実験作品です
皆さんどんな反応をもたれるかとても興味深く思います。
人間が向上心を失ったのはなぜか
虫の仕業だ
寄生虫か、さもなくば新手の環境ホルモンか、ハンミョウの変わり種か
そうではない。
世界最高の知性はご存じの通り菌類。彼らは神と対話を果たした。そして、しばしその輝きの中で呆然としたあげく、猿の体内に入り内側から品種改良をした。そして、人間を作り出し、何かをした後、森に帰ってキノコになったりした。その沈黙の正体は当然の理を持って地球上の生物では計り知れない。
次いで虫 彼らはなぜあんなに多いのか?いや、少なすぎるくらいだ。彼らは一つ一つが記憶端末として機能している。
彼らは一つの巨大なネットワーク。脳
コンピューターは愚かにも0と1で計算する。量子力学コンピューターなどといって得意がっている物は結局の所それがコンビになった物に過ぎない。対して虫は何万種類も居る。色鉛筆と光学プリズムよりも差がでかい。
しばしば、有能な虫たちを悩ませる大問題が起きる。真ゴキキラーの発売とかそんなちっぽけなレベルの話では無い。もっと因果律レベルの問題だ。
そのような莫大な計算が必要になったとき、人間はなすすべも無くぽかんとする。だが、バリアブルな虫たちは脳の容量を増やすためにイナゴを大群にするのだ。
自然はしわん坊だ。無駄な資源はびた一文支払わない。それなのに、彼らは増え、何をするでも無く消える。背景に理由があるのだ。
そんな無敵の支配者である虫にも天敵が居た。
ファーブル博士だ。彼は悪魔だった。思いもよらない手法のちょっかいをだし、その結果、果たされるべき緻密な計算に甚大な遅延を引き起こした。
あるときなどは、フンコロガシが転がす糞に棒を突き刺した。こんな事をする動物は人間だけだが、人間とてこんな悪意をむき出しにするものは滅多に居ない。
嫌がらせを受けているフンコロガシ自体は別段のことも無い。その事件にファーブルが関与していたことすら知らない。しかし、彼を一分子とした集団の集合知バグズはこの理由の無い暴挙にいらだっていた。
「なんであんなに意地悪なんだあのファーブルという男は
「しかし、あの顔を見ろ。まるであどけない子供のようだ。
「あどけない子供!われわれの天敵!
「そういえばそうだったな。
虫の種類が減ったのは環境変化などではない。ファーブルが原因だ。
ファーブルに興味を持たれないために特徴的な虫はおしゃれをやめたり、特技を隠したりしたのだ。
この防護策はファーブル自身には無力だったが、ファーブルの後胤にはてきめんに効いた。
我々は神に対してペテンをやらかしたのだ。
集団による合理性を個人の非合理の中に隠した。
というのも、神はどうやら合理性を好まない。合理性を持った物に火宅の苦しみを与える。無知蒙昧の脊椎動物が地獄なるイメージを作り出し共有しているが、あれはいわゆる合理性を持った個体の世界認識を指している。