4月8日 ~ただ、後に続いたその言葉を聞いて、僕は軽く苦笑した~
僕達五人は学校の近くの公園にやってきた。見波さんの話によると、僕等が目指すクレープ屋は車で販売する移動式の物らしい。
この公園はそこそこ規模が大きいようで、今は道形に並ぶ木に挟まれた小道を歩いている。
道幅は五人がゆったり並んで歩ける位しかない為、両脇に生える木の枝によって、日差しが遮られている。現在は微風が吹くと肌寒いが、夏に来れば快適に歩けそうな空間だ。
右を見ると、木の向こう側に公園と道路や住宅を遮るフェンスや塀があり、左には野球場が広がっている。
小道を歩いていると、木々に囲まれた景色が開けた。そこには芝生に覆われた大地が広がっており、それを囲うように、今、歩いてきた小道が二手に続いている。
僕達は左に曲がり、小道を歩き続けた。
先程とは打って変わって、日差しを遮る物が何も無いため、ぽかぽかして気持ちが良い。
そんな小さな幸せを感じていると、左手に子供が遊ぶようなアスレチックが設置されたエリアが見えてきた。
先導する見波さんはそのエリアに入っていく。
僕等もそれに続くと、アスレチックエリアの一角に一台の車が止まっていて、そのすぐ側に看板が置かれていた。あそこが目的地のようだ。見波さんは一直線に近付いていく。
「いらっしゃいませ」
車の中に居たお兄さんが僕達の存在に気付き、声を掛けてきた。
女性陣はカウンターの横に掛けられたら品書きを見て、どれにするかを楽しそうに談笑している。
僕と玲司は少し後ろから品書きに目を向けていた。 女性陣は一分弱悩んで、そろぞれ注文する。三人は甘いクレープを、僕と玲司は総菜系を選んだ。
僕は店員から受け取ったチキンカレークレープをかじる。すると、辛みの抑えられたカレーの風味が口内に広がった。その他の具材と混ざり合うことにより、クレープの生地とうまく合っている。なかなか美味しい。
見波さんの方に目を向けると、彼女はとても幸せそうに苺クレープを食していた。何とも、奢り甲斐のある事である。
ふと、見波さんは僕の視線に気付いた。
「どうしたの?」
こちらを向いて、彼女は問う。
「いや、凄く美味しそうに食べてるなと思って」
僕が問に答えると、見波さんは目を輝かせた。
「そりゃもう、ここのグループは絶品だもん。岡村君も食べてみなよ。はいっ」
そう言うと、見波さんはグループの端っこを千切り、僕に差し出してくる。
それを受け取り、口に入れると、バランスの取れた味が広がった。苺や生クリームは勿論、生地が酸味や甘みを絶妙に引き立てている。
「……美味しい。これは想像以上だ」
「そうでしょ」
共感を得られたことが嬉しいのか、見波さんは嬉々として話す。
「岡村君は甘いのじゃないんだね」
「僕はこれで昼食を済ませちゃおうと思ってさ。それに、こっちも美味しいよ」
僕も自分のクレープを千切って、見波さんに差し出した。
「どれどれ……あ、ほんとだ」
チキンカレークレープを食べた彼女は、僕に同意する。
「でも、やっぱ私は甘い方が良いかな」
ただ、後に続いたその言葉を聞いて、僕は軽く苦笑した。
「そっか」