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09 コンビニ人間5✧︎


 古倉さんは白羽とともに、就職面接へとおもむくことに。

 その際──二人は会場近くの、とあるコンビニに立ち寄る。


 お店に入るや否や、雷電に打たれたかの如く、彼女はかつての感覚を鮮やかに取り戻す。

 このくだりのテンポよい描写は圧巻だ。





 “──私にコンビニの「声」が流れ込んできた。

 コンビニの中の音の全てが、意味を持って震えていた。その振動が、私の細胞へ直接語りかけ、音楽のように響いているのだった。”



 そして、古倉さんが白羽に対し、コンビニへの回帰を宣言することで、この物語は閉じられる。




 “──私にはコンビニの「声」が聞こえていた。コンビニが何を求めているか、どうなりたがっているか、手にとるようにわかるのだった。”


 “──「身体の中にコンビニの『声』が流れてきて、止まらないんです。私はこの声を聞くために生まれてきたんです」”


 “──「気がついたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べていけなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです」”



 古倉さんの台詞に対する白羽の言葉は、常識人のそれだ。




 “──「狂ってる。そんな生き物を、世界は許しませんよ。ムラの掟に反している! 皆から迫害されて孤独な人生を送るだけだ」”




 対する古倉さんの台詞はこう。



 “──私はコンビニ店員という動物なんです。その本能を裏切ることはできません。”




 ──“コンビニ店員という動物”…………おおよそ普通の人間が考え付く言葉ではない。


 こんな狂った物語の閉じ方を見たことがない。


 そして……言うまでもなく、これは自己受容の物語。





 ◆ ◆ ◆





 わたしは全身の肌が粟立つのを感じながら、本を閉じた。





 目を瞑り、天井を見上げる。ほの白い蛍光灯の光が、静かに目を焼く。


 




 




 静かな感動が身体を満たす。


 



  


 沙耶香様の紡いだ言葉が、わたしの皮膚の中で……いつまでも蠢いていた……。

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