135.新兵器を簡単に作ってしまう
「ふぃ~……これでカーターは、もう大丈夫かな」
魔蟲襲撃によって、大きな傷を負っていた、帝都カーター。
しかしセイラちゃんの魔術ポーションのおかげで、壊れた建物は問題なく戻った。
食糧問題については、ましろが解決してくれた。
けが人、死傷者もゼロ。これで……万事解決!
「さてじゃ帰ってのんびーりしようかな……」
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Sinri:まだ、問題は解決しておりません。魔蟲がまた襲ってきます
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「ほえー……またかよぉう。魔蟲が来るってさ」
やーね、全く。
じゃあサクッと魔法でぶっ倒しちゃうかぁ。
「ミカりん殿! ここは……我等帝国軍が力を見せる時! 全軍、【銃】を持て!」
帝国軍人達が、外壁へと向かっていく。
私も気になったので、同行飛翔を使い、ルシエルとセイラちゃんを連れて、外壁上空へと飛んできた。
外壁には、帝国軍人たちが並んでいる。
その手に持っているのは……。
「ありゃ、銃だ」
「え? 銃を知ってるの……? ミカ?」
「そりゃまあ」
「神だもんね」
セイラちゃんの中では、神はなんでも知ってるって思ってるようだ。
でも、私が銃を知ってるのは、現代にそれがあるからである。
銃。異世界でも、開発されてたんだ。
「あれは、正式には魔法銃って名前。OTK商会が開発、量産した、最新武器よ」
OTK商会は、世界最大の商業ギルドだけあって、すごいもん作るなぁ。
「銃、構えー!」
ショーが号令を下すと、軍人さんたちが魔法銃を構える。
そこへ、空の彼方から無数の魔蟲達が襲いかかってきた。
うーわ、あれだけルシエルや黄昏の竜の皆が倒しても、まーだわいてくるんだ……魔蟲のやつ……。
めんどっち。
「撃てぇえええええええ!」
ショーの合図とともに、軍人たちが引き金を引く。
ドパンッ……! と銃弾が放出されて、魔蟲の硬い外皮をぶち抜いた。
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Sinri:魔法銃の仕組み
→魔法銃は現代の銃と、基本構造は同じです。ただ、銃弾に火の魔石が使われているため、薬莢や雷管などといった、現代銃では使われてる機構が、組み込まれていないのが特徴的
「火の魔石」
→刺激を与えることで、爆発や燃焼を引き起こす、魔力を帯びた特殊な鉱石
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ほー。異世界の銃は、現代のやつとは、異なる構造をしてるっぽいね。
「驚いたぞ……。魔蟲の外殻は、めちゃくちゃ硬かったはず……」
実際に魔蟲と戦った、ルシエルが、驚愕の表情を浮かべる。
「それが、あんな小さな筒から放たれる攻撃? で、魔蟲の硬い外殻に穴を開けるなんて……すごい……」
「ふふん、そうでしょう、すごいでしょう? 作った人はすごいでしょっ!」
セイラちゃんにっこにこだ。おやこれはもしかして……。
「魔法銃、セイラちゃんが作ったの?」
「惜しい! あたしの尊敬する、グランセばーばが作ったのよっ!」
ああ、なるほど。セイラちゃんのおばあちゃん、グランセさんもかなり才能のある錬金術師なんだっけ。
おばあちゃんが褒められたことで、喜ぶなんて、セイラちゃん可愛いところあるじゃあないの。
「撃て! 撃ちまくれ!」
ドパパパパパン! と軍人たちが銃弾を次から次へと放ち、魔蟲を打ち落としていく。
「ミカの張った結界魔法と、軍人たちの魔法銃があれば、こっちの守りは問題なしね!」
「うーん……」
「どうしたの?」
「いや、こんな凄い発明品があるのに、どうして一度帝都は壊滅しかけたのかなって」
めちゃすご兵器があれば、別に私が出張ってこなくても、自分たちで帝都を守れたんじゃあないかって思う。
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Sinri:「帝都壊滅の理由」
→理由は二つ。1つは、マスターの防御結界がなく、魔蟲の侵入を許してしまったから。
2つ、銃は確かに強力だが、命中精度についてはまだ難あり
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「なるほど……命中精度がいまいちなのか」
「それは仕方ないであろう。敵は、空を自由に飛んでいるのだ」
軍人が銃弾を放つ。でも魔蟲は軍人の攻撃に気づき、上空に飛翔して、避けてしまう。
銃は強力だけど、派手な音がする。
人より鋭敏な感覚を持つ魔蟲に、攻撃が来るタイミングを教えてるようなものだ。
テレフォンパンチみたいなもんである。
だから、軽々と避けられちゃうんだ。
「命中精度については、今後の課題ね」
「今後? 何言ってるのさ。今ある問題は、今片付けておかないと」
ルシエル、そしてセイラちゃんが、目をぱちくりさせてる。
「ものぐさなミカが……まともなことを言ってるわ!」
「めんどくさがりなミカ神どのの口から、まさかそんな言葉がでるとは……」
二人ともどいひーである。
まあ、めんどくさがりやでものぐさなのは、否定しないけどさ。
「ようするに、銃弾が敵に必ず当たるようにすりゃいいんでしょ? 簡単簡単」
「どうするのよ?」
「へい真理、銃弾が敵に必ず当たるようにするやり方おしえて」
「「まーた丸投げ……」」
二人とも、まるで驚いていなかった。
あ、やっぱりみたいな感じだった。
いやほら、私じゃわからないけど、全知全能さんなら何か知ってるかもってね。
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Sinri:全知全能の全能を使い、必ず銃弾を当てる銃的な名前を、付けるのが最も簡単です
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あ、なーるほどね。
全能スキル。それは、私にとって都合の良い能力を、他者に付与する力。
《眷属になろう》を開き、名前や役割を記入することで、その通りの力や、より強い力を他者、あるいは他物に与えることができるのだ。
「つまり、私が銃にいいかんじに、銃弾が必ず当たる銃って名前を付ければいいわけだ」
「「…………」」
二人がジト目を向けてくる。
え、なんすか?
