241.毒ガスの正体
私は天理に言う。
「諏訪湖のヘドロって、近づくとヤバい感じのもの?」
『肯定です。市内病院のカルテデータを閲覧したところ、諏訪湖の近くに住んでいる人ほど、重症のようです』
全知全能を制限されている状態でも、彼女はできる限り、必要とされる情報を抜いてきてくれたようだ。
「ヘドロが、毒ガスを出してるってこと?」
『その可能性が非常に高いです』
なるほど……。毒ガスが発生してるところへ、無策でいったら、私らまで病気になってしまう可能性があると。
『ちなみに毒ガスの成分も、全知全能で検索不可能です』
「てことは、毒ガスを調べる方法を調べてみるかー」
『もう検索済みです』
「早い……」
『それと公安に連絡を入れてあります。諏訪湖の封鎖はすでに済んでます』
「お、おう……」
有能っていうか……。
ちょっと仕事早すぎて、怖いくらいだ。
「マスター、毒ガスの成分検索には、サンプルを採取して、術式解析を行えば解析できるようです」
真理が急に真面目に働き出した。
ふざけてる場合じゃあないって気づいたようね。
「じゃあサンプルを採取してくるね」
「って、どうやるんです?」
「簡単。■!」
私が居るのは、諏訪のサービスエリア。
そこから、諏訪湖の方角めがけて、遠隔で■を開く。
周囲の空気を■の中に納める。
「ほい、サンプル回収」
『では、サンプルの解析をワタシが行います』
「頼むよ天理」
そのときだ。
ドサッ……と何かが倒れる音がした。
振り返ると、そこにはグラサン刑事の贄川さんがいた。
「げえ……贄川さん……なんで……?」
『マスターは公安にマークされてるので』
あ、なるほどね……。
「あ、あ、あ、アイテムボックスを、え、遠隔操作ぁあああああああああああああああああああ!?」
贄川刑事が驚愕しながら叫ぶ。
「アイテムボックスって、たしか目の前にある物体を、異空間に入れるスキルだろう!?」
がしっ、と刑事が私の肩を掴む。
「遠隔でアイテムボックスを開くってどういうことなんだいっ!?」
「どういうことって言われても……」
「後そもそも空間系の異能って激レアな異能なんだけど!?」
「へ、へー……そうなんすか」
「そうなんだよ! 空間操作系に分類する異能はそもそも貴重だし、遠隔で空間に収納する異能なんて聞いたこと無い!」
「へ、へーえ……あ、あの落ち着いて贄川刑事……」
後ろからぬぅ、とサングラスをかけた巨漢が現れ、がしぃ! と贄川刑事を羽交い締めにする。
「次郎太!」
「じろうた……?」
ああ、私らをここまで運んでくれた、贄川息子さんのことか。
「次郎太、なんで止めるんだいっ! これは凄いことだよ!?」
「おっとう、落ち着いてくだせえ。長野さまが引いていやす」
「そ、そうかい……?」
「ええ。長野さまは婦女子でさぁ。知らない怪しいおっさんに近寄られたら、嫌に思うもんでさぁ」
「そ、そうかい?」
贄川刑事さんが私に尋ねてくる。答えにくいことを……。
「ちょ、ちょっと距離は取ってほしかなーって思ってました」
「そ、そうかい……すまないね……」
と刑事さんが謝る。
ぺこり、と贄川息子……じゃあなくて、次郎太さんが頭を下げる。
「父が迷惑かけてすみませんでさぁ」
「あ、いや、いいよ。別に気にしてないし」
まあ、ちょうどいいか。
「実は贄川刑事さん。諏訪湖に異常が起きてるようなんだけど……」
とりあえず公安の力を借りた方が、スムーズだと思ったので、私は彼に情報を共有することにする。
「ほいこれ捜査資料ですよぅ」
真理が空中にモニターを出現させる。
ドサッ! と贄川刑事が尻餅をつく。
「く、空中にスマホのようなモニターを出現させるだと!? なんだこの技術!? 凄すぎる! 一体どうなってるんだ!?」
「あの、ふざけてないで、捜査資料読んでくれますか?」
真理が真顔でそういうと、刑事さんは「あ、はい……」と大人しくなるのだった。




