君らが……?」


 似てるかな……似てるかも……わからん……!

 誰かツッコミ連れてきてー!

 オベロォォォォォォォン!!


「ミカ。とりあえず、状況報告を頼めるか?」


 開田くんが、優しく微笑んでいる。

 でも……あれれ? なーんか、目が全然笑ってないよ?


「そりゃこの人、いまや日本の総理大臣ですもんね」


 そ、そうだった……。彼はもう、日本のトップなんだ。

 国民全員背負ってるんだもんね……。


 ほんと、立派になったね。開田くん。



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