困った時の駆け込み寺 冒険者ギルドへようこそ! その2~!
なんとかギリギリ間に合いました。
ご感想をお待ちしています。
「まったくあの娘は !」
とある国の王宮の会議室。
最も上座に座る国王夫妻、テーブルを挟んで左右に宰相、国王付き騎士団長、国王が信頼する上級貴族の何人か。
本日の議題はありきたりというには些か語弊がある重要ないくつもの施策の話し合いが持たれ、最後の議題が昨夜遅くに帰京した第6王女、つまり一条が遭遇してある意味追いかけ回されている当人が重要かつ緊急の議題として遡上に乗せられたのである。
「そもそも王女様はなにゆえお出かけになられたのでありますか?」
宰相は顎に左手をあてて、右手で一連の報告書に目を通しながら国王に問うた。
見た目は好好爺として国民に知られている宰相であるが、貴族からは血も涙もない冷血漢と噂されている大貴族である。
国王と宰相は、ネット小説の悪役令嬢物によくある貴族に義務付けられている上級学校入学前からの友人でもあった。
「先月の議題に上がったローエングラム侯爵の所得税脱税の件で、どこで聞いたか問題に成った金鉱山の存在の確認に勝手に飛び出しおった」
ひじ掛けを人差し指で叩きながら国王が答える。続けて
「金鉱山の存在はあやつのお陰で確認できたが、その後が問題化してな。
金鉱山の件でも迷惑この上ないが、あやつ、帰りにどうやら『来訪者』を拾ったようだ。
しかも、昨夜遅くに到着したにも関わらず、来訪者も報告も寄越しはせなんだ!」
国王は苛立ちを隠せずひじ掛けに右手を打ち付ける。
「来訪者とは何者ですかな?聞いたことはありませんが」
一同を代表して宰相が聞く。
「来訪者とは、聞いての通りそのものだ。東の大陸のファーレル大陸では落ち人ともいうらしい。
どうやらこことは違う異なる世界、異世界から原因不明の現象でこちらに来る人を指すようだ。
疑問形なのは、我が国には出現例がないからだ。
隣国やファーレル大陸には結構な数が来訪者として来ているようだが、そのほとんどの人間は年端のいかない子ども達で来訪者の国の事はほとんどわからないらしい。
稀に青年や老年の人が来訪者として来ているらしいが、例外なく何らかのこちらには存在しない技術や文化情報をもっているらしい。
ただし、そうした膨大な情報量のほとんどは文化レベルの差が激しすぎてこちらでは再現出来ないようだ。
今回の来訪者は青年と聞くので我々にとって国力を例え僅かでも国力の底上げをする千載一遇のチャンスなのに、今もってあの娘は王宮につれてこない!何を考えているのやら」
国王の発言と余りに苛立ちを募らせている様子に宰相以下の貴族は言葉をかけられない。
その時、けたたましく扉がノックされて真っ青な顔をした騎士が飛び込んで来て、国王付き騎士団長に耳打ちをして脇に控える。
「何事か!」
宰相と国王は同時に団長に問う。
どうせこの展開では厄介事の報告以外あり得ないので発言を目線で促す。
「大変申し上げにくいのですが、今話題の来訪者と思われる者が滞在中の宿屋から逃走した模様です。
姫様付きの騎士が捜索に向かったようですが現在のところ行方不明です」
騎士団長の発言で、出席した全員がもれなく顔を青くして沈黙する」
特に報告を上げた運のない騎士は今にも首をつりそうなぐらい青くして、全身震えていた。(;つД`)
とばっちり以外何物でもない彼の境遇は後に騎士団の伝説となり、涙を誘ったのは別の話しである。
宿屋の食堂
まずい、まずい、まずい!
