168.妖精すごい
妖精達が進化したら、全員伝説の妖精だった件。
「君ら凄い子なんだねー」
私の周りにはたくさんの妖精達がいる。
でもみんな、手のひらサイズのお人形さん。で、しかもみんなぽやんとした表情をしてる。
とてもじゃあないけど、伝説の存在には思えないなぁ。
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Sinri:今日の、お前が言うなスレはここですか?
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「そんな見た目で最高神のあんたがそれ言うの……?」
「う……鋭いツッコミ」
セイラちゃんがノームを手に取る。
「本当に凄い妖精なんだから。ノームも、レプラコーンも」
「うーん……っつってもねえ。私にはただの可愛い妖精さんにしか見えないし……」
するとレプラコーンが、私を見上げる。
「ぼくらの……くびですかぁ?」
潤んだ目で、レプラコーンが言う。
え?
「いやいや、どうしてそうなるの?」
「じつりょく、うたがわしい? むのー? させん? まどぎわぞくですか?」
どうやら自分らの力を疑われたと思っているらしい。
で、追い出されると。
「追い出すことなんてしないよ」
「だみんをむさぼってても?」
「うん。別に何にも困ってないし」
てゆーか、本当に仕事なんてしなくていいしね。
「でもぼくら、おやくたちしたいです」
「あ、そう」
「おやくたちまくりです」
ぴょん、とレプラコーンが私の手のひらから降りる。
力を見せるって言ってるみたい。
「君らの力……って、何ができるの?」
ちょっと気にはなる。そこまで役に立てるっていうならね。
「かみしゃまとくらべたら、ゴミですが……」
しょぼーん、と落ち込むレプラコーン。
「大丈夫、規格外と比べないから」
「おまえの力を見せてあげなさい。化物と比べないですから」
セイラちゃんとオベロンがそろって言う。
君たち? なんか変なルビふってない? まあいいけど。
「おちからっ。おひろめ!」
ぐっ、とレプラコーンがちっこい腕を曲げていう。
おお、ドンナ力を見せてくれるんだろう。
「じー……」
「じっとみられてたら、いやん」
「え? 恥ずかしいってこと?」
「しゅーちゅーりょくがとぎれてまう」
あ、そう。
私はくるっとレプラコーンに背を向ける。
かんかんかん、という音がどこからか聞こえてきた。
やがてその音が途絶える。
「もーいいかい?」
「もーいいです」
振り返ると、そこには綺麗な硝子の靴があった。
「あらま、素敵な硝子の靴」
童話にでもでてきそうなくらいの、見事な硝子の靴だった。
宝石みたいにキラキラ輝いてる。うーん、凄い綺麗。
「でもこの靴履けるの?」
「はけますが?」
「あ、そう……。はいてもいい?」
「よきですが?」
どうやら良いらしいので、ちょっと履いてみよう。
でも硝子でできてるってことは、ちょっと履きにくいんじゃあないかなぁ……って思ったんだけど。
「おお、意外といい履き心地」
硝子なのに、全然硬くない。私の足の形に合わせて、サイズがきゅっ、と縮んだ。
足踏みしてみる。柔らかいクッションを践んでいるような感触がしてる。
「これ。めっちゃ良いよ」
「いいねー、もらったー」
ぴょーんぴょーん、とレプラコーンがその場で歓喜のバク宙を繰り返してる。可愛い。
よしよしと私はレプラコーンの頭を撫でる。
でも、まあ正直……。
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Sinri:正直、作った物を見て、驚いてはいない?
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真理さん鋭いさすが。
「は……? 何言ってるのよ……?」
「え、ああ、うん。凄くいい履き心地の、いい靴だとは思うよ。でもさぁ」
「でも?」
「念じれば同じの作れるでしょって」
ぽんっ、と私の目の前に、伸縮自在の硝子靴が出現する。
「いや!」
「それ!」
「「あんた(あなた)がオカシイから……!」」
ツッコミシスターズがツッコミを入れてくる。
「作れないわよ! これ、どれだけ付与魔法がかかってるって思ってるのよ!?」
「そうですよ! 伸縮自在に加えて、耐性強化など含めて……100もの魔法が付与されてるんです!」
100?
