もう婚約者ではありませんが?
初作品なので読みにくいとは思いますが、定番の婚約破棄ものを書いてみました。よろしくお願いします。
私には3歳年下の可愛い妹がいます。
私と同じ金髪なのに私と違ってふわふわで、瞳の色は母と同じ菫色、頬は薔薇色でいつも笑顔で、いるだけでまわりを幸せな気分にさせてくれる存在です。
私はと言うと、髪は妹と同じ金髪だけど少しの癖もないストレートで瞳の色は父と同じアイスブルー。冷たい印象を与えてしまうようです。
まあ魔法の属性も水と氷が一番強いのでそう見えるのかもしれません。
自分では残念な脳筋のシスコンだと思っているのですが、まわりからはそうは見えないらしいです。
それもこれも第二王子の婚約者と言う立場上、感情を表に出さないよう訓練した成果なんでしょうか?
私が水と氷なのに対して、妹は珍しい光属性です。
癒しの力、聖女の力と言われ、とても珍しいので教会のお偉いさんが今日も妹を渡せと父にせっついています。
平民や下位貴族であれば色々家族も恩恵を受けられていい話ではありますが、いかんせん我が家は侯爵家です。
こちらからしたら娘を取られ、結婚もさせられず特に何のメリットもありません。
結婚し子をなすと力が無くなるので結婚は出来ないのだそうです。
なので毎回断っているのに本当にしつこいです。そろそろ妹も婚約が決まりそうなのにダメになったらどうしてくれるんでしょう!
そう言えば…ふと思いだし、父に追い出されそうになっている教会のお偉いさんに声をかけてみました。
「ごきげんよう。そう言えば学園に通う平民の女の子が光魔法を使ったのを見たと友人が言ってましたわ。
ご存じかしら?
私が直接見たわけでは無いのではっきり断定は出来ませんが、一度お調べになってみてはいかがかしら?
フローラさんと言うピンクブロンドの可愛らしい方ですわ」
お偉いさんの目がギラギラ光っています。
うん、これは間違いなくターゲットが変わりましたね。
うちと違って平民なのであちらとしてもメリットが大きいので、まず家族が断ることはないと思います。
無いとは思いますが、どうしても嫌なら本人が断るでしょう。
そもそも珍しいだけで今も教会には10人の聖女様がいるし、無理強いはされないはずです。
ただしつこいだけで……ふふふ、お偉いさん頑張れ。そして妹は諦めてください!
それからとんとん拍子に話は進み、彼女は半ば拉致されるような形で教会に…監禁されていると噂で聞きました。
家族も学園も名誉なことだし、国としても聖女はとても大切な存在なので、貴族と違って本人の意志は関係無かったみたいです。
本人にとっても名誉なことだと思っていたのですが違ったようで、連行される時は大騒ぎだったとか……妹の為とは言え、身代わりにしてしまったようで申し訳ないです。
明日はいよいよ卒業式か……なんて友人達と感慨に耽っていると、向こうから第二王子と側近の方々がたいそうお怒りの様子でやってきました。
「おいソフィア、フローラを教会に連れていかせたのはお前の差し金だろう。
フローラが愛らしく優秀だからと嫉妬して……本当にお前と言う女は救いようがないな。
今すぐフローラを出すように教会に掛け合え!」
「……何故ですか?フローラさんにとってもご家族にとっても大変名誉なことではないですか?
それに、王族の殿下に出来ないことが私に出来るわけ無いと思うのですが……」
「な……!名誉だと!?聖女になったら結婚出来ないではないか!そうか、それが狙いなのだな!
俺とフローラを結婚させないために、フローラを教会へ売ったのだな!なんて女だ!
たとえフローラがいなくとも、お前と結婚なんぞあり得ん!
この場をもってお前との婚約は破棄する!」
王子の言葉と共に側近の方々もそれぞれ何やら叫んでいます。
あら?そんなことより婚約破棄?
「今、婚約破棄とおっしゃいましたか?」
「何度も言わせるな!お前との婚約は破棄すると言ったんだ!
なんだ?今さら後悔しても遅いぞ!」
側近達も私の友人達に、それぞれこちらの困惑にも気付かず婚約破棄だと叫んでいます……
「あの殿下……婚約は1年前にすでに解消されていますよ?
側近の方々も同じですけど、ご実家から婚約解消の書類が届いて皆様サインしたはずですが……覚えていませんか?」
「なっ……そんなものは知らん!おいキース、どう言うことだ?」
「確かにそのような書類が届いてサインしておられました。
王家からの手紙は小言ばかりでつまらんと言って、いつもきちんとお読みにならずサインされているじゃないですか。
本当にいいのですかと何度も確認したら、うるさいと怒鳴り散らし……」
「お前、誰に対してそんな口をっ!
主人にそんな口を叩いていいと思っているのか?クビだ!クビ!」
「もとより私は王家で雇われていまして、明日の卒業式をもってあなた様の従者ではなくなる予定です。
王太子様にも跡継ぎがお生まれになりましたので、第二王子であるあなた様は諸外国の男児のいない王家に婿入りするか、一代限りの爵位を得て臣下に下るかは明日の卒業式終了後に陛下よりお話があると思います。
今までお世話になりました。
1日早いですがクビとの事ですので、ここでお側を退かせていただきます」
綺麗なお辞儀をして去っていく従者を呆然と見送る第二王子。
私の婚約者のままでいれば、我が侯爵家を継ぐことになりましたが、婚約を破棄したのですから仕方ありません。
子供の代で平民になってしまうか、側室のたくさんいる王女に婿入りするか……そもそも婿入りと言っても、確か私の知る限りの国では、どこも側室として婿入りするしか無かった気がします。
どちらがいいのでしょうね?
