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種族:木 職業:ダンジョンマスター  作者: そてつ
第2章 勇者とエルフ
22/24

腹の探り合い

(おい、エルフ。少し話をしないか?)


魔力を通して声が聞こえた。

精霊が話すものともまた違う、それでいて不思議と何を言っているかがハッキリとわかる。

そしてその声は先ほどまで感じていた禍々しさからは考えられないほど穏やかなものだった。


「ふざけんじゃないわよ!!あんだけの殺気かましといて話そうなんてよく言えたわね!!ぶっ潰してやるわこの××××!!」


プリムラちゃんが吠えた瞬間、僕の心臓はドンッという大きな音を立てた。

やばい。暴走している。

止めないと殺され ーー


(君。すまんが耳がないんもんで音が聞こえないんだ。あちらの女の子は興奮しているようだが、なんと言っているんだ?)


僕は深く息を吐いた。

助かった。

少なくとも今飛び交っている女の子にあるまじきスラングは聞かれてないらしい。

でも、音が聞こえないということはこの化物との対話は僕がやらなきゃいけないということだ。

僕の胸は変わらず早鐘を打ち続けていた。


(すみません、魔力を使った言葉は精霊のものしかわからないのですが、伝わっておりますでしょうか?)


(おお!わかるわかる!!やり取りができる相手で助かったよ。)


ふぅ、少なくともこちらが言うことも伝わるみたいだ。


(そちらの女性のことは気にしないでください。先ほどのあなた様の魔力が強力だったために少し混乱してしまっているようです。)


(そうだったのか。いや、実はさっきの魔力はおれのじゃないんだ。気が荒いツレがいるもんでな。驚かせてしまったようで申し訳ない。)


ツレということは同等の存在?

向こうは2人?それ以上?

少なくともここであからさまな敵対関係になったら命の保証はなさそうだ。

内心の焦りを必死で隠しつつ、僕は話を続ける。


(ええと、先ほどは話をしようとおっしゃっていましたが、どういったことをお聞きになりたいのでしょうか?)


話をするというのはこちらにとっても好都合だ。

状況は圧倒的に不利。

周辺に埋まった死体と先ほどの魔力のことを考えると、ここはおそらく化物の射程圏内。

それに対してこちらは相手の姿どころかどこにいるかさえ掴めていないのだ。

話の中で何か手がかりが得られるかもしれないし、もしかしたらここから逃げる糸口が見つかるかもしれない。


(そうだな・・・。まずは君たちエルフのことを知りたい。)


ゴクリ、と僕の喉が音を鳴らす。


(僕たちのこと・・・ですか。)


しまった。


(ああ。君たちとは有効な関係を望んでいる。そのためにはまず君たちのことを知らないと話はできないと思ってね。)


そんなことを言っていても信用などできない。


(僕たちの情報には、他人に知られると種の存亡に関わるようなものもあります。そういったことについては話せませんが、それでもよろしければお答えしましょう。)


・・・ヤバイ。

話していい情報なんて全然わからない。

里の場所は当然ダメとして、人数・・・もダメ。


(なるほど・・・それもそうか。うん、それは当然のことだと思う。言えないことは正直に言えないと答えてもらって構わない。ただ、そういった質問をしてしまうこと自体は許してほしい。何が答えられて何が答えられないか、こっちはわからないからな。)


そんなのこっちだってわかんないよー(泣)。


こうして始まった僕と化物の問答は僕にはとてつもなく長いものに感じられた。


………

……


(そうか!!エルフは生薬に詳しいのか!?)


身構えながら始まった質疑応答だったが、今の所、思ったほど難しい質問はなかい。

この化物も化物なりに気を使っているのかもしれない。

途中からはもはや雑談のようになっていたのだが、化物は森で植物の採取をすると言ったところで急に食いついてきた。


(え、えぇ。珍しいものだと、甘露樹やマンドラゴラなんかも扱いますよ。)


(な、マ、マンドラゴラだって!?ここら辺にもいるのか!?)


さらに食いつきが良くなり、心なしか言葉を伝える魔力も強くなったようにも感じる。

これは・・・もしかしたら、チャンスかもしれない。


(もしよろしければここら辺で採取しましょうか?今はちょうど時期ですので普段は珍しいマンドラゴラでもそう時間をかけずに手に入るかと思いますが。)


(え、いや、それは。でも、もういいか?うーん・・・。)


化物はボソボソとなにかをつぶやいている。

これは、もうひと押しで行けるか?


(もし不安なようでしたら、そろそろ落ち着いたようですし、あちらの者に取りに行かせてはどうでしょう。話をするだけでしたら私だけで十分かと思いますが。)


それに、人質としても・・・。

化物からは反応がない。

迷っている?

これまで話していて気づいたのだが、この相手はかなりこちらを気遣ってくれているようだった。

ここで強引な手を使っても殺されることはないはずだ。


(すぐ済むと思いますし、取って来るように伝えますね。)


僕は口頭での会話に切り替えた。

奴が聞こえないはずの会話に。


「プリムラちゃん!!ここら辺で採取をする約束を取り付けた!!そのままこの場を離れて、里までここのことを伝えに行くんだ!!」


「え、でもそれじゃあアンタが・・・。」


「大丈夫!!こいつは僕らに危害を加える気はない!!急いで!!」


それに、彼女が助かりさえすれば僕は・・・。


プリムラちゃんは意を決したみたいだ。

後ろをふり向いて駆け出そうとした。その時、僕は後悔と絶望に包まれる。


絶望の原因は目の前に現れた化物。

なぜ?

急ぎすぎた?

何かしくじりがあった?

僕のせいでプリムラちゃんが・・・。

目からは涙が溢れ出していた。

そこにいたのはまさに死の化身。

人や獣。様々な生き物な死体を体内に浮かべた、泥のような姿の化物だった。


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