表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かぐや姫奇譚  作者: くらげ
かぐや姫奇譚
6/12

宇宙人(?)襲来

急に登場人物が増えてしまいました。

黒義・狐の略歴は登場人物紹介に出ています。

今回文量多めです。(区切ることができませんでした)

「こんな朝っぱらから来るなんて。せめて超常現象らしく、夜に来て欲しいもんだね。

かなりずうずうしい輩のようだから、あのまま家にいてたら、確実に君の家族も巻き込んでいたよ」


 強い光が降り注ぐ中、神社の竹林の中に一人の男がいた。

 その男の服装はキョンシー映画に出てくる道士のように二つの勾玉が追いかけ合うような図が刺繍されていた。


「楽 黒義だ。吸血鬼よ、俺はこいつらを守れば良いんだな」


 北川が一つ頷くと、空気にシャボン玉のような虹のような膜が混じる。


「これはなん……わっ」


 急に腕を何かに掴まれた。 かぐやも引っ張られて、虹の壁に入ってくる。


「ニーハオ」

「知り合いの狐だ」


 黒義と名乗る男から“狐”と紹介された男の頭には獣耳が付いてて…服は中華風ゲームのコスプレである。ついでに髪が銀髪だ。 獣耳の男はにこにこと笑いを浮かべる。その笑顔は『お前の考えていることぐらい分かるぞ』と言っている。 

 さっきは絶対この男はいなかったし、地面の上にレジャーシートなんて置かれていなかった。

 彼は楽と名乗る男に向かって声を投げかける。


「で、私はこのお嬢さん方をかくまえば良いんだな? 

 らく、分かっていると思うが私は危ないと思ったら、退かせてもらうからな」

「俺もそのつもりだ」

「すっごい技だよね。前の戦いの時にこれ使われていたらアウトだったよ」


 北川の手つきは目に見えないものを手探りで触ろうとする手つきだ。

 彼はかぐやの確かに北川はかぐやの肩に触れたはずだが、彼の手はすり抜けてしまった!


「!?」


 目を見開く翔に狐耳中華風コスプレの男が笑う。


「別に君が幽霊になったわけじゃない。ただちょっと神隠しに遭っただけだ」

「はあ? 神隠しって……」

「じゃあ、閉じて」


 北川の声と共に虹の膜が消える。

 ほとんど間をおかず光が翔たちのいる竹林の中に大きな光球が降りてきた。 



「シュッカ」


 がたがた震えだす少女に“狐”は優しい声で言う。


「大丈夫だ。“ここ”は向こうからは絶対見えない作りになっているから。入り口を閉じたら、一族の者か黒義(でし)しかこちらを認識できない。ポテトチップスでも食べてのんびりしなよ」


 “狐”の耳が本物の獣耳のようにぴくぴく動いている。


 光の中から現れたのは、宙に浮く卵型の椅子に座った小太りの男が一人。

 黒のスーツとサングラスの男が三人。


「『認識番号一致』目の前の人間からです」

「これは……“イブ”では無いぞ。イブはどこだ?」


 黒スーツの言葉に小太りの男が苛立たしげに周囲を見回す。


「あ、宇宙人さんって日本語しゃべれるんだ。ごめんね。イブじゃなくて。

 と言うか、こんな礼儀を知らない方々はぶっちゃけさっさと帰って欲しいんだけど」

「妹を返してもらいに来ただけだ。イブの居場所を知っているのか?」


 宇宙人のねちゃっこい声が響く。が、北川も黒義も答えない。

 すぐ側に翔達がいるのに宇宙人(?)には本当にこちらが見えていないようだ。


「なぜ、君達から信号が出ているのか説明してくれるか?」

「うん。残念だけど君達『出荷』って言っていたんだよね。俺のトモダチが言っていた。まるで『放牧』しているようだったって。『妹』じゃなくて『商品』なんでしょ?」


 北川は宇宙人以上に蜘蛛のように罠に絡め取るような(いと)を紡ぐ。

 指摘された宇宙人は顔色をがらりと変える。


「商品……って」


 翔は自分の袖を掴んでいるかぐやと宇宙人(?)を交互に見る。


「彼女の所有権は僕らにあるんだ」


 小太りな男の苛立たしげな声に合わせて、サングラスの男二人が銃を構え、もう一人のサングラスが抑揚の無い声で報告する。


「『ミッシングリンク』……この付近には反応無し」


 その言葉に北川の目が一瞬細められるが、すぐに笑顔に戻す。


「そう。そんな調子で俺のかわいい下僕サジにも手を出されたら困っちゃうんだよねぇ」

「本人明らかに嫌がっているだろう!」


 北川は笑顔を崩さず、黒義は険しい顔で“敵”に立ちはだかった。


 翔には彼らの言っていることをすべて理解するのは不可能だが小太りな男は聞き逃せないことを言った。彼は確かに言った。『所有権』と。そんなことを言う人間にかぐやを素直に返す気にはなれない。

