4月8日 ~そんな様子が可笑しくて、二人で笑った~
教室の扉を勢いよく開けると、一人で作業をしていた、もう一人の委員長である見波さんがこちらを向いた。
「見波さん、ごめんっ」
教室に入って謝ると、見波さんは紙数枚を左手に持ち、
「う~ん、折角戻ってくれたんだけど、これを留めたら、もうお終いなんだよね」
そう言って、右手に持っていたホッチキスで留めた。
「はい、お終い」
その紙を同じようにホチキスで留めたであろう書類の山に重ね、こちらを見つめる見波さん。そんな彼女を前にして、僕は唖然として何も言う事が出来なかった。
その後、纏めた紙を職員室に持っていくとの事だったので、僕が全て運んだ。先生からも以後注意するように言われてしまった。
「お疲れ様」
職員室から出てくると、見波さんが待っていてくれた。
「いや……それより、今日は本当にごめん」
僕正面で手を合わせ、頭を下げる。
「う~ん……」
見波さんは何かを考えるように少し唸った後、静かになった。
「クレープっ」
すると、見波さんは藪から棒にそう口にした。
「一応、戻って来てくれたから、それで許してあげる」
頭を上げると、
「分かった。それ位なら」
僕は苦笑して答えた。
「ただし!!以後、気を付けるように!」
見波さんは少しだけ口調を強く言った。
「はいっ、今後、このような事が無いよう努めます!!」
それに、僕は軍人のように背筋を伸ばして返す。
「…ふふっ」
「ぷっ、はは…」
そんな様子が可笑しくて、二人で笑った。
「それじゃあ、行こっか」
「そうだね」
僕は見波さんと出口に向かって歩き出した。