閑話 とある航空方面隊司令の辞表
こんばんは。
とりあえずのお話です。
私は、首都を守る空軍の方面隊司令だ。
士官学校をそこそこの成績で卒業。
花形のパイロットではなかったが、その後の教育課程で猛勉強のおかげでわりと速く将に昇進出来た。
あと数年で慣例の早期定年退職で天下りと趣味三昧の生活が始まる。
それなのに………
その日は共同演習前の図上訓練の反省点をスタッフでまとめていた。
結構会議は白熱して大分険悪な雰囲気になっている。
戦術にも流行りのトレンドというものがあって、20年前は前線の戦車等装甲車両を先に叩くのが主流だったが、10年前はそれより後方の火砲、つまり榴弾砲や対空兵装をアウトレンジから叩くのが主流になった。
女子中生の会話では無いが、次のトレンドの戦術は何か?と、その対抗はどうするのかが主要議題である。
そんなこんなで話し合いがまとまりかけた処にその爆弾は飛び込んできた。
「司令!同盟国の空軍司令基地で未確認飛行物体が出現!同時に不法侵入者が発見され、明日、司令も参加される最新鋭機体の展示機体が奪われた模様!」
と、伝令が飛び込んできた。
とりあえずはあちらの問題だからある意味問題無いが、機体が奪われたとなると、こちらとしても黙っているわけにはいかない。
とりあえず、近郊の戦闘機部隊長に緊急発進の指示をだし事態を静観する構えをとることにする。
大体発進した処で此方に到着するのは速くて二十分程度は掛かってしまう。
余程の性能差がなければ、フツー物理法則に縛られているから追い付ける訳がない。それこそテレビで見るような未確認飛行物体でもなければ。
部下が件の騒動をテレビが写していると言うので見てみれば、それこそテレビで見るような未確認飛行物体と戦闘ヘリコプターが交戦しているではないか!
そうこうしているうちに飛行物体は珍しく被弾、ダメージを負ったらしく見覚えのある風景を緩降下してくる。
ちょっと待て!
あれ!此方に落ちて来てないか?
管制から「件の物体!此方に向かって降下中です!
推定落下地は滑走路中央!」と報告がきたもんな。
冗談じゃない!対岸の火事が一気に火だるまのガスタンクごとこっちに飛び火しやがった!
今更防空体制を発令しても間に合わん。
しかもここは住宅街のど真ん中だ。下手に迎撃すると後が面倒だし、確かに落ちるとすれば此処しかないよなとも思うが、何だって今なんだ!
泣いちゃうぞ!と言っても気持ち悪いと言われて、今後部下が言うこと聞かなくなるかもしれん。
そして。
見事に此処に落ちた。
とりあえず基地消防を出して効くかどうか分からんが消火剤を撒かせて火災だけは拡がらないようにさせた。
早速、マスコミが事態を嗅ぎ付けてヘリなどを飛ばしてきたが、管制権を盾に周囲には近づけさせることは阻止した。
管制を無視すれば危険行為でパイロットライセンスを取り消しになるし、マスコミの雇われパイロットじゃあ、いくら無視するように言われてもいざ免取審査になれば、手のひら返しで弁護してくれないのはわかりきっているから無茶苦茶はすまい。
面倒なのは米軍と大使館、ウチの小わっぱ官邸役人と国会議員どもだ。
既に電話線がパンク状態で、肝心の幕僚本部や本省との回線まで影響が出ている。
とりあえず、隊員が決死隊員に志願しているのでやむを得ずいってもらい、ついでに原子炉廃炉作業に開発中の機材を色々持っていってもらいテストをして貰う。
何せ、低レベルとはいえ放射線反応が出ているからだ。
で、色々なケーブルを引っ張りながら破損箇所から侵入してもらい映像を通じて中を見てみると、驚いた事にまだ生き残りがいたのだ。
幸い、中に入って貰った隊員の機転で他の飛行物体を通じて生き残りは引き取ってもらい、後に残されたのは搭乗員の遺体と壊れた機体だった。
同盟国は事態は基地内のトラブルが発端だったので全て我々に差し出せと居丈高に命令してきたのできっぱり断った。
当たり前だ。
元あといえば奴等がしっかり基地内でどうにかすればよかったのを此方にガスタンクに火がついた状態で火の粉を飛ばしたせいで、滑走路は使えないし、マスコミやら聞いたことない市民団体やらが連日基地に詰めかけている有り様だ。
結局、遺体は県警を通じて宇宙開発と、大学病院で解剖、事故処理に付き物の死因検分をしてもらい、機体については宇宙開発と国内大手軍用航空機メーカーと共同の研究機関に引き取って貰った。
おかげですっかり周りは利権にあぶれた議員や米軍、官邸等に睨まれてお先真っ暗に。
天下りも絶望になったので、仕方なしに辞表を出して免職になる前に退職金で住宅ローンの返済だけはなんとかした。
風の噂で戦闘ヘリコプターを奪った馬鹿は数年前に行方不明になった男の車に乗っていたらしいと聞いた。
そういえば奪われた戦闘ヘリコプター、騒動に紛れて気にしなかったが、忽然と姿を消したらしい。
レーダー記録も物体周囲を撮影していた様々な一般人やマスコミのカメラからも消え失せて行方不明だそうだが。
今となっては私にとってどうでもよいことだ。
如何でしょうか?
改稿作業はさっぱり進みません。
もうちょい面白く書けないかと思っているのですが、具体案が今一つ。
仕方ないので暫く第二章の投稿をやってみようかと思っています。