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かぐや姫奇譚  作者: くらげ
かぐや姫奇譚
4/12

間章 占い師vs??

ちょっとずつエグくなって行くので注意です。

◆夢魔


 でかでかとプレートが掲げられている。


『the Garden of Eden』


 佐伯颯真--夢魔サジは目を細めた。目が悪いわけではない。英語が苦手なだけだ。


「ガーデン オブ エ、エデン……エデンの庭?」


 他の景色を見るのは精神上はばかられる。


 半球状の透明なドーム。


 それはほぼ半分に区切られ、プレートが掲げられた下には自動ドアらしきものがついている。

 

 もう一度、天井に目を向けた。


 その先に広がる宇宙そらには水の真珠が浮かんでいた。



「なんかのテレビの影響か? えらい個性的な夢を見ているな」


 とても、かぐやという少女の過去に関係があるとは思えない。

 背後では不法侵入者に気づかずに白い宇宙服のようなものを着込んだ人間が会話を交わしている。


「身長、体重、筋肉誤差の範囲内……。胸囲は……」

「よし……シュ……」


 少女がドームに手をついて、宇宙にぽっかり浮かぶ地球を眺めていた。

 一人の宇宙服が少女に近づいて教える。


「ああ、あれは……地球だ」


 彼女は飽くことなく、宇宙に浮かぶ青い星を眺めていた。


 サジはそのさまをうっかり見てしまったが、慌てて目をそらす。


箪笥たんすどこかに無いか」

 

 『箪笥たんす』と言うのは例えだ。

 人間の記憶は日々夢の中で整理整頓されている……らしい。整理された記憶は優先順に“箪笥”に入れられる。それにアクセスさえできれば、過去の記憶を見ることができる。

 

 素直に箪笥の形をしているわけではないし、その中には人に見られたくないものも詰まっている。

 なので、夢の結構けっこう奥のほうにあることが多い。


 ふと違和感を感じて振り返る。

 宇宙服も女性達も誰もサジに気づいていない。

 

 誰かに見られたような気がしたが…… 


「まさか幽霊じゃないよなぁ」


 例え夢とはいえ、いや夢だからこそホラー関係のものには近づきたくない。

 現実では、テレビの外へ出てこないが、夢の中では平気で襲ってくる。

 

 扉のほうに行ってパネルを適当に押すとあっさり扉は開いた。



「趣味悪いなぁ」


 真っ白な部屋。何十とカプセルがあり、水に満たされたカプセルの中には、人間が……

 SF映画でよくありそうな光景だが、実際見ると理科室のホ○マリン漬けを思い出して、はっきり言って気分が悪い。


 こちらはカプセルの中以外に人はいない。


「何の映画見たんだろうな」


 もっと奥に行かないとだめなのかと思った時。

 空間の密度が変わった。そう、もう一人多いような感覚だ。


 すぐ後ろに人が立っていた。白衣の男だ。


「あなたは……」

「何者だ……」


 相手の問いにどちらも答えない。


 一番最初に、足があることを確認するが、白衣の男の姿にテレビの画像が乱れた時のような筋がいくつもできる。

 

 それに気をとられている間に、足に何か絡みついた。金属の蔦だ。


「なっ……」


 どういうわけか、相手はサジを捕らえようとしている。

 そう判断したサジはズボンのポケットに手を入れ、先ほどまではポケットに入っていなかったものを掴んだ。家で使用している包丁だ。


 夢の中には吸血鬼は助けにこれない。自分で何とかしなければ。


 一瞬ためらった後、夢から緊急離脱(かくせい)するには一番手っ取り早い方法を実行する。


 包丁が腕に刺さり、血が傷口からあふれたところで、目が覚めた。    

   


◆??


「睡眠中か」


 イヴが逃げたのは過去の時代だ。やっとパルスを捕らえられたが、とても不安定だ。

 時代特定ができていない。


 思考に重要な手がかりがないかと先ほどから監視しているが、ノイズがひどい上、『庭』にいた頃の夢を見ているだけだった。


「思考パルスに負荷。正体不明の何かがイヴの夢に侵入しています! 侵入パルス、AD2000誤差+-5」

「AD2000? その時代にそんな技術があるとは思えないが」


 あの時代にはありえない技術。


 恐竜の肌の色も宇宙の果ても分かっている今、この世界に不思議はほとんど残っていない。

 探し物をしてて、思わぬものを見つけた。


「捕まえられるか?」

「やってみます。が、時間が……」


 負荷がかかっているため、粗い映像が途切れ途切れになる。


「誤差修正2002+-3」


 オーパーツかオーバーテクノロジーか。

 ほんの一瞬画面に焼きついた髪を黄色に染めた若い男は、こちらに気づいた。


「人間?」

 

 パネルを操作して、自分の幻影をイブの夢の中に写す。


「何者だ……」


 だが、男は答えることなく…… 


「逃げられました!」


 途端、負荷に耐えられず画面がブラックアウトした。

 確保できなかったかと落胆したが、オペレーターが報告を上げる。


「逆探知成功しました。時代特定完了。NOHIN2003」


◆占い師


 目覚めたサジ--佐伯颯真の腕には紙で切ってしまったようなとても浅い傷が残っていた。

 うっすら血もにじんでいる。


「ミスった」

『は?』 


 サジは吸血鬼に電話し、見たままの光景を伝えた。


 服を身に着けていない女性達、透明なドームの外に広がる宇宙。

 白衣を着た男達が、少女達の腕にシールを貼る。 そのシールはみるみる肌に溶け込む。


「で、確実に見られていた。その上、相手は俺を捕まえようとした」


 ただのSF風の夢だったら、何の問題も無かったが、こちらを捕まえようとしたあの男は本当に目がやばかった。


『……はぁ? 捕まえるって……またぞろ仙人とか?』

「宇宙人が月に秘密基地を作っているんじゃないか?」


『ぷっ。まあ、俺らは宇宙人を否定する立場には無いけれど、某国が月で謎の実験をやっているとかの方がありそうだな。

 どっちにしろ月にそんなドームがあったら天体望遠鏡か月周回衛星に発見されているんじゃないか? 月から地球が見えるってことは、月の表側だろうし』


 存在自体非常識な吸血鬼が常識的な意見を述べる。


『宇宙人だろうと某国の軍事技術だろうが、夢の中の夢魔おまえを捕まえるなんて不可能だと思うがな』

「さあな。とりあえず急いで向かってくれ。昨日のうちに家の場所は調べたのだろう? 俺は今回一旦いったんここで手を退く」


 サジが変質者事件に関わった時、夢で会った仙人に現実で再会した途端、雷をぶつけられたのだ。

 自分の能力を信じきっていたら、もう少し警戒して、ましな対応ができていただろう。


『わかった。とにかくそっちにも蝙蝠ぶんしんを向かわせるよ』

「頼む」


 本当に夢の中の白衣の男が“かぐや”を探しているのなら、数日以内に動きがあるはずだ。

 むしろ、半年後に襲撃されたら打つ手がなくなる。


 サジも留年さえしなければもう少しで卒業だ。

 吸血鬼も別の町に行き、名を変えて高校生活を繰り返すそうだ。

 さすがに大学に行ってまで、この事件に構ってはられない。


「長期戦にならなければいいけれど」


 一番良いのは、あの夢が真実でないことだが。

2003年……ハヤブサがイトカワに向けて出発。


1960年代には某国が月の裏の撮影に成功しています。


『仙人』の件は「そんな事件もあったんだ」ぐらいに思っていただければ。

ただ、その仙人に『貸し』があるってことが今回の作品にちょっとだけ関係しています。

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