 彼は、かぐやを守るように彼女の肩をしっかり抱いた。


「警告する……この世界は彼女の世界じゃない」

「女の居場所を守るのは俺にとっちゃ当たり前だ!」


 黒義が懐から扇を出し、あおぐと雷が宇宙人(?)のすぐ目の前に落下する。


「おぅ。朝から気合入っているねぇ」


 狐はクーラーボックスからビール缶を取り出す。完全に観戦モードだ。

 非常に恥ずかしい台詞を朝っぱらから黒義が上げているのは同意するが、この雷はあの何の変哲もなさそうな扇から出ているのだろうか。


 本物のように動く獣耳。突然、現れたレジャーシート。 これだけ間近にいるのに、相手からはこちらが見えない。扇から出る雷。

 じわじわと世界に異質な何かが混じり始めている。

 翔は、これは長い時間をかけたどっきりじゃないかと疑い出した。

 そうお化け屋敷のように機械などで人を驚かせる……。


「まあ、彼女を引き渡すのでも、守るのでもどっちでも構わないんだけどね。

でもね。騒がしいのはルール違反だよ。黒義が結界張ってくれなかったら、今頃、大騒ぎだ」


 北川先輩は笑顔とは逆に冷え冷えとした雰囲気を漂わせている。

 サングラスの男が銃を黒義に向ける。銃は、何の変哲も無いと言ったらおかしいが、テレビで見かける普通の拳銃だ。サングラスの男が引き金を引く。翔は思わず目を瞑り、かぐやの目も手で覆う。


「あいつ仙人だから。多少のことじゃヘマしないし、千年くらい生きているから、間違ってぽっくり逝っても別に困らないだろ。それよりビール飲む?」

「俺は高校生だ!」


 うっかり目を開けてしまったが、弾が当たって破壊されるわけでも別に野太いビームが出ているわけでもない。 本当に竹にポインタが当たっているだけだ。


 わずかに竹が焦げるだけの相手の銃のしょぼさを黒義は鼻で笑う。

 黒義は枯れた竹のいくつかに扇を向けると、風圧で竹の枝をへし折った。へし折られた竹の枝は黒いサングラスの男達に降り注ぐ。が、サングラスの男達はそれを素早い動きで避ける。

 物量で黒義の方が圧倒的に有利に見える。


「吸血鬼。お前も働け!」

「サングラスが邪魔で、催眠術の効きが悪いんだよ」


 吸血鬼と呼ばれた北川はちらりと翔たちの方を見る。

 狐に向けて『働け』と合図を送っているのだろうか。


「助けないのか?」


 翔の問いかけに対して狐の反応は冷たかった。 


「自分でできもしないことを妖怪に頼るんじゃない。

 彼は自分の仲間のポカの回収しているだけだし、黒義は前に借りたものを返しているだけだ」

「ポカの回収? 借りたもの?」

「君が彼女を保護してから夢魔に依頼するまで、あのサングラスが来なかったろう。つまりは、夢魔がかぐや嬢の居場所をあいつらに教えてしまったということだ。借りの件は黒義に直接聞くんだな」


 そういえば北川先輩が『つけられた』と言っていた。


「じゃあ、あなたは何のために来たんだ」


 いや、相手から見えない“神隠し”はすごくありがたいが。


「私は吸血鬼の術を知りたいだけだ。今は敵ではないにしても十年後は分からないからな。観賞できる機会は逃さないよ。吸血鬼のほうも“こちら”を警戒して、大技は出さないつもりだ」


 ちなみにそんなことを言っている間にも、レーザーは三つに増えてるわ、竹の枝がこちらにも飛んでくるわ、黒義は空を飛んでるわ……


「って、空飛んでいる!?」

「私からしたら、人間が鉄の鳥に何百人も乗せているほうが驚きだが」


 その時、レーザーを撃っていた二人が一旦レーザーを消して別の物を銃から放った。

 日の光に一瞬だけ反射するピアノ線のようなものが、黒義の首に絡みついた。

 黒義は自由な手でとっさに首が完全に締めらられるのを防ぎ、手に火を発生させて、首に絡まっている糸を燃やそうとする。が、燃えない。


「ただの糸のようにはいかないか」


 首が絞まってる上、片手が絡まっている黒義は身動きが取れない。

 北川先輩が、黒義のそばに飛んで、首の糸を引き剥がそうとする。


 だが、そこにレーザーが黒義の顔に向けられる。  

 SF映画のような派手さは無いが、竹が焦げるほどの光ということは……


「って、失明するぞ!」


 翔の叫びとほぼ同時に、赤い光が大きくなった。


「ちっ」


 狐が小さく舌打ちすると細い水流がレーザー銃の銃口を包んだ。

 水流はいずこかに向かっているが、問題は黒義に向けられていたはずの赤い光が消え、水流がぼんやりと赤く光っているように見えることである。


 敵味方とも一瞬呆然となったところ、北川先輩が懐から取り出したカッターの刃を糸に押し当てた。薄く傷が付いたのか後は力任せに二本とも引きちぎる。


「えーっと今何をなさったんでしょうか?」

「光の反射で何とかできないかと。御手洗おてあらいって所から、水を引っ張ってきた」


 見れば、既に水流は三枝に分かれて他の二つの銃口にも繋がっている。


御手洗所みたらいどころだろうが」


 声が聞こえている黒義は、首に手を当て咳き込みながら、狐の間違いを指摘する。首がわずかに焦げていて痛々しい。が、この時点で、黒義はミスを犯していた。


「今頃、御手洗所みたらいどころ赤く光ってるだろうな」 

 と、狐は笑った。


「今、誰にしゃべった?」

「は?」


 小太りの男がぽつりと言った言葉の意味が分からず、おつきのサングラスの男も黒義も北川先輩も答えられない。


「空間を調べ直せ」

「亜空間ですか? この時代にそのようなものに入る技術があったとは思えませんが?」

「こいつらはどう見ても異常だ。通常のテクノロジー史は当てはまらない。

 それに先ほどあの男は『御手洗所』がどうのと話していたが、いったい“誰に”話していたんだ?」

今回、ピアノ線、レーザーポインターの間違った使い方をしていますが絶対まねをしないで下さい(当たり前ですが)。


レーザーポインターの全反射は、一応調べたのですが、さすがにレーザー銃で実験できるわけが無いので、想像です。

御手洗所、湯気が立っているかも知れません。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