プロローグ2
【正体不明が【1体】現れた!】
【暗闇が”あなた”の視界を奪う! 【状態異常:盲目】になった】
「……!」
目は頼りにならない。
聴覚と勘を頼りに何とかこの場を乗り切らねば!
1.先手必勝! 正体不明?に殴り掛る。
2.まずは様子見。相手の出方を見る。
3.無理。急いでこの場を逃れなければ。
【ダイス判定。1D3――判定結果【2】】
こちらは素手だ。殴りかかった所で大した効果は期待できない。
かと言って、今の状態で背を向けて逃げるのも無謀だろう。
”あなた”は正体不明の怪物の出方を見るべく防御を固める。
ぬじゅっ……不快な音と共に怪物がその巨体を振るうのを感じた。
【正体不明の【体当たり】、”あなた”は回避した!】
「……!」
怪物はその巨体で体当たりしてくるが、しかし想像以上に遅い。
輪郭しか見えていない状態でこれならば、回避に専念すれば致命的な攻撃を喰らうことはないだろう。
最も”あなた”に攻撃手段がない以上、防御か回避しか出来ないのだが。
≪――――、――――こっちへ≫
「……?」
声が、聞こえた。
どこかで聞いたような、懐かしい声。
聴覚ではなく、魂に直接語りかけるように、声の主は告げる。
≪生き延びたくば――――我の導きに、従え――――≫
”あなた”はその言葉に、
⇒1.従う
2.従う
3.従う
選択の余地は無い。”あなた”には、どの道この怪物をどうにかする手段はないのだ。
ならばと意を決して声の主に従うことにした。
【逃亡選択、ダイス判定。1D100、90以下で成功――【結果30】成功! ”あなた”は逃亡した】
【”あなた”は称号【冷静沈着】を取得した!】
【”あなた”は【回避Lv1】を覚えた!】
”あなた”は怪物の動きに警戒して、一気に駆け出した。
≪光を目指せ――――≫
声の主は姿こそ見せないが、しかし先程までとはっきと違う点が一つあった。
遠く、遠くに小さな光の点が見える。
とても小さな光だが、この暗闇の中で見間違えることはない。
「……!」
その光を目指して”あなた”は走り出す。
だがその背後では、未だ獲物を諦めていないのだろう不快な音が、鈍くゆっくりとではあるが、こちらを追いかけてくる。
ズルズル……ズルズル……ズルズル……ズルズル……!
”あなた”が走り出すのに合わせて、その周囲で音が増殖していく。
音に敏感なのだろうか、明らかに先の怪物の同類であろう何かが四方八方から迫ってくる!
【【危険感知Lv1】発動。ダイス判定。1D100、80以上で戦闘回避。――結果【100】失敗!】
この大事な場面にダイス判定に失敗してしまった! しかもファンブルだ!
”あなた”何かに躓き、盛大にその場に転んでしまった。
急いで起き上がらねばと両手を床につけようとして……ぬちゃっと、手に液体が付着する。言葉にしなくても理解できる。今躓いたのも怪物だ!
【正体不明が【5体】現れた! ファンブルによりペナルティ発生。最初のターン行動不能!】
【正体不明Aの【体当たり】、Bの【体当たり】、Cの【体当たり】、Dの【体当たり】、Eの【体当たり】】
【回避判定。ファンブルにより回避不能】
【正体不明Aのダメージ【9】、Bのダメージ【9】】
【”あなた”は戦闘不能になった!】
咄嗟の出来ごとで”あなた”は身動きが出来ない!
次々と怪物の巨体がその身体目掛けて体当たりを掛けてくる。
布切れ一枚で防げるようなものではない。”あなた”はその場に崩れ落ちた――――
1.死にたくない
2.諦めない
3.認めない
死にたくない。諦めない。認めるものか。
この湧き上がる感情は何なのか。
”あなた”の中で”無数の何かが”ざわついている。
こんな死=終わりなど断じて認めないと!
【”あなた”はユニークスキル【円環の蛇】を取得しました】
【【円環の蛇】を使用。戦闘開始前に時間を巻き戻します】
「…………!?」
何が起きたのか。”あなた”自身にも分からなかった。
気付けば先程までの傷は何処にもなく、周囲に集まっていた怪物も再びいなくなっていた。
まるで時間が巻き戻ったかのような現象。
≪――――時空回帰? こんな小僧が”奴”の術を――――?≫
再びあの声が聞こえた。
いぶかしむような、しかしどこか得心しているような……。
声の主は今の現象の事を知っているのだろうか?
≪――――知ってはいる。だが今は急げ。折角繋いだ命を無駄に失いたくはなかろう?≫
そうだ。
絶体絶命こそ免れたが、未だ窮地の状況なのに変わりない。
あの不快な音は未だに聞こえているのだ。
「ッ!」
”あなた”は再度の意志を心に灯し、急ぎ走り出す。
光点はまだ遠いが、すぐ近くだ。
≪あの小僧、もはやまともに死ぬ事も出来ぬな――――≫
その声は嘲笑と、それと同等の憐れみに満ちていた。