表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シールディザイアー ~双世の精霊術師、遙か高嶺に手を伸ばし~  作者: プロエトス
第二部: 君の面影を求め往く - 第一章: 南の端の開拓村にて
151/254

第三十五話: 怪鳥鳴、木立の中より

 遠間には(まば)らと見えていた木立(こだち)は、近付くにつれ鬱蒼(うっそう)と広がり続け、まるっきり草原(サバナ)のようなこのダンジョンらしからぬ、ちょっとした森林風景を作り出すこととなった。


 高さ十数メートルほど、水平方向へ幹を広く伸ばし、大きな葉を茂らせたイチジクっぽい樹。

 高さ十メートル近く、鋭い(とげ)の生えた枝に無数の小さな葉を付けたアカシアっぽい樹。

 そして、高さ四五(しご)メートルほど、細長い幹の上の方に芭蕉(ばしょう)に似た葉を広げるバナナっぽい樹。


 植物の種類には詳しくないのだが、そんなような樹木が数多く、辺り一帯に立ち並んでいる。

 下草も非常に深く()い茂り、徒歩の冒険者たちは胸近くまでが隠れてしまっていた。

 熱帯雨林のジャングルには遠く及ばないにしても、十分に森と呼べる規模ではなかろうか。


「どれも外じゃ見掛けない樹だよね。実が()ってないからハズレなんだけどさ」

「いいや、後々を考えれば大きな収穫だぞ。果実が生るというのなら植樹を試してみたいものだ」

「こいつなんか、けっこう良い木材になりそうですぜ。村ン周りでも育ちますかね……」


 一人、樹上に浮かび、一面に広がる緑葉の絨毯(じゅうたん)を見渡せば、まるで雲上の景色である。

 風の精霊術によって音声をやり取りし、問題なく会話が成立してはいるものの、ここからでは密集した枝と葉――林冠(りんかん)に覆い隠され、地上にいる皆の様子が目視できなくなってきた。


 はぐれたら困るな。周りの様子を確認したら、そろそろ降りていって合流した方が良さそうだ。


 と、考えていたところで、下方の木々の中にいる何物かと……思いがけず目が合った。


「あたまさわって!」


『な! こ、こいつは!?』


「みんな、気を付けて! 樹の上に何か――」


 咄嗟(とっさ)に警告を放つも、その叫びに反応したか、別の何かが眼下の森から飛び出してくる。


――バサバサ! バサバサバサっ!


「ケヒャアアアッ!」

「うわあああ!」


 その数、三体! 人間サイズの……肌色の……って、ちょっと待て! なんだこれ、(くっさ)


「どうした!? なにがあった、シェガロ!」

「落ち着け、旦那! 樹上に敵だ! まずい! こいつらはっ!」

「あたまさわって!」

「全員! 絶対にやるんじゃないよ! 分かってるね!?」

「「「「「へい、姐御(あねご)!」」」」」


 そうして、()(くず)し的に乱戦が始まった。


 地上では、どうやらマティオロ氏を始めとする騎羽(きば)団も戦闘に加わっているようだ。

 キン! キン!という硬い物同士のぶつかる音が絶え間なく響き、時折、怒鳴り声が上がる。

 だが、耳に入ってくるそうした慌ただしい通信音声に意識を向ける余裕は、現在(いま)の僕にはない。


 宙に浮かぶ僕の周囲を飛び回り、息吐(いきつ)く間も与えず襲いかかってくるのは三羽の怪鳥(けちょう)だった。


――バッサバッサ! バササササァ!


くさっ!」


 臭い! とにかく臭い! と言うか、汚い! 尋常ではないほどに。


「ギャア! ギャア!」

「うるさい! 触るな! 近寄るな!」


 足先に生えた長く鋭いかぎ爪で攻撃してくるクサイドリどもを、スコップで牽制(けんせい)して追い払う。

 爪の先には腐肉がこびりついており、引っかかれようものなら一発で破傷風(はしょうふう)(おか)されそうだ。


 こいつらの姿は、全体的なシルエットとしては、大きな鳥そのものと言って良いだろう。


 手はなく、両肩から腕のように伸びているのは、それぞれ一メートル以上もある翼だった。

 腰から下は羽毛に覆われ、尻には扇状に広がる尾羽も生えている。

 股下(またした)――二本の脚に至ってはまさに猛禽類(もうきんるい)のそれであり、かぎ爪一本一本が刃物のようである。


 にも(かか)わらず、それらが繋がっている胴体、そして首と頭だけは、ほぼ人間の姿を(かたど)っていた。

 しかも、体付きこそ()せぎすながら、顔立ちは比較的整った……裸の女だ。


『いやいや、僕はこれをそんな風に形容したくはない! 断じて!』


 その()き出しの肌は薄汚れた色の斑模様(まだらもよう)を浮かべ、身繕(みづくろ)いなど一切したことがないのだろう、毛髪や羽毛の惨状(さんじょう)はもはや見るに()えない。耳障りな声でギャーギャーと(わめ)き、眉根(まゆね)(しわ)を寄せ、(よだれ)を垂らして大口を開ききった表情は、ただただ醜悪(しゅうあく)の一言に尽きた。

 ふるふると揺れる小振りな胸など、本来ならば思わず目を奪われてもおかしくなかろうに……。


冒涜(ぼうとく)だ! お前ら、世のすべての女性たちに謝れ!』


「ぜんぜん嬉しくない! と言うか、臭いんだってば!」


 不潔で下劣なその性はザコオニ並み……そう、言わば、こいつらは空飛ぶ雌のザコオニだ。


 クサイドリは三羽揃って下方に陣取り、僕が降下して逃げられないよう行く手を(ふさ)いでいる。

 こちらが空中戦を苦手としていると一瞬で見抜かれたのか、意地の悪さもザコオニ並みか。


――に我は請う(デザイア――)……デザ……くぅっ!」


 更には、絶え間ない波状攻撃と凄まじい悪臭を(もっ)て精霊術の請願(せいがん)をも妨げてくる。


「ケヒャア! ギャア! ギャア!」


『何してるんだ!? 早くまとめて叩き落としてしまえ!』


「わかってる……けど……うわっ!」


「シェガロ! 無事か!? ぬぅん、騎羽(きば)を!」

「あたまさ――プヒ!」

「……ッチ! 旦那、ここは一旦(いったん)、森から出た方が良いですぜ!」


 参ったな。地上の方でも何やら苦労しているみたいだ。

 ひょっとすると、これは少々面倒なことになるんじゃなかろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
臭い汚い女ザコオニ(;´д`) これは、裸の女性でもキツイものがありますね汗 男性ザコオニたちより汚そうなのはなぜだろう( ̄▽ ̄;) しかも行手を阻んでくるんですね。 なんとかこれ以上の精神的ダメージ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