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162/404

162.妖精王とパンケーキ食べる


 ある日の浮遊島。

 ログハウス前のキャンプ椅子に座りながら、アニメを見ていた。


 膝の上には、バステト神の真白が座ってる。私が片手でスマホを見ながら、子猫をよしよしなでなでする。


「うにゃ?」


 真白が体を起こして、耳を側立てる。

 すると、ぽんっ、と妖精が大転移グレーター・テレポーテーションしてきた。


「オベロン。お久しぶりだね」

「おひさしゅうございます、ミカ神さま」


 妖精王オベロン。

 妖精郷アルフヘイムに住んでいた、妖精達の女王さまだ。


 ふわり……と私の顔の前までやってきて、優雅に一礼する。


「にゃ!」


 真白がオベロンを両手で捕まえる。


「あっ、あっ、ま、真白様! は、離してください……!」


 真白とオベロンは、妖精郷アルフヘイムで顔を合わせたことがある。

 オベロンを食べるようなマネはしないと思うけど……。


「うにゃ!」


 両手でオベロンを捕まえた状態で、どや顔を向けてくる。


「真白、その子、虫とか鳥とかじゃあないから。離してあげなさい」

「にゃ……」


 ちぇ……と真白が手を離し、私の膝の上で丸くなる。


「で、どうしたの今日は?」

「改めて、こないだのお礼をしたく、参上した次第でございます」


 こないだ……ああ、妖精郷アルフヘイムでの、魔蟲事件のことか。


「お礼なんていいのに」

「いえ、神にお手数をおかけしたのです。きちんとお礼をしなければと」


 お手数ねえ……。

 まあ、確かにちょろっと面倒だなとは思ったけどさ。


 でもその程度である。別にお礼なんていいんだけどね、ほんとに。

 まあとはいえ、お礼を突っぱねるのもよくないか。


「わざわざありがとね」

「いえ。それで、こちらがお礼の品なのですが」


「え? お礼の品? お土産ってこと?」

「お、お土産……? いえ、お礼の品なんですけど……」


 ま、どっちでもいいか。

 ぱちんっ、とオベロンが指を鳴らす。

 

 私の前に、1本の、黄金の妖精花が現れる。


「こちらは現在、蜜が取れる状態の妖精花となっております」


「蜜?」

「ええ。妖精花は100年に一度、とても甘くて美味しい蜜を作るんです」


 はえー……そうなんだ。

 華の先っちょを指で突く。じわり……と華から蜜が滲み出る。


「どれ一口……」


 パクッ。


「んぉ……! うっま! 甘くて……うっま!」


 めちゃくちゃ甘い、なのに、全然雑味がないのだ。

 上品な甘さが舌に広がる。


 知らず、私は二口目を食べていた。

 あまくてうんまい……


 あ、三口目も……あ、四口……ああ、止まらない……。


「お気に召してくださったようで、何よりです」


 オベロンが安堵の息をついてる。

 律儀な性格の子だから、私にけっこー大きなかりを作ったって思ってたんだろう。で、それを少し返すことができた……と思って安堵してると。


「しかし美味いね。君もどう?」

「いえ、これはミカ神さまへの供物ですゆえ」


「いやいやいや、美味しい物は大勢で食べた方が美味しいし」

「な、なるほど……では、ご相伴させていただきます」


 よしよし。


「へいキャロちゃん、かもーん」


 ぴょこっ、と野菜眷属のキャロちゃんが、私の肩の上に乗っかる。


「この美味しい蜜を使った、お菓子を用意してちょーだい」

「…………」びしっ!


 キャロちゃんが敬礼をすると、ぴょんっ、と降りて、厨房へと去っていった。


「あ、あのぉ~……」

「ん? なぁに?」

「い、今の……頭に野菜が生えた、大妖精はいったい……?」


 んんっ?


「え、大妖精ってなに?」

「強い力を持った妖精のことです。ちなみに、わたしも大妖精です」


「ははん……なるほど。妖精王並に強い力を持った妖精ってことね……。で、なにが?」

「あ、あの……その……ま、真理さーん!」


~~~~~~

Sinri:「頭に野菜が生えた大妖精」

→マスター美香がお野菜眷属と呼ぶ彼らです

~~~~~~


「へー、お野菜眷属ちゃんたちって、妖精だったんだ」

「へー!? え、ええ、ええ!? それを知ってなお……そんな薄い反応なのですか!?」


「え、うん」


 お野菜眷属達の正体が妖精だった。だからってかんじ。


「正体がなんであれ、可愛い眷属達ってことには変わりないし」


 ぴょこっ、と私の周りにお野菜眷属達が顔を覗かせる。

 足下にも、たくさん眷属達が居る。


「えええええええええええええええええええええええ!? な、な、何ですかこの大量の大妖精はぁああああああああああああああああああ!?」


 お野菜眷属達が私の周りで万歳したり、抱き合ったりしてる。

 私が褒めたから喜んでるのだろう。ふふ、可愛い奴らよのぉ。


「あの! オカシイですよ!」

「え、なにが?」

「大妖精が! こんなたくさんいるの……おかしいんですってば!」

「そうなの?」

「なぜ大妖精が妖精達の王をやってる時点で、オカシイと思わないのですかっ!?」


「いやぁ、全く思いませんね」

「ば……!」

「ば?」


 もがもが、とオベロンが自分の口を手で押さえる。

 え、なに? なんなの……?


