148.配下も余裕でトラップを破壊
世界樹の中を進んでいく途中、四天王のミオケンボが邪魔してきた。
けど、うちのサポートAIのおかげで、特に苦労せず進めそうだ。
『ふん! ちょっと術式をいじれ、敵の出現やトラップの存在を事前に知れるからって、調子に乗るんじゃあない!』
「そこまで凄い存在がこっち側に居るのに、よく自信満々でいられるな」
とルシエルがツッコミを入れる。
「なにか我等に勝つ秘策でもあるのか?」
『ある! まだわしには山のようなトラップがあるからな!』
あー……なんかけっこー色々用意してるんだっけ?
「無駄に終わると思うけどね」
『やかましい! そういうのは、トラップを無事に切り抜け、わしのもとへやってきたからいうんだな!』
はいはいっと。
私たちは真理のサポートで、ダンジョンとなった世界樹の中を進んでいく。
らせん階段が途中で分岐する。
「へい真理、どっち?」
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Sinri:下です
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したぁ……?
左右に分岐してるのに?
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Sinri:そう見せかけて、床に隠し通路があります。そこからいかないと、絶対に上へたどり着けません
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底意地の悪いダンジョンマスターだこと。
私は床に手を置く。隠し扉があった。ぱかっ、と上に開ける。
中には、下へ続く階段があった。
『なんじゃとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
うるさ……。
『ば、バカな! どう見ても左右どちらかに行くしかないように見えるのに! なぜ第三の通路があると気づいた!』
「悪いね、こっちは全てを見通す全知全能のサポートAIがついてるんで」
『くっ……! やはりずるいぞそれ! チートだ! 正々堂々と戦え!』
「いや、おまえが言うな……! 引きこもって罠で我等を殺そうとしてるくせに!」
ルシエルの言うとおりだった。
『くそがっ! だ、だが……! その先は地獄だぞ!』
「教えてくれてどーも」
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Sinri:この先、モンスターハウスとなっております。改造された魔蟲の群れが襲ってくる感じです
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あらま、モンスターハウス。
迂回はできないっぽいし(正規ルートはここしかないから)。
うーん、どうしよう。
世界樹の中で、あんまり大暴れしたくないんだけどなぁ。
「大丈夫よ、あたしに任せといて」
セイラちゃんが自信満々に言う。
お、天才錬金術師がやる気をだしてる。秘策あるってことかな。
「じゃ、お任せで」
「な!? そんな危ないですよ! モンスターハウスがこの先にあるんですよ! こんな小さな子一人に任せるなんて危険です!」
オベロンが心配してる。
「大丈夫大丈夫」
「子供に危ないことさせるっていうのに、大丈夫って!? ちょっと倫理観バグってないですか!?」
そうかな?
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Sinri:そうかも
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そうかぁ。
「ま、ただの子供ならともかく、セイラちゃんなら大丈夫大丈夫」
「ええー……」
オベロンがドン引きしていた。ホワイ?
で、階段を下っていった先には、樹木でできた小部屋が存在した。
部屋の中は、一回り小さい魔蟲がうじゃうじゃいた。うへえ……きしょ……。
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Sinri:サイズを小さくし、その分、体の強度をあげた魔蟲です。
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はえー、そんなことできるんだ。
変質の能力をもっているから、こんな芸当ができるか。
「セイラちゃん、やっちゃって」
「了解。■!」
■から、セイラちゃんが2本のポーション瓶を取り出す。
ガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサガサ。
「ひぃ! こ、こっちに魔蟲が襲ってきますぅう!」
『わははは! 強化された魔蟲たちは、食欲も倍増してる! 逃げても無駄だぞ! 命尽き果てるまで貴様らを追いかけて、捕食しようとしてくる!』
セイラちゃんが1本目のポーション瓶を放り投げる。
それは地面とぶつかる。
その瞬間、猛烈な冷気を発生させた。
ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
『ば、バカな!? なんだこの大規模な氷の魔法は!? 一瞬で強化魔蟲が、氷付けになってしまったぞ!?』
ミオケンボが説明してくれたとおり、魔蟲達は一匹残らず氷付けになった。
『ま、まさかこれは……極大魔法【絶対零度棺】!?』
「いえ、ただの魔術ポーションよ!」
『なんだそれは!?』
「魔法効果が術式として組み込まれたポーションよ」
『くそ! つまり絶対零度棺が付与されたポーションということか!』
「いえ、ただの【氷結】よ」
『はぁあああああああああ!? しょ、初級の氷魔法だとぉおおおおおおおおおおおおおおお!?』
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Sinri:使用者が敵と認識した魔力を使い、魔法の効果を底上げしております
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敵の力も利用しての攻撃ってわけか。
すごーい。
『なんだその化学兵器! 今までみたこと無いぞ!』
「でしょうね。この世界樹のダンジョンに入って、思いついたものだし」
『はぁあああああああ!? そんな短時間で、こんなヤバい兵器を作り出したということか!』
「ええ」
『くそっ! 化けものめ!』
セイラちゃんまじぱねー。
「ま、理論を構築したのはあたしだけど、実際に作ったのはこの、全知全能の釜なんだけどね」
空中に、招き猫が出現する。
「思いを現実にかえる、創造スキルが付与されてるからね。理論が頭に入ってれば、作れるわけよ」
「はぁあああああああああああ!?」
今度はオベロンが驚いていた。
「そ、そそそ、創造スキル!? そんな……激レアスキルを、ど、どうして最高神でもない貴方様が持っているのですか!?」
「ほんとね……色々あったのよ……」
「説明を諦めないでください……!!!!!」
ん?
