06 コンビニ人間2✧︎
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読み進めるうちに、やがてミソジニーを拗らせたような、デフォルメ化された人物が現れる。
白羽という35歳の男性だ。
彼は古倉さんが勤めるコンビニの、新しいバイトとして採用される。
男尊女卑が激しい性格、プライドだけは無駄に高く、根拠もなく周囲を見下す、口先だけで仕事が出来ない──女性との出会いを求めてコンビニバイトを始めたという……人間のクズを絵に描いたようなこの男は、勿論社会不適合者。
自分を受け入れない社会に対し、呪詛を吐き続ける憐れな人間。
だが、しかし、そんな彼の言葉の中にも、的を射たものもあった。それはこんな台詞に表れる。
“──ムラのためにならない人間には、プライバシーなんてないんです。
(中略)
結婚して子供を産むか、狩りに行って金を稼いでくるか、どちらかの形でムラに貢献しない人間はね、異端者なんですよ。だからムラの奴等はいくらだって干渉してくる。
(中略)
あんたなんて、はっきりいって底辺中の底辺で、もう子宮なんて老化しているだろうし、性欲処理に使えるような風貌でもなく、かといって男並みに稼いでいるわけでもなく、それどころか社員でもない、アルバイト。はっきりいって……(中略)……人間の屑ですよ。”
“──普通の人間っていうのはね、普通じゃない人間を裁判するのが趣味なんですよ。”
──自分のことを棚に上げ、古倉さんに対し、放たれるこれらの言葉。
本当にどうしようもない人だ……。呆れてものも言えない。不快を通り越して、不憫に思う……。
だがしかし……これらの台詞には、色々と考えさせられるものがある。
例えば……〈人は社会的な動物だから、社会性に劣る人々を、無意識的に攻撃してしまう。それは本能に根ざした行為。だから、イジメや蔑視はなくならない〉……そんなことを、ついつい思う。
“──皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった。”
──古倉さんのこの独白も同様だ。
“変なもの”に干渉してくる“普通の”人々の“正常な”感覚──これが“マイノリティ”にとって、どれほど迷惑で苦痛であるか!
そして、わたしが『コンビニ人間』で最も好きな表現が、次の二つの文章だ。