02 自己紹介✧︎
ありがたいことに、二番目の過ごし方を選んだ──あるいは強要された人々のおかげで──電気もガスも水道も、いつも通りに使えている。
わたしの地球最後の日の過ごし方は……二番目と三番目のハイブリッドだった。
人類最後の日に仕事をしよう! という奇特な人はやはり少ない。
わたしのバイト先である、このコンビニ──サンキュー・マート緋色町店──の店長も、シフトに入ることを頑なに拒んだ。
そこで、わたしは手を挙げた。
わたしには、些少な夢があった。
──突然だが、ここで自己紹介をさせて欲しい。
わたしの名は鳳凰堂 周。16歳の高校二年。図書委員だ。
そして今から言うことは──聞かされた人々を、きっと白けさせる……そのことは十二分に承知している。絶対に、鼻白む思いをさせる筈だ。
だけど……この言葉以外に自分をうまく……表現出来る言葉がない……だから、言わせて欲しい。
……私はずっと……この世界にうまく馴染むことが出来ないで……生きてきた。
コイツ、面倒くせぇ……と思ったことでしょう……
本当に、すみません……
幼少の頃からなんとなく、クラスの中に居場所がなかった。
元気一杯、楽しそうにはしゃいでいる子供たちの輪の中に、入っていくことが出来なかった。
本能的に“あそこのグループの子供たちと、わたしは別の種類の生き物だ”、そんな風に感じてしまう。
なので……クラス替えの度に、自分となるべく近そうな……大人しそうな……影の薄い女の子を見つけてはすり寄った。
そんな女の子たちと身を寄せ合うように、クラスの中で息を潜めて生きてきた。
そして……自分と同じような、大人しい女の子を観察しては、自分と彼女たちのどこが同じで、どこが違うんだろう? ……そんなことを毎日考えて生きてきた。
今もそうだ。
今もそうだ。
今もそうやって、周りの目を気にしながら、周りから浮かないように……オドオドしながら生きている。
オドオドしながら周りの真似をして、何かから逸脱しないように。そればかりを考えている。
そればかりを考えて、この歳まで生きてきた。
13歳の冬だった。三年前の──中学二年。
もうきっかけは、はっきりとは思い出せない。
でも多分、元々読書が好きだったわたしは……SNSで……誰かがこの作品を熱烈にオススメしていたことを、記憶のどこかに留めていたのだと思う。
いつも行く図書館のオススメコーナーに────その本はポツネンと置かれていた。
──『コンビニ人間』 村田沙耶香著