エピローグ
カラオケのチェーン店の一つで、唄ってんだか叫んでんだか自分でも分かんない乗りで、私は「うっせぇわ」を連呼した。
「うっせぇうっせぇうっせぇわ!」
いい気分なのにみんな口々に心配してくれる。
「王様大丈夫?大声で唄って背中痛くないか?」
「安心させようとして無理しちゃダメって」
「背中叩いて現実思い出させてあげようか?」
最後は見かけによらず仲間内では毒舌な桜子だ。
「ほぼ完全復活よ!もう背中下にしても眠れるもんね」
学校でも気分悪くなったりしなかったし。
弥生はどうしてるかって心配してたら、弥生はにかっと破顔一笑だった。
「私の事は心配しないでいいよ。あの時ね、身体は乗っ取られてたけど意識はあったんだよ」
あ、無理してる。
「渡辺さんにも説明貰ったし。ありがとね」
「私が付いてるんだから無理しないでね」
「王様ついてたらこんなに心強いことないって」
一息置いて続けた。
「まだ瘡蓋にもなってないんだ。あのことはでは話したい事一杯あるんだけどもうしばらく時間置いてからにしたい。いい?」
「いつでも」
私もにかっと笑った。
家が近い子達の口から弥生のマンションのことが噂になってたみたいで、
「お前ら悪魔祓い失敗したって本当か⁉久保んちに悪魔現れたのかよ」
「王様は何でも出来るって思ってたけど、失敗もするんだね」
「それとも元々それが狙いか?」
「久保って本物が帰って来たの?窓のガラスが有得ない割れ方したって聞いた」
ってな具合で訊かれたんだ。なんか弥生も克美も桜子も貝になってたらしい。まあ当事者の弥生に面と向かって訊く人はいなかったそうだけど。
「そうです。私が悪魔祓いに失敗した魔導師です。いやぁ悪魔は美しい顔してるってホントだね。ハンサムだったんで弥生を離すのに苦労したよ」
とお答えしておきましたさ。
「少女魔導師アイドルとして売り出すってのどうかな?」
って冗談で訊いたらさ。
「幸せの呪文、とかっつって、TVの前の良い子達をカエルに変身させんじゃねぇぞ」
って藪中に突っ込まれた。
「私そんなことしないよね?」
カラオケ店でみんなに話すと否定してくれるのを期待してたのに。
「いや、カエルの方が幸せって人生もあるんじゃないかな?」
「本人はそう思ってなくても、客観的な事実としてそうなるのは有得るかも」
克美と桜子は真剣に頷いてた。
「弥生!どう思う?」
マザーランドをリクエストしようとしてた弥生に振る。
「せめてパンダにしてあげて。親御さん達もそれなら納得してくれんじゃないかな?」
それでいいと思ってる?
「それなのに「マザーランド」?」
「これは克美のリクエスト。私はね…」
「じゃあ私のは「ケモノミチ」でお願い」
すかさず割り込む。
「古―い。私の「ミックスナッツ」入れたらね」
「じゃあ私のは「キックバック」で」
と桜子も相乗りしてきた。
「わたしゃリクエスト曲送信マシーンじゃないっつーの!」
「あ、弥生、あんたの「ちゅ、多様性。」のイントロ始まった」