我が家も何を思ったか1年前の婚約破棄の後、両親が頑張ったおかげで年の離れた弟が誕生しました。
まだ生まれたてで3歳位になるまでは安心できませんが、燃え上がった両親があと何人か頑張ろうかと言ってるのを聞いてしまったのでまあ大丈夫でしょう。
とりあえずいつまでも付き合っていられないので、私達もここから立ち去ることにしましょう。
「殿下、そう言うことですのでこれで失礼しま「ソフィア、記憶には無いが婚約破棄をしていたようだな。
この年で婚約破棄されてどうせろくな嫁ぎ先もないのであろう?大方じじいの後妻か婚約者のいない下位貴族の次男、三男がいいところだな。
お前にピッタリではないか!」
わざわざ挨拶に被せて嫌味を言ってきたので、現実を教えてあげることにしましょう。
「ご心配していただきありがとうございます。
幸い殿下との婚約破棄の後すぐに新しい婚約が相成りまして、明日の卒業式の後すぐに婚家へ入ることになりました。
と言いましても、婚家の事を色々勉強させていただいて結婚式は3ヶ月後になりますが……隣国の皇太子妃なんて私に勤まるか不安ですが、皇太子様はとても立派で優しくて私を大切にしてくださいますので、彼のために頑張りたいと思います」
「な……なぜお前が隣国の皇太子殿の婚約者に?
見え透いた嘘はよせ!彼には幼き頃より婚約者がいたはずだ!」
「ええ、確かに婚約者がいらっしゃいました。
しかし、隣国は2年前貴族令嬢にだけ深刻な病が流行り儚くなられたそうです。
実際は、上位貴族の妻の座を狙った令嬢とその一族による毒殺だったらしいのですが……何とも恐ろしいことです。
婚約者を亡き者にされた皇太子殿下と優秀な上位貴族のご子息達が怒り狂って事件を解決し、一族もろとも皆殺しにされたとか……
復讐が果たされた後は皆様とても憔悴し、焦ったそれぞれの家族が新たな婚約者を躍起になって探したとか何とか……
ですが新たな婚約者探しは難航し、国内の適齢期のご令嬢は皆様婚約済みで婚約者のいないご令嬢は5歳以下か男爵家のご令嬢しかいなかったらしいのです。
そこで諸外国に目を向けたところ、ちょうど私達の婚約破棄騒動があり、数名の適齢期の伯爵位以上の令嬢がフリーになったと言うことでちょうどいいと相成りました。
皆様婚約者である私達を大切にしてくださるとても素敵な方ばかりです。
母国を離れるのは寂しくもありますが、大切な友人である皆様とご一緒ですし、転移魔法もありますし、妹も婚約が決まり3年後には隣国に嫁いでくることになりましたので幸せですわ。
では、私達は準備もありますのでこれで失礼させていただきます。「「「「失礼させていただきます」」」」」
そう言って、綺麗なお辞儀と今まで見せたこともないくらいの晴れやかな笑顔で挨拶をしてその場を辞した。
第二王子と側近の皆様は揃いも揃って呆然とした顔でこちらを見てましたが、気にすることなく立ち去ります。
これでも嫁入り前なので何かと忙しいのですよ。
私達は共にフローラと言う一人の平民の娘に、婚約者を奪われた仲間ですが、それぞれ新しい男性に乞われ隣国へ嫁ぎます。
一度婚約者を亡くしているからか隣国人の気質なのか、とても一途で優しい人ばかりです。
皇太子殿下は愛情表現が少し不器用で私と同じ脳筋ですが、そこがまた可愛く思えてならない今日この頃です。
私達は隣国で幸せになりたいと思います。
その後、隣国の皇太子夫妻は三男一女を授かり大変仲睦まじく過ごされたそうです。
皇太子妃の妹も隣国の伯爵家嫡男に嫁ぎ、たいへん夫婦仲も良く一男二女を授かるも光魔法が使えなくなると言う事実も無く、生涯隣国の様々な場所で次女と共に人々を癒し続け、伝説になった。
皇太子妃と共に婚約破棄されたそれぞれのご令嬢も皆、隣国で幸せな結婚生活を送り生涯通して皇太子妃のよき友人達であった。
フローラは高位貴族に嫁ぎ贅沢な暮らしを夢見たが、教会に閉じ込められ来る日も来る日も人々を癒し続けた。
フローラを教会に売った家族がどんどん贅沢をするので、逃げ出すこともできず、それでも綺麗なドレスに化粧に贅沢な部屋を与えられ、望めばほとんどのものが手にはいる生活だったのでそこまで不幸でもなかったのかもしれない。
第二王子は国内の目ぼしいご令嬢からは理不尽な婚約破棄と一代限りの爵位と言うことで見向きもされず、結局とある国へ側室として婿入りすることに。お相手の女王は25歳年上で、王太子に第二王子に二人の王女ももすでにいる。
しかし、女王は性欲旺盛で若く見目の良い側室を欲しがっていたので、第二王子はとても気に入られ、毎晩のように呼び出され可愛がられて案外幸せかもしれない。