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1-1 最底辺孤児の俺が入手したアイテムが、世界一稀少だった件

「では、初日の成果を見せてもらおうか、エヴァンス」


 教卓にふんぞり返った教師が、見下すように俺を見る。


「エヴァンスなんか、ろくなもん入手してないだろ」


 馬鹿にするように、クラスメイトが決めつける。


「おう。なんせハズレもハズレ、どハズレのダンジョンをガチャで引いたからな」

「しかもリセマラすらせずに、そのまま涙目で受け入れて」

「言ってやるなよ。エヴァンスは孤児枠で学園に入った貧乏人だ。引き直す金なんかないだろ」

「なんせ寄付金や寮費すら払えないからな」

「お情け野郎なんだ。許してやれよ」


 わいのわいの言い募る。悪口を止めもせず、教師は俺を見てにやにやしている。


 ここ王立冒険者学園コーンウォールには、貴族や金持ちの子弟が集まっている。とはいえここは底辺Zクラス。教師から学生まで、性根の腐った奴しかいない。


「それにしてもエヴァンスの戦利品公開をクラスの最後に持ってくるとか、先生も趣味悪いよな」


 誰かが小声で呟いた。


「あいつ、出世できずに最底辺Zクラスの万年担任だからな。学生いじめるしか楽しみないんだろ」

「ま、俺達には関係ないな。あのカス教師にもたっぷり賄賂渡してるから、いじめられるわけないし」

「そうそう。所詮世界は金よ」

「親の財布に感謝だな」

「違いない」


 ひそひそ話が続いた。少し聞こえたのか、教師が渋い顔になる。


「ほら、早く出せエヴァンス。鑑定するから。お前のせいで、クラスの団結心が損なわれるわ」

「……これです」


 懐から、俺はアイテムを出した。穴の開いた木の棒。小枝くらいの大きさの。俺のダンジョンで、リアンからもらったものだ。


「なんだよそれ」


 もう、クラスメイトは大喜びだ。


「こいつ、木のストロー探してきたぞ」

「おぼっちゃまは、茶を飲むのもストローがいいってか」

「そんなん、どんなモンスターがドロップするんだよ」

「これしかないのか」


 教師に睨まれた。


「はい……」

「モンスターは何体倒した」

「その……一体も」

「はあ? 拾い物かよ。貸せっ」


 呆れ果てたという顔で、俺から奪い取る。


「鑑定するのもめんどくさいな、これ」


 溜息なんかついてやがる。嫌な野郎だ。


「魂の精霊よ、我が請願に応え、存在の深淵からアカシックレコードを伝えたまえ」


 それでも一応、ちゃんとした鑑定魔法を唱える。――と、クラスメイトの戦利品鑑定のときと同様、虚空に声が響いた。




――鑑定不能アイテム。所有者限定装備――




「ぎゃははははっ。ほれ見ろ」

「鑑定不能とか……」

「そりゃゴミだからな。鑑定できるわけないわ」

「孤児野郎にふさわしいな」

「所有者限定って、そら孤児の使ったストローなんか、誰も使いたくはないわな」


 俺を嘲る声が、あちこちから上がる。


 だが続いた神託に、クラスの空気は凍りついた。




――稀少度:ウルトラレア。推定買取価格三千万ドラクマ――




「ウルトラレアだと!?」

「さ、三千万ドラクマ……」

「三千万あれば、ちょっとした家が建つじゃねえか」

「俺様のレア装備でさえ、買取価格十二万ドラクマだったのに」

「鑑定不能アイテムなのに、なんで買取価格だけは出てるんだよ」

「それだけ稀少だからだろ。ウルトラレアアイテムなんて、王国中の冒険者が危険なダンジョンを探し回っても、十年に一個出るかどうかって話だぞ」

「精霊が狂ったんだ。そうに決まってる」

「先生、もう一度鑑定して下さい」

「う、うむ……」


 学生にあおられた教師が、俺のアイテムを再度手に取った。手が震えている。


「た……魂の精霊よ。ぱが……我が請願にここたえ……」


 何度も噛みながら、再度鑑定魔法を起動する。しかし……結果は同じだった。


「変わらない……」

「どういうことよ」

「エヴァンスのダンジョンって、どハズレだったよな」

「ああ……間違いない」


 クラス中の視線が、俺に集まった。




 この日以来、俺の名前は世界に轟くことになった。ハズレダンジョンから貴重アイテムを次々発掘する、謎の男として。


 そもそもの発端は、今朝のことだ――。




●期待できそうと感じたら、ブクマ&評価にて、サポートよろしくお願いします。皆様のご支持が執筆のモチベです。

●次話「ダンジョンガチャの朝」、お楽しみにー。

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