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かぐや姫奇譚  作者: くらげ
かぐや姫奇譚
5/12

吸血鬼の戯言

場面がころころ変わってすみません。

ヒント……2013年開発『シール注射』

◆翔


『君、今日は学校を休んで……。結構やばいことになっているみたい。今から君の所に行くから』


 翔は最初、母から「北川さんって人から電話」と聞いても誰からの電話か分からなかった。

 が、人を小馬鹿にしたような声には覚えがあった。占い師の先輩の隣にいた男子生徒だ。


「って、住所教えた覚えありませんけれど……」


 そもそも電話番号を教えた記憶も無い。知る機会があったとしたら、昨日の依頼の時のはずだが、彼の位置からは絶対見えなかったはずだ。


『大丈夫大丈夫。知っているから』 


 それから15分もしないうちに北川先輩は翔の家に本当に到着した。



 ◆北川 



「ちょっとね。おもしろい物を見たって言うんだ」


 翔の家にたどり着いた北川 正雄はにこやかに言った。

 正確にはかなりむかつく光景を見たのだが、この子供かけるに教える気はない。


 シミ、そばかす、肌荒れがまったくない精巧な人形ような少女を見て、北川はなるほどと思った。

 十五年か十六年身体を使用してきた痕跡が無い。


 サジのほうはもうそろそろ霜山健美と共に学校に向かっているはずだ。


 まず、サジの携帯電話にかけて霜山健美に代わってもらう。

 彼女は超常現象については大変詳しい。


 敵と戦うには、ある程度情報があったほうが良い。

 それが例え噂程度のことであっても、概ねそのとおりのことが多い。


 そう例えば吸血鬼は太陽の光に弱いとか。十字架に弱くはないのだが。


「朝っぱらからすまないけれど、宇宙人って人間の姿していると思う?」

『見たこと無いから知らない』


 オカルトおたくはそっけないを通り越してむすっとした声で答えた。


「なんでもいいからさー、さっさと教えてくれないかなぁ」


『私も、小学生の時は“それ系の”話好きだったけれど、もう今はあまり見てないですし、そんなに詳しくは無いけれど……グレイは人間型しているけれど目が異様に大きかったり、肌が灰色だったり……

 でも、まあ地球でも、色んな形の生物がいるんだから、いたとしても宇宙人が素直に人型してくれている可能性はほとんど無いんじゃないですか?』


「宇宙人が現れるときってどんな感じ? なんか特殊な前兆とかあったりするの?」


『どんなって……UFOが現れるときは、電波が届きにくくなるとか。機械がその時だけ使えなくなるとか……。

 攫われた人は謎のチップを埋め込まれて、真っ黒なスーツ……サン……スの……』 



 ◆佐伯



「って切れた。何なんだろう? まだ牛の話もミステリーサークルの話もしていないのに」


 オカルトおたくの霜山健美は首をかしげて、携帯をサジ--佐伯に返した。


 佐伯は「いや、いろいろ十分すぎるだろ」という声は心の中にしっかり仕しまって、「さあな」と返し……ふと彼女の言葉を思い出す。


「まさか、宇宙人って事ないよな」

「噂話をしただけで、宇宙人と幽霊が寄ってくるなら、超常現象の特集作っているテレビ局なんか宇宙人と幽霊だらけだと思いますけれど」


 いくら彼女がオカルトおたくでも、彼女は決してサジたちの世界を信じはしない。


「そうだな」


(まさか、な)



 ◆翔



「げ。さっきまで三本立っていたのに」


 北川先輩は舌打ちして、電話を切ると、

「ちょっとだけごめんね」

 そう言って、“かぐや”の手を取ると指先に噛み付いた。


 漏れ聞こえる電話の内容……特に『宇宙人』の単語に気をとられていた翔は先輩の突然の行動を止められなかった。


「って、何をしてるんだ!」 

「人間。寿命普通。後は血液中に変なものが混じっている。薬じゃないようだけれど。血自体に認識表タグを入れている? サジの言ってたシールってタグを入れるための……」


 吸血鬼の北川 正雄は血を分析して情報収集しているだけだが、彼の正体を知らない翔から見たら変態以外の何者でもない。 


「宇宙人だか異世界生命体だかが彼女を攫いに来る。取り戻しに来るといったほうが正確だな」

「はあ?」

「これがタグって言うなら……」

「おい! 俺にもわかるように説明しろよ! ってか、占い師の先輩は!」

「変質者事件で、夢の中で姿を認識されて、現実で敵と接触した途端攻撃受けちゃったから、今回は念のためパス」


 話の分かりそうな佐伯先輩じゃなく、変態自己中な先輩の方がなぜ来たのか。

 はずれが来たことに心の底から嘆いている翔に北川は問いを投げかける。


「それより、この近くに神社あるんだよね? その神社ってお稲荷ある?」

「たぶんあると思うが。変質者事件って……」

「悪いけれどちょっと多めに血を吸わせてもらうよ」


 そう言って、北川は慣れた手つきでかぐやのブラウスの第一ボタンをはずして、首筋に……。

 翔は思わず近くにあった漫画雑誌のかどで先輩を叩いてしまった。

 もうこの時点で翔の心に北川を『先輩』と呼ぶ気は完全に失せた。


「おい! 警察に通報するぞ!」

「警察に解決できるならぜひ呼んでほしいけれど……。サジがあとをつけられたかも。黒義準備を……。狐さん来れたんだね。良かった」


 頭の打ち所が悪かったのか、北川はさらに意味不明なことを言う。


 北川は腰を浮かし、険しい表情で窓の外を睨んで、

「俺らさいてーの当たりくじを引いたようだね。走るよ!」

 と言うと、かぐやの手を掴み、玄関に向かった。


「あら?」


 居間のテレビから流れるニュースが突然ふつりと途切れ、母の不思議そうな声が聞こえる。

 次いで、時計の音、冷蔵庫の音、換気扇の音……世界から音が減った。

 蛍光灯が切れかけのように点滅しはじめる。


「ちょっと待てよ!」


 北川はちらりと翔を見たが、かぐやが靴をはいたのを確認すると信じられないスピードで走り出した。

 なぜ、停電でそれほど慌てるのか。


 そう思ったのとほぼ同時に、頭が割れるような甲高い耳鳴りが聞こえ始める。

 耳鳴りに低く重い音がかぶさる。


 竹林に入ったところで、強烈な光が笹の葉の間から降り注いだ。

『シール注射』……ぺたっと貼るだけの痛くない注射です。予防注射のたびに涙が出てしまう私には夢の注射です。

作品世界は10年ほど前を設定していますので、この時代には『シール注射』はありません。


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