表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

181/404

181.日本人との、邂逅



 スキュラの正体は、元地球人で、しかも日本人の少年だった。

 場所は変わって、エア・バードの中。


 コックピット内。


「な、なんだ!? どこなんだここは!?」


 完全に、少年が怯えきっていた。

 あれ、さっきは冷静だったのに……?


「そりゃ、転移のスキルを目の前で使ったからですよ」


 呆れたように、真理が言う。

 あ、そっか。一般人は、転移スキルなんて見たことないもんね。


「お、おまえは……なんだ!? 化け物か!?」

「違う違う。私は長野 美香。君と同じ日本人だって」


「う、嘘をつくな!?」


 嘘じゃあないんだけどなぁ。


「嘘では無いが、真実でもないでしょう? マスターは日本人ですが、神ですからね」

「神!? なんだ神って!? 意味が分からないぞ!?」


 あーあ、開田くんさらに混乱してるようだ。 そりゃそうだ。いきなり出てきて、神とか名乗る怪しい人物が、謎のチカラで転移なんてさせちゃあね……。


 うーん、どうしよう。

 事情……聞くのは簡単だ。全知全能インターネットで検索すればいい。


 けれど……相手の個人情報を、相手の許可無く覗くのは、ためらわれる。プライバシーってもんが開田くんにもあるわけだし。


 ならば、どうする?

 とりあえず……本人から事情を聞きたい。なんで日本人がここにいるのかなって。


 そのためには、落ち着いて貰う必要がある。なら……。


「まあまあ、開田君。落ち着いて」

「落ち着いていられるか!」


 ちゃきっ、と衣服から、小型の拳銃を取り出す。

 警察が使ってるものとは、異なる。なんか……安っぽい。


「ぼくを、元の場所へ返せ! さもなくば……! 撃つ!」

「ミカ神さま。ここはわたしが……」


 オベロンが魔法を使って無力化しようとしてる。

 でもこの子の、妖精王だ。力が強すぎる。


 下手したら殺しちゃうかも。まあ、すぐに蘇生すりゃいい話ではあるんだけど。

 蘇生できるからって、殺す必要はない。死ねば痛いんだから。


「オベロン、駄目。下がってて」

「しかし……」


 私はオベロンを目で制する。彼女は、しぶしぶうなずいてくれた。ありがとう。


「開田君。銃を下ろしてちょうだい。まずは話し合おう」

「く、来るな! 来ると……ほ、ほんとに撃つぞ!?」


 かたかた……と開田君が震えている。人を撃つのは初めてなのかな……?

 てゆーか、なんで現代人が銃とか持ってるんだろう。


 しかも軍服着てるし。もしかして……現代人じゃあないのかな?

 気になることはたくさんある。けど……なんにしても、まずは対話だ。


「落ち着いて」

「う、うわぁあああああ! 来るなぁあああああああ!」


 パンッ……! と開田君が引き金を引く。

 銃弾が……地面に当たる。震えてるせいで、狙いが定まらなかったんだろう。


 今のうちだ。

 私は彼に近づいて、手を握る。


 ……冷たい手。とても緊張してる様子だ。そりゃそうだ。こんな訳分からない状況にいるんだから。


「落ち着いて、開田君。大丈夫、大丈夫だから」

「くっっ! なんて馬鹿力……! やはり化け物か……!」


「いや化け物じゃあなくて、私も日本人だってば」

「それをどう証明するというのだ!?」


 どうって……うーん。どうしょうめいするか……。

 あいあむ日本じーん、って言っても信じてもらえない……よねえ。


 うーん……。ムズい。日本人の証明なんて……。

 日本語をしゃべってる時点で日本人って信じてもらえないし。これは難易度高いミッション……。


 そのときだった。 


 ぐぅうう~~~~~~~~………………。


「え? 君……もしかしてお腹すいているの?」


 開田君から、大きなお腹の音が聞こえてきたのだ。


「ち、ちがう!」


 開田君が顔を真っ赤にして、首を横に振る。 なるほど、そうとう空腹のようだ。


「ちょっちまってて。今、ご飯作ってくるから」


 ぱっ、と私は開田君の手を離して、無防備に背中を向ける。

 

「撃たれちゃいますよ!?」

「撃たないよ、彼は」


 オベロンが彼を指さす。


「彼が撃たないという根拠は?」

「勘、かな」


 彼は悪い人には思えないし。勘だけども。


「そんな……曖昧な……」

「まあまあ」


 ということで、私はご飯を作りに、食堂へと向かう。

 

「何処へ行く貴様!?」


 と開田君が何故か後ろから着いてきた。なんで?

 まあいいか。


「君、お腹すいてるんでしょ? ご飯着くってあげるぜ」

「ご飯……得体の知らない相手から施しなどうけん!」


 ごもっとも。でも、私はお腹すいてる人をほっとけないのだ。

 私はリビングへ向かう。


「ええと、確かさっき台所あさったときに……お、あった」


 パックご飯。そして冷蔵庫のなかには、納豆と卵。

 私はまずレンジでパックご飯を温める。続いて、ケトルでお湯を作る。


 開田君は「なんだこれは……こんなのみたことがないぞ……」と家電類をみて目をむいていた。


「あれ、電子レンジも冷蔵庫も見たことないの?」

「れんじ……? れいぞーこ……?」


「日本人だよね君」

「そうだぞ」


 なのに、レンジも冷蔵庫も見たこと無いって……?

 軍服着ているし、やっぱり、私が生きていた時代とは、別の時代から着たのかなこの子……?


 まあ、考えるのは後だ。今はこの子の空腹を満たしてあげるのが先。


「ちょっちまっててねー」


 私はまずパックご飯を、レンジに入れる。


「箱に何を入れたのだ……?」

「ご飯」

「ご、ごはん……? 何を言ってる? 箱にいれて、米が炊けるとでもいうのか?」

「そうだよ」

「はぁ……?」


 レンジをぴぴっと操作する。ターンテーブルが回り出す。


「な!? ど、どういう原理で動いてるのだ……!? これは……!?」


「私にもわからん」


「わからないものを使ってるのか!? 貴様!」

「うん、便利だし」


 さーて、この間に他のもちゃちゃっと準備しちゃうぞ。

 と言っても、納豆のパックと、生卵を出す。そんで、ケトルでお湯を作るだけ。


 開田君は私の出す物すべてに、驚いてるようだ。

 で、お湯が完成。


「あとはインスタント味噌汁をつくってーと」

「い、インスタント……? なんだそれは……?」

「あらしらないの?」

「知らん」


 まじか。やっぱ現代人じゃあないんだな、この開田君。

 ケトルを持ち上げて、インスタント味噌汁を作る。

 

 ふわり……と味噌汁の良い香りが鼻孔を突いた。

 

「なんと……信じられん。火を使わず、味噌汁を作るだと!? き、貴様……なにものっ!?」


 何者って……。


「ただの、日本人ですよ?」

「うそをつけ! 大日本帝国に、こんな技術は存在してない……!」


 大日本帝国……ねえ。やっぱ開田君、大昔の人間っぽい?

 あれ、大昔の人に、こんな最先端技術(レンジや冷蔵庫)見せて、いいのかな……?


 ……。

 …………。

 ………………タイムパラドックスって言葉が、よぎった。


 けどま、うん! 大丈夫大丈夫! 多分!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
平成から令和の時代に老人なら、その人物の少年時代って言ったらまあ終戦間近ぐらいになるわな。 そのせいで技術差がありすぎてまた話が通じなくなってるw ただそれだと今年100歳近いか超えるって話に。 開田…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