御前会議が開かれているその頃、王女は焦っていた。
前々から気に入らなかった婚約予定の貴族家に脱税疑惑が持ち上がったので、これ幸いと別件公務に向かう途中と称して内偵捜査をしたところ、ものの見事に証拠を押さえてとりあえず貴族階級の身分一時的な剥奪処分に成功したのもつかの間。
元々王族とはいえ、限りなく上級貴族の末席に近い王女は、第6王女という王家にとって政略結婚要員でしかなく、この気に入らない脱税貴族の三男に嫁がされそうになって、なんとしても王女はこの貴族を断絶させたかった。
気に入らない理由が、貴族によくある平民を軽くみて差別的発言や、貴族にとって平民は奴隷も同然等の問題発言を堂々とするので 、顔を見ただけでもじんましんができるぐらい嫌悪感が止まらなかったのである。
王女は、王家は平民の献身の上に生活をしていると教えられてきていたので、どうしても脱税貴族が許せなかった。
しかし、いずれ手を下さなくても取り潰されることが決まった様な状態ではあっても、いくらなんでも王女自ら出向いて処断するのは不味かった。
帰り道にキース団長から説教をされて気まずい気分になっていた処に魔物に襲われて絶望的になってしまったその時。
一条が不思議な乗り物に乗って現れた。
みるみるうちに魔物を全滅させて、瀕死のキース団長を救った彼。
王女はなんとしても王宮に連れ帰り、少なくとも手元に囲うか、あわよくば結婚相手に・・・(///∇///)
何て思っていたのである。
それが・・・スライム騒動でちょっと目を放した隙に宿屋から出ていってしまい行方不明になってしまったのである。
荷物は宿屋に残されているものの、相手にはアイテムバッグか、収納魔法のスキルがあるようなので最悪残された荷物を放棄してしまえばいつでも旅立つことができるのである。
王女にとって、独断専行での立場の悪化よりも一条に逃げられるほうが余程痛いのである。
何せ気に入らないとはいえ、婚約者を陥れて婚約解消。
貴族は大小あれど誰もが一つや二つ後ろ暗いところはあるので、危なくていくら王族で結婚のメリットが多くても第6王女と婚約しようなどと思う家は無くなるはずである。
そこへ年が釣り合いそうで、武力も魔力もありそう。
何より明らかに他国の人間でこちらの事は全然知らなさそうだし、性格も好みっぽいと来ればここで逃がせば自分の結婚と将来が危うくなる。
何より国王をはじめ、家族一同から何を言われるかわからない。
なんとしても見つけ出さなくては‼
冒険者ギルド
とりあえず途方に暮れた様子の一条のためにエルフの受付嬢はギルドマスターに合わせた。
こちらに出現したいきさつを述べてとりあえずと運転免許を提示する。
「成る程な。昨夜王宮騎士団が大慌てで王都を出て深夜に戻ったのは知っていたが、そんなことがあったとはな」
災難だったなとお茶を飲みながらギルドマスターは話に耳を傾ける。
「その様子だと王宮と揉めそうだな。よし!とりあえず無料でカードは作ってやる。
ただし、落ち着いたら必ずうちのギルドに顔を出しな。
適当な依頼をしてもらって報酬の一部を無利子ローン扱いで手数料を払う様に取り計らう。
それと、出来ればお前が住んでいたところの情報、なんでもいいから寄越しな。場合によっては商業ギルドと組んで製品化すれば暫くは食って行けるかも知れんからな?」
そう言ってエルフに目線で合図する。
エルフ嬢は立ち上がり、受付に戻り手続きの続きをするために一条と部屋を退出する。
「しかし、あなたが噂の来訪者とはね~!」
一条は聞きなれない来訪者について聞くとエルフ嬢から、あくまでも噂と念押しして王宮で話し合われている内容を一条に伝える。
「とりあえずカードは出来たけど、ランクがね・・・依頼を受けるにあたって討伐実績等の状況でギルドが個人とパーティーにそれぞれランキングを指定しているの。
分不相応な依頼を受けたりしないようにするためにね!で、ランキングはA~G迄あるの。
早急にある程度の資金を手にしなきゃいけない訳だから、簡単な依頼と討伐が出来なきゃね。
そうするとクラスEからね。ほんとはFかGからスタートなのだけれど、成人だし討伐依頼はEからだからね~。
頑張って死なない様に稼いできてね!」
はい!カード!と言われて一条は笑顔でカードを受けとる。
その時ギルドの出入口がバーン!と大きな音を立てて開かれる。
「み~つ~け~た~」
振り返ってはいけない!と思いつつ一条は振り返った。
そこにはうつむき加減で口を三日月状にして薄ら笑いをしている、とある国がの第6王女が両手で扉を開け放ち仁王立ちをしていた。
殺されるかも知れない。
一条はそう思った。(;つД`)
お読み頂きありがとうございました。
如何でしょうか?
明日の更新はお休みになる公算が大きいです。
短くてもなんとかのせる様に頑張っていますのでよろしくお願いいたします。(;つД`)