見落とし。
待って、待って落ち着いて自分
ええっと、まず、健は部活の友達と話してて、
で、
たまに手が触れて、
気の所為だと………………思ってた……けど……
『なんで?』
追い打ちをかけるかのように、大きい綺麗な目で訊いてくる彼。
なんでと言われても………………
「えっ……と」
付き合うってこういうことなんだ……
今までのことがなにもかも恥ずかしくなって
意識してしまう
『簡単なことじゃん』
私の答えを待てなかったのか、健はため息をついて私の手首を優しく持った
『こうして、』
そして彼のもう片方の手で、私と手のひらをあわせ、絡める。
『こうするの』
わかるでしょ?と言うように少しツンとした顔で見つめてくる。
「………………」
『…………え、ちょ。なんで黙ってんの、恥ずかしいって』
咄嗟に手を離そうとした彼の手を私は強く握り離さなかった
『!?』
「……こう、するんだよね。…こう……。」
確認だよ、確認。というように私も彼を見返す。
身長差という不思議なもので
私の目線はやがて彼の中で、上目遣いとなる。
『………だ、か、ら……そんな目で見ないでよ……』
顔を真っ赤にして、口元を手の甲で隠して横を向く。
流し目っていうやつ?あれがすごい。
『……ん、まだ見てる?』
チラチラ横目で私を見てくる姿がまるで怯える犬のよう。
可愛い。
手を握る力を強くし、ぐいっと下に引っ張った
彼の顔が私の目線に来る。
勢いよく引っ張りすぎて彼との距離が数センチになった
息を止めた
彼も突然の事で目を見開く。
目の中に映る私が、とてもドキドキしているように見える。
彼も息を止めていたらしい。
『………………やべ、息できない』
二人共離れ、むせる。
手は握ったままだった。忘れていた。
そして重要なことに気づく。
「ねぇ、健」
『ん?』
共にむせていたのが面白くて、面白おかしく微笑む彼が優しく返事する。
「……」
弱そうに曲げた指で、ちょいちょい、と横を指す。
『……?』
ゆっくりと横を向く彼。
『…………やっ……べ…』
急いで置いていた荷物を持ち、再び私の手を握った。
『行くぞ』
「えっ」
下駄箱からすごい速さで去っていく2人。
先ほどの空気はまだ残っているはず。
走りながら私は彼に聞いた。
「分かった?」
『ん。……やべえな』
「……やべえ、よ。」
『真似すんなよ(笑)』
「……みんなに見られちゃったね……」
下駄箱にいた私達2人を、クラスの人数10人が見ていたのだ。
『……そうだな。見られてたな』
「……」
『気をつけような、これから』
なぜか意味深な感じで言う彼。
「?……うん。」
クラスに着き、手を離す。
『あ……と、じゃあ、また。帰りに』
手を振る彼。
「ん。……ばいばい」
私も手を振る。
彼は向こうを向き、歩いていった。
私も教室に入った。
『……一番見られたくないやつに見られた』