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253.ツッコミ警察



 量産ミカたちは、飛翔魔法を使って、長野県の各地へ飛ぶ。


「すごい……」


 飛んでいった量産ミカたちをみて、贄川刑事がつぶやく。


「さ、うちらも飛んでくか。時間ないし」


 ふわり……と私と贄川刑事の体が浮く。


「う、浮いた!? と、飛んでる!?」


 いったい、何に驚いてるんだろう。たかが、空を飛んでいるくらいなのに。


『ワタシは突っ込みません。疲れるので』

『ワタクシもツッコミキャラじゃあないから、突っ込みません』


 AI姉妹がそろってスルーする。

 えー……。お母さん寂しいなぁ。


「次郎太さん、ここからは私、自分で安曇野向うね。開田くんとこ戻ってて」


 彼には申し訳ないけど、こっからはもっと妨害がくると思うので、一般人の彼には戦いについて来れない。



「承知しやした」

「次郎太!? なんで驚かないの!? ぼく空飛んでるんだけど!? ねえ!?」


「長野さまは凄いお方と、高原さまからうかがってまさぁ。だから、驚きやせん」

「いやだからって……空飛んでるんだよ!? ねえ!? 次郎太!? ねえ!? やばくない!?」


 どこら辺がやばいんだろ……?

 空くらい普通に飛ぶよねえ?


「んじゃ、いこっか刑事さん」

「あ、ちょ!?」


 バビュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!


 私は諏訪湖を離れる。

 

「安曇野ってどっち?」

諏訪ここから北へ向かった場所にあります』


『あれ? 天理? 北って上だよね?』

『おまえもう真理(Sinri)って名前やめろよ。名前負けしてんだよ、知能が。パー理とかポン理とかにしとけよ』


『なんだよパー理って!? お姉ちゃん好きなんじゃあなかったの!?』

「お姉ちゃんは好きだけど、お前は嫌い」

『訳わかんないよっ!』


 微笑ましいAI姉妹の会話を聞きながら、贄川刑事が言う。


「君たち……状況わかってるのかいっ? 今……トンデモナイ、大変な事態に直面してるんだよっ!?」


 おお、ツッコミ。

 ここに、欲しかった……ツッコミキャラがっ。


「サンキュー、贄川刑事。君が今必要だったところだよ。ツッコミほしかったんだ」

「君もあんまりふざけてないで、ちゃんとしてほしいんだけどねっ、長野さん!?」


 え、私別にふざけてないよね……?


『マスターが真面目だったときのほうが少ないですよ』

『マスターって人の命掛かってるときくらいしか、真剣にならないですよねぇ』


『誰かさんそっくりだな』

『へ? 誰?』


 そんな私たち三人の会話を聞いて、贄川刑事が言う。


「ずっと思っていたんだけど、あのね、今日本のピンチなんだよ? なんでそんなノリが軽いの? わかってるのかい? 今だいぶヤバい事態にいるって」

「わかってるって」


 長野神の配下、あがたが、神の眷属を使って、各地で悪さをしてる。

 その被害が、長野以外にも伝播しようとしている。


「でしょ?」

「君はそこまで事態を認識してるのに、どうしてふざけてるんだいっ?」


「いや別にふざけてないけど……」


 え、私ずっと真面目ですよね?


「さっきから言おうと思っていたけどね、君、空を飛ぶ魔法があるんでしょう?」

「そうだね。それが?」


「なんで、最初からそれ使わなかったんだいっ? それ使えば、長野なんてひとっ飛びではなかったのかなっ?」


 ……いやまあ、そうだけど。


「疲れるし」

「ほら真面目じゃない……! 君は、高原さんの奥さんを、助けようとしていたんじゃあなかったのかいっ?」


「え、そうだけど」

「そうだよね? でも、なのに疲れるから~とか言ってるの!?」

「うん」

「うんて……」


 はぁあああ、と贄川刑事がため息をつく。なんだよぅ。


「私は私なりに真剣にやってるよ?」

「本当にぃ?」


 むしろふざけてるのは、私って言うより、真理のような気がするけどね。


『むむむ! マスター! 敵です!』


 真理が敵の魔力を感知したらしい。

 私は空中で止まる。


「どうしたんだい?」

「敵が来る」

「敵……? 一体どこに……?」


 ドゴォオオン!


「うわああああ!? な、なんだ!? いきなり爆発が起きたぞ!?」


 私めがけて、どうやら魔法を撃ってきたようだ。

 魔法が飛んできた方向を見やる。


 竜人型の、魔族だった。


「あ、キエリュウだ」

「き、きえ……なんだねそれは?」

「魔族の名前。ほら」


 スッ……と私は前方を指さす。

 見慣れた姿の、魔族が居た。


 二足歩行する、デカいトカゲ。キエリュウ一族だって一発でわかる。

 うわー、まじかー。またこいつかよぉー。

 あきたわー。


『絶対作者、敵を考えるの面倒くさくなってますよね? とりあえずキエリュウだしておけって』


 真理が訳わかんないこと言ってる。


「まあ、でも勘弁して欲しいよねー。まーたキエリュウってさぁー。どうせ瞬殺されるのに……って、どうしたの? 贄川刑事?」


 隣にいる贄川刑事は、大汗をかいている。

 はあ……はあ……と荒い呼吸を繰り返していた。


 そして、がたがたがた、と体を震わせている。


「き、君は……あ、あのバケモノを見て……なんとも思わないのか……?」


 バケモノ……?


「え、どこどこ?」

『マスターのこと?』

「もー、真理~。私はバケモノじゃあないよ? 神様でしょ~?」

『そっか~』


 あはは、と笑う私たちに、奇異な目を向ける……贄川刑事。


「……あんな、恐ろしい爆発の魔法を使う相手を前にして、笑っている……クレイジーだ」

『イエス。こいつら、クレイジーなんですよ』

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