4月8日 ~舞は可愛いな~ ~
僕を含めた五人は公園に向かって歩いている。玲司、菜々香、天月さんが門に居たのは、僕を待っていたようで、彼等も僕達に同行する事になった。
現在、見波さんと菜々香が話しながら先頭を歩き、その後ろを天月さん、玲司、僕が三角になって話している。
「はぁ……見波さんと菜々香には要注意だよ……」
僕は力無く愚痴る。菜々香は先程、見波さんが冗談を言ってる事に気付いていたようだ。彼女がその事実を知った時、僕は体から力が抜けるのを感じた。菜々香は見波さんと共闘して、僕を弄っていたのだ。
「まあ、良いじゃねえか。面白い物が見れたし」
楽しそうに言う玲司を俺は睨む。だが、彼の視線は俺ではなく、天月さんの方を向いていた。
「……なによ?」
天月はジト目で玲司を見る。
「いや何、昔の事を思い出してただけだよ」
そういう玲司は遠い目をしていた。綺麗な過去を見ているような、そんな表情だった。
「何それ?」
天月さんは合点がいかない様子。
「舞は昔から嫉妬深いなと思って」
玲司はからかうな笑みを浮かべて言う。
「なっ……」
舞の表情が一転する。
「恭介が女の子と一定以上仲良くする旅に機嫌を損ねていたからな」
「いつの話をしてるのよっ!」
玲司の言葉によって、天月さんは狼狽させられた。
「なら、さっきのは何なんだよ?」
そんな天月さんに玲司は更に追求する。
「さっきのは、ただ……」
「ただ?」
尻窄まる天月さんに、玲司は相変わらず楽しそうに続きを促す。
「……恭ちゃんの思い出を汚された様な気がして……」
天月さんは俯いて、ボソボソと言った。
俺の思い出、か。
今の会話を聞いていたのか、菜々香が天月さんの後ろに回り、彼女を抱きしめる。
「舞は可愛いな~」
「ちょっとっ、菜々香っ」
そんな菜々香が煩わしそうに舞は言うが、彼女を振り払おうとはしなかった。本気で嫌がっている様には感じられない。
前を見れば、そんな様子を見波さんがニヤニヤしながら眺めていた。