全知全能の釜の、使用回数……通称、鼻スパカウンターの数字が、ヤバい。
【546】
え、数字増えてない?
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Sinri:一度に二人も驚かせてるので、カウンターの上がるスピードも二倍となってます
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ああ、なるほど……。
オベロンとミオケンボ、どっちも驚かせてるもんね……。
「凍らせたあとは、これ!」
ぽいっ、とセイラちゃんが二本目のポーションを放り投げる。
ごぉ……! と熱波が部屋の中に広がる。
凍り付いていた魔蟲達が、一瞬で……消滅したのだ。
「今のは熱波を付与したポーションよ。これもさっきの氷結のポーションと原理は一緒。これ2つを同時に使うことで、凍らせた相手のみを、消滅させることができる」
「せ、せせ、セイラさま! なにそんな普通の顔をして、とんでもない殺戮兵器の説明をさなってるのですか!?」
殺戮兵器……。
「大丈夫大丈夫、セイラちゃん良い子だから、戦争とかにこんなの使わないから。安心安心」
『どこがじゃ! 子供にそんな危険なもの持たせよって! 鬼か! 貴様!』
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Sinri:敵に常識を問われる29歳児
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やかましいわ。
「セイラちゃんはあんたら魔蟲と違って、分別ってもんを理解してるから。鬼とかいうなし」
「いや、ミカ神さま……多分ミオケンボがディスったのは、あなた様だと思いますよ!?」
あ、そっか。
ほなええか。
別に敵から恨まれても、全然痛くもかゆくもないもんね。
「んじゃ、次いこ」
『ぐぬぬぬぬぬうぅうう! くそぉおおお!』
モンスターハウスを出て行こうとした私たち。
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Sinri:結界が出口を塞いでおります
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はぁ? 結界ぃ。
なるほど。モンスターハウスに閉じ込めようって魂胆だったのか。
「るしえーる」
「御意!」
ルシエルが全知全能の剣・完成形を取り出す。
私たちは出口のまえへとやってきた。
一見すると、ただの横穴。
しかしこれには結界がはっており、モンスターハウスの侵入者を、逃がさないようなトラップが設置されてるわけだ。
「せい!!」
ずばん! とルシエルが剣を翻して、結界を切り捨てる。
『ばばば、バカなぁああああああああああああああああああああ!』
あー……うるさいなぁ。
まーた叫んでるよ。
『あ、アリエナイ! 二重のトラップを見抜くだなんて! しかも、その結界は転生聖女の結界スキルと同等の力を持っているのだぞ!?』
ほぉん、そうなんだ。
「残念だが、アタシの全知全能の剣・完成形は万物を切り裂く。結界なんて水に濡れた紙同然だ」
『なんだそれは!? それもチートだ! チートじゃあないか!』
……そうかなぁ?
「あんただってズルしてるでしょ。世界樹の加護を用いて、トラップ作りまくってさ」
『ぐぬぅう……!』
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Sinri:29歳児にレスバでまけてやんの
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ん? なんかまた私馬鹿にされました……?
『ば、万物を切り裂く剣に、万物を生み出す釜……。ば、バカな……ヤバいのはそこの間抜けそうな顔の女一人だけじゃあなかったのか!?』
んんっ? またまた馬鹿にされました……?
「残念だったわね」
「アタシらを率いてる神は、ただの神じゃあないから」
『くそっ! 計算外だった! まさか敵は……わしの想像を遙かに越える……化け物だったとは……!』
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Sinri:マスター美香への評価が、ラスボスへ向けるそれで草
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『だが! わしは諦めん! 諦めないぞ! 我が王を守る! たとえ……この身が、滅ぼされようと……!』
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Sinri:次回「ミオケンボ、散る」。デュエルスタンバイ!
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