「ミカのことだから……」
「期待はしてませんので、好きに付けてください」
えーえー、どうせ私のネーミングセンスは終わってますよ(ふぇる子、ふぇる太等)。
自分で言うのはいいけど、他人から指摘されると、ちょびっとイラッとしちゃう私である。
うーん、いい名前いい名前……あ。
「へい真理。良い感じの名前考えてちょ」
「「そこまで、丸投げ!?」」
「いやうん、考えるのめんどっちーじゃん?」
どうせ後から、ダサいだの終わってるだの言われるんだし。
他人につけてもらって、それを私が付ければ良いかなって。
「全知全能にここまで丸投げするなんて……。逆にミカはいったい何をするのよ……?」
「名前を付けるという最も重要な作業がありますゆえ」
そうそう。だから、委託できる業務は、他に委託するのが一番なのよ。
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Sinri:幸運銃、とマスターが名付けると、銃弾が必ず当たるようになります
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なるほどね。
「んじゃ、幸運銃っと」
あー、でも全部にいちいち、名前付けておくのめんどくさいなぁ。
と思っていたんだけど……。
パァアアアアアアアアアアアア!
「な、なんだ!?」「おれらの銃が、一斉に光り出したぞ!?」「どうなってるんだ!?」
……うん。
「へい真理! どうなってるの!?」
「「まーた、やらかしてる本人が何もわかってないという……」」
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Sinri:電子精霊の分身が、全ての銃に、幸運銃と名前をまとめてつけておきました
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「お、ナイス~。これからはまとめて一気に、名前付けられるようになったのね」
電子精霊さまさまである。
「ついに名前を付ける業務すら委託してるわ……。置物と変わらないじゃあないの、ミカ」
「いやまあ、いるだけで意味があるので、あの人……」
さてっと。
「へい帝国の軍人さんたち。もう狙いをさだめなくてもいいよー。ガンガン打ってしまいな~」
帝国軍人たちは、困惑するかと思ったのだけど……。
「「「アイ、マム……!」」」
と、素直に私の言葉に従い、引き金を引く。
ドパパパパパパパン!
ざしゅざしゅざしゅざしゅ!
「おお! すげえ!」「全く狙いをさだめてないのに、銃弾が勝手に魔蟲の頭をぶちぬいたぞ!?」「まさに、魔弾だ……!」
おおー! と軍人達が歓声を上げる。
「ありがとう、ミカりん殿!」
「さすが偉大なる魔女だ!」
「我等が銃に、魔法をかけてくれたんだ!」
と、好意的に解釈してくれた。
なぜって?
「ふにゃう」
ぴょこっ、と私の胸元から、バステト神、真白ちゃんが顔を覗かせる。
彼女には、猫だましっていうスキルがある。
発言に信用度をプラスするスキルを、真白が発動させた結果、軍人達は私の言葉を疑いもしないのだ。
「よぉうし、ま、これでここの守りはOKね。んじゃ、根本的な問題の解決に向かいましょうか」
「こんぽんてきな?」「かいけつ?」
二人が首をかしげる。おやおや。
「魔蟲がさ、さっきから次から次へとやってくるでしょ? こっちがいくら魔蟲ぶっ殺してもくる。なんでって思うじゃん?」
「確かに……なんでかしら」
「じゃん? だから……へい真理。どうして魔蟲が次から次へやってくるの?」
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Sinri:妖精郷に、魔蟲の巣があるから
「妖精郷」
→帝国内に存在する巨大樹の森。魔蟲の根城がある
~~~~~~
「なるほど……魔蟲の巣か」
「そう。それを潰さないと、多分今後も魔蟲は来る。だから、それをぶっ壊そうって思ったの。でも、私らが居ない間、ここの防衛をお留守にするわけにはいかなかったわけ」
でも、私の結界魔法+幸運銃のおかげで、防衛力は強化された。
「あとは妖精郷にカチコミするだけだ。いくぞぉ、野郎ども!」
「「あたしたち、女だけどね」」
【☆★おしらせ★☆】
先日の短編
好評につき連載版はじめました!!
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【連載版】転生幼女は愛猫とのんびり旅をする~「幼女だから」と捨てられましたが、実は神に愛されし聖女でした。神の怒りを買ったようですが、知りません。飼い猫(最強神)とともに異世界を気ままに旅してますので
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