気づいたら異世界にいました
『おい!!おい起きろ!!おい!!ったく召喚中に死なせただけでも・・・早く起きろ!!食われるぞ!!おいってば!!』
(ん?・・・うぅ・・・)
『おっ気づいたか!?今から俺が言ったことをくり返せ!!いいか!? 吸収!!』
(え?・・・な・・・?)
『いいからくり返せ!!吸収!!』
(きゅう・・・ん・・・?)
『吸収だよ!!吸収!!』
(きゅう・・・しゅう?・・・・・・ぐっ頭が・・・ぐあああっ!!)
『よっしゃ成功だ!!!次は・・・』
(うぐっなんだ・・・てめえは・・・)
『今は我慢しろ!!お前を助けようとしてんだ!!そうだな・・・我を食いしもの、この身を贄に我に従え!!』
(なに言ってやが・・・ぅぐ・・・)
『いいからくり返せってんだよ!!我を食いしもの、この身を贄に我に従え!!』
(われくいしもの・・・このみをにえに・・・したがえ・・・)
『よし!!これでひとまず大丈夫だ・・・ってもう時間ねえじゃねえか!?ああもう・・・とりあえず他のやつらにやったのはお前にもやるから!!ステータスとヘルプと言語な!!あとは・・・DPやるから適当に使え!!じゃあな・・・うわっ天使長!!いやこれは違』
(なんだ突然・・・くそっ頭が・・・うぅ・・・・・・)
………
……
…
謎の声が消えてしばらく経ち、再び御神苗 創馬は目を覚ました。
気づくと、気を失った原因でもあったひどい痛みがなくなっており、冷静さを取り戻した創馬ははじめてその身に起きた事態の異常さに気がついた。
そこには何もなかった。
いや、正しくは光や音やにおい、それらを感じ取る機能が全て失われていた。
(あの変な声・・・あの時は痛みでそれどころじゃなかったけど・・・今思うとあのときにはもう視覚はなかった気がする・・・その前は・・・確か・・・)
事故か何かで植物状態となったか、あるいはこれが死の世界なのか、この異常事態を説明する方法などその2つしか思い浮かばなかったが、それでもなんとか原因を突き止めるため、創馬は自身の感覚がなくなる直前までのできごとを反芻していた。
(1学期最後の日で・・・通学中に子供を助けて・・・。)
転移した日、創馬は高校の夏期講習のために学校へと向かっていた。
通学路の横にある公園では小学生くらいの子供が遊んでいる。
世間は夏休みである。
おれも小学生に戻って夏休みを満喫したい、などとどうでもいいことを考えていると、車道にボールが飛び出していった。
次の瞬間、当然のように子供がボールを追いかけて飛び出していく。
車道を見るとそこにはタイミングを計ったようにトラックが迫っている。
創馬は反射的にその子供のもとへと駆け出していた。
(間一髪で子供を助けられて・・・その子のお母さんにも感謝されたけど・・・トラックには逃げられたんだよな・・・。)
創馬はトラックにひかれかけるも無事だった。
どうやらこれは異世界に飛ばされた原因とは関係なさそうだ。
(その後学校に行ったら案の定遅刻して・・・それで・・・そうだ・・・光・・・?)
チャイムがなるのと同時に創馬が教室に駆け込もうとした瞬間、教室は光に包まれた。
その光が召喚による魔力光だということを創馬を除いた面々はすぐに知ることになる。
しかし、召喚対象に指定されていたその部屋のちょうど境界にいた創馬は、半身を元の世界に取り残し、その光のわけさえ知ることなく命を落としたのだった。