「少なくない……?」
「「多いから……!!!!!!」」
はぁ……とセイラちゃんがため息をつく。
「あのね、物に魔法を付与するのって、本当はめちゃくちゃ難しいのよ? 前にも説明したけどもっ」
そうだっけ?
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Sinri:だいぶ初期に、セイラから説明を受けてます。
マスターは刹那で忘れちゃった♡ ようですが
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うん、忘れてましたね……。
「でも魔法の付与なんて、念じれば……」
「「できないから……! 念じてできるのあんただけだから……!」」
「そ、そっか……」
物体に魔法付与って凄い難しいことらしい。
うん、ミカ覚えた。
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Sinri:そしてすぐに忘れるのだった
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そんなことない。そんなことは……ない。と思う。多分。
「ぼく……むのーですかぁ……」
潤んだ目でレプラコーンが見てくる。ああ、しまった! こんな会話してたら、自分が凄くないって思ってしまう!
「君は凄い! 凄いよ!」
「でもかみしゃまとくらべたら、ぼくはちりあくたです?」
ずずぅうん……と落ち込むレプラコーン。
「そんなことない、自分を卑下しちゃだめよ!」
とセイラちゃんが励ます。
「比較対象が悪いわ。アア見えてアレは全知全能の神なんだから!」
アレて。
「そうです、レプラコーン! あなたは凄い! 全知全能を持ってるだけのアレと比べては、いけません!」
持ってるだけのアレて。
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Sinri:辛辣で草
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まー、でも実際その通りだしねぇ。
私が凄いんじゃあなくて、全知全能が凄いわけだし。それを上手く活用できてないのは事実だし。
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Sinri:(`・ー・´)ドヤ!
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何で君がどや顔してるのかね真理くん……?
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Sinri:駄目女を支えるでき女、それが真理……!
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「あんたとミカ同じカテゴリだから」
とセイラちゃんがツッコミを入れる。
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Sinri:!? ポン……だと……?
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それ間接的に、私がポンって言ってるようなものだからね、君たち?
「否定できるの?」
「できません」
「でしょ?」
まあ……何はともあれ。
「全知全能もなしに、こんな凄いの一瞬で作るのは、凄いよ」
「でもかみしゃまと比べたら……」
「比べちゃ駄目だよ。人と。君が凄いことできるのは事実なんだからさ」
私が笑いかけると、ぱぁ……! とレプラコーンが笑う。可愛い。
「これからまいにち、かみしゃまのおくつつくるです!」
うーん……別に私そんなたくさん靴要らない……。
あ、そうだ。
「ねえ、セイラちゃん。ここの妖精たち、連れて下界に降りてくれない? 私よか、皆のために靴作った方がいいかなって」
下界では、魔物を狩ってる人たちや、職人達がけっこーいる。
彼らの履き物を作ってあげた方が良い。私は別に普段から履く靴があればそれでいいしね。
「いいけど、でもやり過ぎないようにってちゃんと言ってね」
「どうして?」
「だってこんなヤバい靴たくさん作られたら、それを使ってもうけようっていう悪い輩が入ってくるでしょ?」
あ、なるほど……。
「じゃあ、新しい靴を作るっていうより、エンデの国民が履いてる靴を、改良するのは?」
「うーん……まあ、量産して売ってる訳じゃあないけど……。でも、やり過ぎ注意とは言ってね。ミカと同じで、力を暴走させると困るし」
力を暴走?
おいおい。
「私がいつ力を暴走させたっていうの……?」
「…………」
セイラちゃんがあきれ果てた顔をしていた。え? え? うそ。私……暴走させていた?
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Sinri:167話もやらかしてるのに、学習しない女で草
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167話ってなに……?
え、この世って漫画とかアニメなの……? そんなバカな……。
「ミカ神さま。レプラコーンが張り切ってます。どうか、頑張りすぎないようにと言ってあげてください」
オベロンの手のひらの上に、レプラコーンが載っている。
「やるき、もりもり」
ぐっ、と両手を伸ばして曲げるレプラコーン。
「えっと……ほどほどにね? やり過ぎて迷惑かけたら、駄目だよ?」
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Sinri:おまえが言うな定期
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「ミカが言うと重さが違うわね」
「ミカ神さま、その言葉を自分の胸によーく刻んでおいてくださいね」
皆の私への信頼が凄い(逆に)。




