172.神器量産計画
浮遊島で出土した、希少鉱石を、エンデ国のために使うことになった。
でも、魔銀はともかく、神威鉄や聖金剛石は、普通の人間には加工できないんだってさ。
かっこ神は除くかっこかり。
「わたし……一つわかったことがあるんです」
場所は、妖精たちの暮らす湖のほとり。
妖精王オベロンは、手を上げて言う。
「わかったこと?」
「はい。なぜ、天の神々が、下界に降りてこないのかと」
そういえば……。
神って基本、下界には干渉しないんだっけか。
「神の力は強すぎるため、地上に悪影響を及ぼす。だから、神は下界に降りてこない……そう習いました。今までは、いまいちピンとこなかったんです。悪影響ってなんだろうって……」
「ふんふん」
確かに、悪影響って言われても、具体的にどんなことって思うもんね。
「でも、ミカ神さまのおかげで、わかりました」
「え、私……?」
「はい、もう、嫌というほど実感しました。神々が懸念していたのは、こういうことなのか! と!」
……うーん。私はあんまりピンと来ないんですけど……。
「そうね。あたしもミカのそばにいて、よくわかったわ」
え、セイラちゃんもわかるの……!?
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Sinri:無論この真理さんもわかっております(`・ー・´)ドヤ!
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「え、じゃあおしえてよ……。いったいどういうことだってばよ?」
セイラちゃん達が顔を見合わせる。
「つまりまあ、今の状況を見れば一目瞭然ってことよ」
「??????」
「ミカは生きて、なにかするたび、他者に大きな影響を与えるでしょ」
確かに妖精を進化させたり、神威鉄などを出土させたり、神威鉄を素手で変形したり。
「ね? 居るだけで、他者に嫌でも影響を与えちゃうのよ」
「あー……なるほど」
だんだん、言いたいことがわかってきた。
「神って、だから天界から基本でないんだね。こんな風に、地上と周りに混乱を招いちゃうから」
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Sinri:ついにマスター美香が、真理にたどり着いた……!
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ものすっごく驚いてますやん、真理さん。
悪影響だなんだって言われても、ぴんとこない。
でも私に関わった人、大抵、驚くか、困惑するかしてる。
そんな風に混乱を招くような事態になりかねないから、神は基本地上に不干渉を貫いてるってわけ……。
「え、じゃあ私、皆に悪影響与えてるってこと?」
「うーん……悪影響ってほどじゃあないけど……」
「まず間違いなく、混乱は招いてると思いますよ」
だよねー……。
うーん……。今後はよほどのことが無い限り、浮遊島から出ない方がいいのかな。
ま、別にそれでもいいけどね。引きこもりライフばんざーいなんで。
「下界のことは、あたしたちに任せて、ミカは基本こもっていたほーがいいわよ」
セイラちゃんも同意見らしい。
「そうだね。よし、じゃあ今後は基本引きこもります! 皆に迷惑かけないよーにっ」
ホッ……とセイラちゃんが安堵の息をつく。
「じゃ、ミカのおもりは任せたわよ、オベロン」
「はい……がんばりましゅ……」
オベロン、なんかぐったりしてる。
そんなに私のおもり大変かな……?
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Sinri:いやぁ、そうでしょう。なにせ力をもった赤ん坊を、あやさないといけないんですからねぇ
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それって私のこと、よね。
「力を持った赤ん坊二人を見るの、大変ですが……がんばります」
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Sinri:ん? 二人……? (゜Д゜)
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え、二人でしょ。私と真理と。
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Sinri:わ、わたくしは高性能AIですよ!? どこが力を持った赤ん坊なんですか!?
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「しょーじき真理もミカとどっこいどっこいよ。普通にやらかすし」
「全知全能の力を持ってるくせに、報連相もしないですしね」
セイラちゃん&オベロンに容赦なくツッコまれる真理……。
「ま、私ら似たもの同士ってことで。ぽんとコツ、仲良くやりましょうよ」
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Sinri:遺憾の意!
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まあ、冗談はさておきだ。
「本題である、この希少鉱石、エンデの街づくりに役立てる方法を考えよっか」
へい、真理。神威鉄などを加工する方法を検索して。
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Sinri:ヽ(`Д´)ノ
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ご立腹ですやん。
よっぽどバカにされたのがムカついたんだろうなぁ。プライドは無駄に高いからこの子……。
まー、こんなんでもいちおう私の娘の一人だ。
機嫌とってあげよう。
「あー。無知な私に、知識を授けてくれる、高性能な頭脳を持った人工知能がいないかなぁ~?」
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Sinri:ここに、いますが?(`・ー・´)ドヤ!
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こんな雑なアゲかたでいいわけ……?
