4月8日 ~ほお、早速ぶっちか。やるな、恭介~
オリエンテーションは午前中に終わったので、まだ昼前なのだが放課後となった。
僕は学校の自動販売機でジュースを買い、それに口を付けながら学校の敷地内をぐるっと回りながら、通用門に向かって歩いている。
門付近で、僕はそこに知った顔を捉えた。男は撓るように伸びた短髪に鋭い眼をした男、樫原ががっしりとした身体を門の柱に預けている。
「樫原」
無視して通りすぐるのも難だから、声を掛けるだけ掛けた。
僕の呼び掛けに気付いた樫原は体制を変えずに、顔だけこちらに向ける。
「何だ、恭介か。樫原って呼ぶから、誰かと思ったぜ」
「樫原もい……」
「玲司で良い。昨日も言っただろ?」
樫原は僕の言葉を遮り、名前で呼ぶよう要求してきた。
「……ああ、そうだったね」
「恭介ももう帰りか?」
僕の返答に満足そうな表情を浮かべ、さっき僕が言いかけた事を聞いてくる。
「うん、玲司も?」
よくよく考えてみれば、僕等は同じ一年なのだ。このやり取りに意義は無い。
「俺は二人待ち。舞も菜々香も委員長の仕事だってよ」
……委員長。このキーワードに僕は何か引っかかる様な感覚を覚えた。僕はその答えに直ぐ辿り着く。
「拙っ!僕も仕事頼まれてた!!」
委員決めが終わった時、放課後、教室に残るよう言われてたのだ。
「ほお、早速ぶっちか。やるな、恭介」
玲司はニヤニヤしながら言う。
「いや、今から行ってくるっ」
僕は玲司にそう告げ、教室に向かって走り出した。