17.古竜を一撃で倒し屈服させる
目の前で、青い鱗の巨大な竜が倒れている。
「ねえ……駄女神。このドラゴンのこと、眷属って言ってたけど……マジなの?」
「はいっす。こいつは吹雪丸。一〇〇〇年くらい前に、名前を付けて眷属にしたっす~」
「え……じゃあ、こいつの言っていた、極光神……って……?」
「? ワタシの名前っすよ」
……名前あったんだ。
「吹雪丸が何かしたんすか?」
極光神トゥアハーデ……ええい、言いにくい。
駄女神にこれまでの経緯を話す。
さぁ……と駄女神の顔から血の気が引く。
「もももも、申し訳ないっすぅうーーーーーーーーーーーーーーー!」
ずしゃああ! と駄女神が私に土下座する。
「ワタシの眷属が美香様にとんだご無礼を! 申し訳ないっすぅうう!」
私の不興を買ったら、上の女神に全知全能スキルを持ってることを報告されるかも……と思っているのだろう。
弱い者いじめは趣味じゃないので、そんなことはしないけども。
「おら! 吹雪丸! 起きるっす! すぐに美香様に謝るんすよぉお!」
駄女神が竜の背中を蹴り回す。
『うう……ここは……どこなのじゃ……?』
蒼銀竜こと吹雪丸が目を覚まし、体を起こす。
「極光神トゥアハーデが命じるっす! 美香様にごめんなさいって、謝るんすよぉ!!」
すると……吹雪丸は駄女神を見て、首をかしげる。
『なぜわしが、貴様の言うことを聞かねばならぬのじゃ……?』
「なにぃいいいいいい!? おまえの主である神の言うことが聞けないのか貴様ぁ……!」
『我が主は極光神トゥアハーデ様のみ!』
「だからその神がワタシだっつってるでしょ!?」
すると吹雪丸は、駄女神の格好を見やる。
今の駄女神は……。
・スウェット
・寝起きでノーメイク
・寝癖
・語尾に「~っす」な三下口調
……うん。
『貴様のようなだらしのない女が、極光神様のわけないのじゃー!』
ごめん、私も同意見。
今の駄女神からは、神聖さのかけらも感じられない。
しかも翼もないし……。
「くっそ! ちょっと待ってるすよ! 翼とってくるっすから!」
「翼取ってくる……?」
え、あれって取れるの……?
装飾品だったの?
ログハウスの中に入ってく極光神。
残されたのは私たち、そして……蒼銀竜・吹雪丸。
『極光神様の使徒として、領域の侵犯せし罪人を征伐してやるんじゃ!』
「またやるの、そのくだり……」
もうちょっと待ってくれないかな……。
『お下がりください、聖女様! 今度こそ、わたくしが聖女様をお守りします!』
私の前にフェルマァが立ち、戦闘態勢を取る。
がるるるう……とうなり声を上げる。
「フェルマァ、落ち着いて。駄女神が着替えて帰ってくればこいつも納得するだろうから」
だが……。
『食らうのじゃ、襲竜爪!』
吹雪丸が飛び上がると、回転しながら、こちらに爪で攻撃してきた。
「ちょ、何やって……」
『食らいなさい! 【颶風真空刃】!!』
フェルマァが吠えると、彼女の口の前に魔法陣が展開する。
そこから巨大な竜巻が発生。
ドラゴンの爪と、フェンリルの魔法がぶつかる。
『無駄じゃぁああ!』
ドラゴンはフェルマァの竜巻を軽々切り裂いた。
フェルマァの顔を、竜がひっかく。
ざくっ!
『ぐっ……!』
「フェルマァ……!」
『だ、大丈夫です……怪我はすぐに治ります……』
龍脈地の魔力で、フェルマァの顔の傷はすぐに、綺麗に塞がった。
痕も残っていない……けど。
……女の顔に傷を付けた。
私の大事な眷属に……。
『わははは! どうじゃ! わしはフェンリルをも凌駕するパワーを持つのじゃあ! 降参するなら今のうちに……』
私はアイテムボックスから、1本の剣を取り出す。
ログハウスの倉庫に入っていた伝説級の武器の一つだ。
いざというときに備えてアイテムボックスに、武器をいくつか入れておいたのである。
『そ、それは! 伝説の、【進化聖剣エクスカリバー】!』
~~~~~~
進化聖剣エクスカリバー(SSS)
→伝説の鍛治師・八宝斎が創りし聖なる剣。
【効果】
・超肉体強化
・森羅万象切断
~~~~~
『な、なな、なんでそんな伝説の武器が、賊の手に!?』
蒼銀竜は完全に怯えていた。
肉体を超人に変えるスキルと、森羅万象を切断するスキルが付いている。
これで攻撃したら、このドラゴンの命は軽く消し飛ぶ。
それをわかっているから怯えてるのだろう……。
もちろん無意味な殺生をするつもりはない。
が。
「謝りなさい。あんた、女の顔に傷つけたんだから」
『ぐ、ぎ……! うぉおおおおお! こうなったらやけじゃああああああああ!』
蒼銀竜が私に向かって攻撃してくる。
『聖女様、避けてください!』
「いや、大丈夫だから」
がきぃん!
