【連載版】山暮らし聖女の異世界スローライフ〜聖女召喚された私、偽物だとして雪山に廃棄されるも、チートスキル【インターネット】と神の力で快適に暮らしてる。今更私が真の聖女だと気付いたようですがもう遅い

268．フェンリルにかかった呪いを解く

　何はともあれ、フェルを鎮めることに成功した……のだが。

『む！　マスター、フェルを拘束してください』

「え？　いいけど……万象斥引力《グラビティ・フォース》」

　ぐしゃり、とフェルが地面にめり込む。

『がるるるるうぅう！　コロスコロスコロスコロスぅううううううううううううううううううううう！』

　フェルが血走った目でこちらをにらみつけてくる。その目には理性を全く感じられなかった。

　私への純粋な殺意しかない。

「まだ県《あがた》の呪いがとけてないの？」

『肯定ですマスター。つねこの時以上の、非常に強力な暗示がかけられています』

　にゃるほどねー。

　だから青嵐《せいらん》の水で解呪できないってわけか。

「神獣を従えさせるほどの、強力な暗示だ。これは……誰にも解くことができないだろう」

　と贄川刑事が訳知り顔で言う。

『あまりそういう強い言葉を使わないほうがいいですよ？』

　と真理。

「どうしてだい？　真理くん」

『バカに見えるので』

「は……？」

　私は暴れるフェルに向かって、「解呪《ディスペル》」と魔法をかける。

『ぐ、がぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ！』

　びたんびたん、とフェルが体をくねらせる。苦悶の表情を浮かべている。

　だが、ほどなくして、フェルは大人しくなる。

『こ、こは……』

「なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい！？」

　贄川刑事が叫ぶ。

「ば、バカな！？　神獣を従えさせるほどの強力な呪いを？　一発で解呪するなんて！　なんてすごいんだ……！」

『ね？　バカに見えちゃうでしょ？』

　うーん、真理たん辛辣ぅ。

　ま。何はともあれ治って良かったや。

「初めまして？　かな。私は長野　美香」

『ナガノカミ？』

「長野美香です。お間違いないように」

『あ、ああ……改めて、フェルだ。すまなかったな、手間をかけさせた』

「ほんとよもー」

　こっちは長野神のせいで、横道にそれまくってるよ。

　本来の私の目的は、開田くんのために、妖精花を取ってくることだったんだし。

『異世界に帰ることが第一目標では？』

　と天理ちゃんのツッコミ。それもある。

「で、君はどこまで把握してるの？」

『カイトが病床に伏し、動揺してるところに、県《あがた》のクソ野郎に暗示をかけられたところまで』

　カイト……？

「長野神の名前だ。界人。飯山界人」

　ふぅん、カイトさんって人が長野神なんだ。

　まあ、私にも名前があるんだから、そりゃ当然か。

　……当然か？

「あれ、なんか名前の漢字からして、日本人？」

「そうだが、どうした？」

「いや……てっきり駄女神たちみたいに、生まれ持っての神様かと思ってたんだけど……違うの？」

「ああ」

　と刑事が首肯する。

「元は人間だったのだが、どんどんと強くなり、最終的に長野の神になった」

「えー……？　なにそれ、そんなバカな話って………………………………ありそうね」

　どっかで聞いたような話だし。

『マスターと同じ境遇ですよね』

『作者が設定考えるの面倒くさくて、設定流用してるだけじゃあないですか～？』

　真理ちゃんたまによくわからないこと言うね……。

「で、その界人さんとやらは、病気なの？」

『ああ。ある日突然、日に日に体調が悪くなっていってな。県《あがた》は、それは信者数が減ったせいだと思い込んだらしい』

　……信者が減ると、神様って体調悪くなるもんなの？

「へい真理、そういうもんなの？」

『しらーん』

「おい全知全能……。なんで知らないのよ」

『調べるのめんどくさいんだもぉん』

　……あかん、真理たんダメダメモードに入ってる……！

「天理、真理のお尻叩いてあげて」

『ＮＯ』

「ほわい？」

『ワタシは気づいたのです。この女が普段ダメダメであるほど、やる気スイッチの入ったおねえちゃまが、かっこ良く映るって……♡』

　あんれぇ～？

　天理さん？

　あなたもなんか、普段からポン化するようになってません……？