チョロすぎないあんた……。
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Sinri:神威鉄の簡単な加工法
→神鎚ミョルニルの搭載されているスキル【超錬成】を使う
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なるほど……。
神鎚ミョルニルには、素材があれば何でも作れる、超錬成スキルがあったね。
「でも、ミカ。神鎚ミョルニルは1本しかないいんでしょ?」
「そういやそうだった」
サツマ君は、眷属なので、増やすことができる。でも神鎚ミョルニルは1本しか居ない。
なので、サツマ君を増やすだけでは意味が無い。
エンデって……今、マデューカスとデッドエンド、二つを取りこんだことで、その領土はけっこー広くなっている。
また、ゲータ・ニィガからの難民もぞくぞくやってきている。
いずれにせよ、神鎚ミョルニル1本だけでは、国民たちの住む建物や、彼らを守る外壁を、すべて神威鉄製にはできない。
「そこまで強固な守りが必要なのか、わたしには疑問なんですが……」
オベロンがため息をつく。
「いやほら、なんか悪い奴らから……とか?」
「ふわっふわじゃあないですか! 正直、最高神を抱えてる国を、侵略しようとする阿呆な国がいるわけないですよ!」
そうかなぁ……。いるかもしれないしなぁ……。
「まあでも、エンデをうらやんで、領土を奪おうってやつらがいるかもしれないじゃん?」
「どこにいるんですか、そんなバカがっ!」
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Sinri:フラグが立ったようです
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フラグ……? 旗……?
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Sinri:初期ミカは、もっと知性があったような気がします
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うるさいよ……。
「色々便利な暮らしや、強大すぎる力を何の努力もせず獲得してるせいで、見た目は大人、頭脳は子供、力は神な悲しき化け物が誕生したんじゃあない?」
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Sinri:ぼろくそで草
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まあでもセイラちゃんの言うとおりだから何も言い返せねえ……!
「ま、まあまあ。神鎚ミョルニルを増やす方法を考えようよ」
「そうはいってもね、ミカ。神鎚ミョルニル……というか、神器を量産なんて、できるわけないよ」
天才錬金術師にして、魔道具師である、セイラちゃんがため息をつく。
「神器の量産がどうしてできないの?」
「神器の元となる、聖金剛石の加工が、人間じゃ不可能だからね。神が自ら作る必要があるのよ」
なるほど……。
手作りなのね。それじゃ量産は難しいわけか……。
「って、あ、そうだ。セイラちゃん、全知全能の釜あるじゃん!」
はて……とオベロンが首をかしげる。
「なんですか、それ?」
「創造スキルが付与された、眷属器って言う特別なアイテムよ」
「は!? な!? そ、創造スキル!? 無から有を作り出す、あの伝説の!?」
オベロンが驚愕する。はいはい、そこはわかってる。凄いんだよね。
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Sinri:マスターの感覚が完全に人間の範疇超えてて草
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やかましいよ。
わかってるっての。
「そっか。創造スキルで、神鎚ミョルニルを量産するのね」
「そゆこと」
1本ずつ手作業で作るとなると、やっぱり時間がかかる。
でも神鎚ミョルニルを、全知全能の釜である程度、最初に量産する。
あとは、それらを使って、神鎚ミョルニルを増やしていけば良い。(作る都度、作れる本数が増えていく。そこはサツマ君に任せれば良い)
「でも……全知全能の釜って、使用回数に制限なかったっけ?」
「あったわね。鼻スパカウンターが」
???とオベロンの頭に疑問符が浮く。
「な、なんですか鼻スパカウンターって……?」
「全知全能の釜は、ミカが人を驚かせるたびに、使用回数が増える仕様になってるのよ」
「い、意味がわからない……ほんとに意味がわからない……」
二度も意味不明といわれてしまった……。
確かになんで私が人を驚かせることで、使用回数が増えるんだろうね……。
「そもそもそれと、鼻スパに何の関係が……?」
「色々あったのよ……」
「セイラさまでも説明を匙を投げるレベルで!?」
よーするに、だ。
私が人を驚かせたり、やらかすたびに、鼻スパカウンターが回ると言う仕組みなのだ。
その説明をしてもなお、オベロンは「何を言ってるんですか……?」と理解できない様子。
「てゆーか、今鼻スパカウンターってどんなもん?」
「鼻スパカウンターじゃなくて、全知全能の釜でしょ。確かに、最近使ってなかったから、どれくらいになってるか知らないわ……」
セイラちゃんが、自分の眷属器、全知全能の釜を出現させる。
招き猫の姿をしており、小判のところに、使用回数が描いてある。
【999】
「鼻スパカウンター999!?」
え、私999回も、やらかしてた!?
「999回も……」
呆れるとおりこして、絶句するオベロン。
「まあこんなもんじゃあない……? ミカ毎回オベロンとか、驚かせてるし」
まじすか……。