蒼銀竜がさっきと同じ、襲竜爪とかいう技を放ってきたのだ。
『なにぃ!? わしの爪を、手で摘まんだじゃとぉおおお!?』
私は左手で竜の爪を受け止めていた。
「この剣もってると、超人になれるんだってさ。動体視力も上がってるのよ」
『ぐ、くそ!』
蒼銀竜が距離を取ろうとする。
が。
『な、なんじゃ!? びくともしない! なんというパワーじゃ!』
「あんたと私じゃレベルが違うのよ」
ぱっ、と離してあげる。
「ほら、かかってきなさいよ」
『ちくしょおおおおお!』
蒼銀竜が思い切り爪でひっかいてきた。
ぱきぃん!
私の頭に爪が当たった瞬間、相手の爪が粉々に砕け散る……。
『なんじゃああ!?』
「言ったでしょ。レベルが違うって。あんたのレベルはたった500。そして……私のレベルは9999」
『なんじゃそれは!? 桁外れじゃあないかぁ!』
ということで、最初から勝負にすらならなかったのである。
さっきまでなら、これで良かったけど……。
「どうする、謝るの? 謝らないの?」
『ぐ、ぎ……! な、なぜ最強種たるこのわしが! 人間ごときに……!』
とんっと。
私は蒼銀竜の頭まで飛び上がると……
「おすわり」
私は適当に、エクスカリバーで、竜の頭をぶん殴る。
ずがんっ!
『あべし……!』
ドラゴンの頭を強打。
やつは体を地面に埋め、気絶してしまった。
『す、すごい……なんという早さ。防御力、そして……膂力。全てにおいて、古竜を上回るなんて……!
まあ最初からステータスで勝っていたからね。
私は倒れてる蒼銀竜の頭をペンとたたく。
「ほら、起きなさい。龍脈の力で傷はすぐに治ってるでしょ?」
『あ……う……うわあぁあ! ば、バケモノぉおおお!』
こっちはか弱い女子だというのに、バケモノだなんて。
「ほら、フェルマァに謝って。そしたら命だけは助けてやるわよ」
『すまなかった……これでよいじゃろ!』
よしよし。
「フェルマァ、許してあげて」
『はい!』
……フェルマァから向けられる視線が、なんかさらに熱烈になった気がする。
「お待たせしました」
上から、何かが降りてくる。
翼を生やし、白いワンピースに身を包んだ、駄女神こと極光神トゥアハーデだ。
『極光神さまぁ……!』
あ、蒼銀竜もようやく、駄女神を自分の主と認識したようだ。
さっきのだらしのない女と同一人物なのだけども。
「久しいですね、吹雪丸。今日までこの地の守護、大義でありました。ですが、もうよいのです」
『よ、よい……とは?』
「この地の所有権はすでにそこの人間……あ、すみません、長野 美香様に譲渡されてるのです……」
『!? ほ、本当にですか……?』
「ええ、本当に」
これで蒼銀竜も信じたことだろう。
『ほ、本当に人間に神の地を渡すのですか……? 確かにこの人間は強いですが……ここは神の地ですゆえに……』
まだ疑ってるのかこの竜……。
「長野 美香様。【神プロテクト解除】と言ってみてください」
「? 神プロテクト……解除?」
そのときだった。
『オロロロロロロロロロロロロロロロ!』
と、突然、蒼銀竜が目の前で吐いたのだ。
『無理無理無理無理ぃい~……!!!!!』
えっと……これは一体……?
『神の肉体には、力をセーブするプロテクトがかかっているのです』
そういうのなかったら、レベル9999の体で、日常生活が送れないか。
「戻すときは?」
『神プロテクト、起動と』
言われたとおりにしてみたけど、蒼銀竜の震えは止まらない……。
ボンッ……!
「竜が……え、ちっこくなった!」
『これは……キツネ、ですかね……?』
蒼銀竜の居た場所には、青い毛皮の、小さいキツネがいた。
お腹を向けてふるえている。
「なにこのキツネ?」
「吹雪丸っすよ」
「え? 竜じゃないの?」
「はいっす。妖狐という、変身能力を持つキツネの魔物っす」
「でもなんでキツネ?」
「駄女神であるこのワタシが、竜なんてしもべにできるわけないじゃないっすか!」
……ごもっとも。
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