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バスとか電車のニオイ

作者: しろかえで

今日も安全安心?しろかえでです(^^;)




 最初の記憶は初めて乗った幼稚園バス

 乗り込んだ途端に()()()しまって……

 真新しい園服を汚してしまった。

 あのバス独特のニオイが……今も鮮明に記憶に残っている。


 母に言わせると……約1週間の“登園拒否”の後、ぐずる私をなだめすかして毎日自転車で送り迎えしたそうだ。

「あの時は参ったわよ!ウチのクルマでは全然平気だったのに!」と今更ながらに母から恩を着せられた。


 思い返してみると当時は郊外に住んでいて……バス停も家からは遠く、駅に至っては2キロ先!

 家族の移動は専らクルマか自転車だった。


 そう!電車に乗ったのも小学校へ上がってから!

 一年生の秋の遠足で海洋公園へ行った時に初めて電車に乗って、やっぱりニオイが気持ち悪くて戻してしまい、せっかくのお弁当も食べる事が出来なかった。


 以来、乗り物を使った遠足や社会科見学はトラウマで……他の子とは違って、文字通り“歩きオンリー”の遠足が好きだった。


 でも小学生も高学年になると林間学校や修学旅行も控えている。

 酔い止めの薬は勿論飲むのだけど、「日頃の訓練も大切!三半規管を鍛えるんだ!」と放課後、校庭の鉄棒で“逆上がり”の他に“足かけ上がり”や“こうもりふり”までやっていたら……


「橋本!パンツ見えてるぞ!」って声が飛んで来て、私は「ギャーッ!!」と叫んで鉄棒から落ちた。


 冷やかしで私に言葉を投げ付けたワルガキは責任を感じて……三角巾で右手を吊るした私に付き添って家まで来て、玄関口で盛大に謝った。


 それから毎朝、私の事を迎えに来るし、板書のノート取りが追いつけない私の為に“いつもは取らないノート”を取ってくれた。

 なぜそれが分かったかと言うと……


「オレ!字が汚くてゴメンな!」

 つっけんどんに渡されたノートは……どれを見ても前のページまではラクガキだらけだったからだ。


 そんなアイツとの最後の思い出は……引っ越し直前に行った社会科見学。


「ミントのガムが酔い止めにいいらしいぜ!」と“ペンギンの画の付いた”板ガムをくれてバスのニオイがあまりしない前の方の席に私を座らせた。


 ワルガキから一転して()()()()()()になった彼は……その後、随分とモテたらしいと風の噂に聞いた。


 それは分かる!

 アイツ!いい奴だったから……

 ひょっとしたら私の初恋だったのかもしれないな……



 6年ぶりにこちらへ戻って来て編入試験も無事合格!

 今日からは新しい制服!

 こちらのブレザーの方がスッキリしたデザインでリボンとネクタイの両方あるのが嬉しい。

 で、初日の今日はキリッ!としたくてネクタイにした。


 駅から学校まではバスで……乗り物のニオイにもすっかり慣れてしまった私だけど、なんとなく前の席を選んでしまう。


 今日はかなり早く家を出たのに、電車やバスの中は大きなバッグ持ちの高校生が結構いる。


 きっと朝練なんだろうなあ……そう言えば、部活どうしよう……


 なんて考えていたら


「ガムいる?」って声を掛けられた。


「えっ?!」と顔を上げたら精悍だけどどこか懐かしい笑顔の男の子が私を覗き込んでいた。私と同じネクタイを締めているから『同級生』に違いない! それにそのガムは……

 パッケージこそリニューアルされているけど、“あの時”貰ったのと同じガムで……やがて私は……このミントの香りがするキスを彼とする事になるのだった。





                                 おしまい





幼い頃、私もバスのニオイが苦手でした(-_-;)



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― 新着の感想 ―
[良い点] (*´艸`*)  「縁は異なもの味なもの」なんて言葉がありますけれど、「ニオイ」もありますね〜……色々w  「幼馴染みの離別と再会」というシチュエーション、ラストの落とし方、好きで…
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