「…………」ぴょこっ。 

「お、キャロちゃん。もしかしておやつ完成したのかい?」

「…………」こくんっ。

「じゃ、せっかくだしお外で食べよっか。用意してくれる?」


 お野菜眷属たちがうなずく。

 キャンプ用の机を出し、フォークやお皿を並べる。


「ま、まさか……ミカ神さま……。大妖精を、小間使いのように、働かせてるのです……?」

「小間使いって、言い方ひどくない? 私の……そうね、面倒を見てくれてるんだ」


~~~~~~

Sinri:マスターの飼育係ですね

~~~~~~


 飼育係て。ひどくない?

 われ人間ぞ……?


~~~~~~

Sinri:ナマケモノ属ナマケモノ科のナガノミカ

~~~~~~


 否定はできんけどさぁ。

 まあいいけどさ。


「この数の大妖精を従えるなんて……さすがは、神……と言ったところなのでしょうか……」

「ほらほら、オベロン。おやつ作ってくれたよ。一緒に食べよ?」


 キャロちゃんたちお野菜眷属たちが、わっせわっせとお皿を運んでくる。

 テーブルの上には、ふわっふわのパンケーキが載っていた。


「おー! パンケーキ。おいしそ~」


 しかもただのパンケーキじゃあない。

 1枚1枚、しっかりふわふわに作ってあるやつだ。


 それが5枚も重なっている。

 お皿にはホイップクリームが添えられて、一番上のパンケーキにはバターとアイスクリームが乗っている。


 そんで、妖精花の蜜が入った、瓶がどんとテーブルに鎮座していた。


「こ、これは……! ぱ、パンケーキ……!? で、でもわたしがしってるのと、全然違います!」


 オベロンが驚愕している。


「こっちのってどんな感じなん?」

「一枚ですし、ペラペラです……こんな分厚くて、ふわふわのパンケーキ、はじめてみました!」


 こっちの技術のレベルは、基本中世。

 地球のほうが進んでいるから、地球産のパンケーキに驚いてしまうんだろう。


「さ、一緒に食べよう。取り皿ちょーだい」


 さっ、とトマト君がお皿を用意する。

 お野菜達は手分けして、パンケーキを取り分けてくれる。


 大妖精が色々やってくれることにたいして、オベロンは何ももう言ってこなかった。

 彼女の目には、目の前の巨大ふわふわパンケーキしか映ってない様子。


 この子は甘い物には目がないんだよね。


「さ、どーぞ、召し上がれ」

「いただきますっ!」


 ふわふわパンケーキを前に、目を輝かせるオベロン。

 あー……いーなー。


 オベロン体のサイズが小さいから、彼女から見れば、超大型パンケーキに見えるんだろう。

 いいなぁ、羨ましい。


 オベロンがばふっとパンケーキにかぶりつく。


「ん~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♡」


 オベロンは翅をぱたぱたぱた! と激しく動かす。


「やわらひゃいれしゅぅう……♡」


 至福の表情を浮かべながら、オベロンが言う。


 あ、どれ私も一口。

 しっかり蜜を、たっぷりとかけて……ぱくっと。


「うまっ……!」


 蜜と、バターがしっかりとしみこんだパンケーキは、もうめちゃくちゃ美味かった。

 蜜の甘さ、バターのしょっぱさ。そして、ふわっふわの食感。三つがあわさって、口の中に幸福感が広がっていく。


「うましゅぎましゅぅう~……♡」


 オベロンが夢中でパンケーキを頬張っている。

 巨大パンケーキにかぶりついて、むっしゃむしゃ食べているオベロン。

 うーん……いいなぁ。


「私もそれ、やりたいなぁ」


 そのときだった。

 ぐんぐんと、私の体が小さくなっていったのだ。


「うぉ!? な、なんか体ちっこくなってない!?」


~~~~~~

Sinri:理想現実化能力が発動しました

~~~~~~


 この浮遊島に備え付けられてる能力、理想現実化。

 なるほど……私がオベロン羨ましいって思ったから、体がちっこくなったわけか。


「うぇえええええええええええ!? な、な、なんでミカ神さま小さくなってるんですかぁあああああああああああ!?」


 パンケーキに夢中だったオベロンが、私を見て声を張り上げる。


「うまうま」

「うまうまじゃなくて!?」


 いやぁ、山のように大きなパンケーキを食べるの、めっちゃいいわぁ~……。


「ミカ神さま!?」

「え、なに?」


「どうやってそんな急に小さくなったのですか!?」

「念じた」

「念じた!?」


「うん、オベロンみたいに、小さくなって、山のように大きなパンケーキ食べたいなーって。思った。そしたらできた」

「どういうことなんですかっ!? 理屈がさっぱり理解できないですよ!?」


「まあまあ」

「まあまあ!?」


「どーでもいいでしょ、そんなこと……」


 うまぁ、巨大パンケーキ最高~♡


「やっぱり……ミカ神さま……オカシイです」

「え? 今度は何がおかしいの?」


 くわっ、とオベロンが目を見開いて叫ぶ。


「ミカ神さまご自身がおかしいんですよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

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― 新着の感想 ―
よく考えたらミカの周り女の子ばっかりだな
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