4月7日 ~また、これから始めようと思うんだ~
教室に戻ると、自己紹介の最中だった。僕の順番は過ぎていた為、そのまま無難な挨拶をし、席に着く。
全員終わると、先生が連絡事項を言い、解散となる。
「今日はこれでお終いです。起立っ…」
今日はまだ委員や係が決まって無い為、先生が号令を掛ける。
そうそう、担任はやっぱり、始業式の時、うちのクラスの生徒名を読み上げていた人だった。ウェーブ掛かった黒髪を肩甲骨を隠す程度伸ばした女性。名は緑川 夏梅。目測だが、二十代後半だろう。
閑話休題。解散となり、鞄を持って帰ろうとすると、さっきの男がやって来た。
「恭介。この後、時間あるか?」
「うん、大丈夫だけど…」
「そうか。なら、少し付き合え」
そう言って、男は歩き出す。その後を僕は付いて行った。
階段で一番上まで登り、前を歩く男が正面の扉を開くと、その向こうには空が広がっていた。どうやら、屋上のようだ。男に続いて、僕も外に出る。
「連れて気だぜ」
男がそう言った先には、女の子が二人居た。さっき、この男と一緒に居た娘と僕を殴った娘である。二人とも、僕の方を向いた。そして、前者の女の子が話しだした。
「恭介。私達、考えたんだ。これからどうするか。恭介が覚えてなくても私達にとって恭介は友達。だから……また、これから始めようと思うんだ。私、皆川 菜々香。よろしくね」
「俺は樫原 玲司だ。下の名前で呼んでくれて構わないぜ。むしろ、そっちで呼べ」
二カッと笑みを浮かべ、男が続く。
「わたしは天月 舞。随分、遅くなっちゃったけど……おかえり、恭ちゃん」
彼女はまだ割り切れていないのだろう。寂しそうな笑みを浮かべて言った。