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追放されたが、ソロでもやっていけるので勇者パーティはもう結構です

作者: クロネコ
掲載日:2026/02/21

ここはルグレイン王国。この大陸で一番の大国だ。今まで幾重となく、世界に危機が訪れた時、この国から勇者が生まれ世界を救ってきた。


そして、この時代にも厄災が訪れていた。


ルグレイン王国、玉座の間。国王は一人の青年に頭を下げた。


「どうか勇者パーティに加わってほしい」


国王自らそう懇願される青年の名はレオン。この世界で希少属性とされている支援魔法の使い手。どの時代にも勇者を支えた支援魔法師が存在しており、勇者と並び尊敬の念を集めていた。


しかし、レオンはこれまでの支援魔法師とは大きく異なる点があった。それは、今までの支援魔法師と違い攻撃魔法を持たないことだ。今までの支援魔法師は、全体的に能力を2倍に引き上げることができるほか、自身も戦闘をこなすことができる魔法職として存在していた。


それなのに、レオンは支援魔法しか使えなかった。だがその代わりに、常識を超える力を持っていた。基本的に支援魔法は自身にはかけられないし、最大でも能力を2倍に引き上げる程度のものだった。


それに比べ、レオンの支援魔法は身体能力三倍、魔力出力五倍、常時防御結界、恐怖・疲労・状態異常完全無効など破格の効果をもたらす。そして、レオンがさらに規格外な理由は、重ね掛けが可能なこと。


しかし、その事実を知るものはただ1人、レオンだけだった。レオンが支援魔法しか使えない支援術師だとみんな思っているのだ。


それでも、支援術師が勇者パーティにいる。そのことが重要なのだ。国王もそのことをよく理解していた。そして、その判断は正しく、勇者パーティは連戦戦勝を重ねた。


今代の勇者パーティは5人。勇者アルド、魔導士カイル、聖女ミリア、盾騎士バルト、そして支援術師レオン。旅の共には王女エレナも加わり、王族としての責務を果たしていた。だが、あまりにも順調な旅は、次第に亀裂をうんでいくことになった。


「俺達って、もともと強いんじゃないか?」


勇者アルドは笑う。しかし、レオンは何も言わない。ただ静かに支援魔法を付与し続けた。周囲が勘違いを起こすなか、王女エレナだけはレオンの力を疑っていなかった。


「あなたがいると、安心するのです。能力だけでなく、あなたという人柄が素晴らしいと私は思っています」


そういう彼女はレオンに微笑む。


「私は、あなたの可能性を信じています」


その言葉は、レオンの胸に確かに残った。


ーーーーーーーーーー


今回の旅の目的、蒼焔の竜討伐前夜。勇者パーティにとある事件が起きていた。


「レオン、お前はここまでだ」


レオンに追放を突きつけるのは勇者アルドだった。その他のメンバーも誰も止めなかった。つまりはそういうことなんだろう。


「俺たちはもう自力でやれる」


魔導士カイルが笑う。


「支援って地味だしねぇ」


聖女ミリアは目を逸らす。


そこまで聞けば、このパーティに居場所がないことはすぐにわかった。レオンは素直に頷いた。


「では、強化を解除します」


その瞬間。光が、四人から剥がれ落ちた。だが彼らは理解していない。これが何を意味するのか。


レオンは振り返ることなく、その場を後にした。レオンが追放された時、王女エリナは居なかった。彼女は大丈夫だろうか?


レオンは彼女だけが心配だった。


翌日、蒼龍が棲みつくとされる山を勇者達は攻略していた。


アルドは剣を握る。


おかしい。剣が・・・重い。こんなに重かっただろうか?


違和感に気づくも、龍は待ってくれない。龍の尾がアルドに迫る。アルドはいつも通り剣で受け止めるが衝撃で腕が痺れる。


カイルは最大火力で火球を放つ。大抵の敵はこれで爆殺できていた。カイルの火球は龍に直撃した。しかし、鱗が焦げるだけで微動だにしない。


こちらが一通り攻撃を放つと、龍はこちらの番だと言わんばかりに炎を吐き出した。いつもなら、レオンの防御結界が防いでくれるため大した怪我につながることはない。


しかし、今回は防御結界がない。熱が皮膚を焼く。味わったことのない痛みが彼らを襲う。


恐怖が込み上げ、足が竦む。疲労が蓄積する。


彼らは“一般人にしては強者”に戻っていた。


龍の爪が振り下ろされる。このままでは全滅だ。アルドはみんなに指示を出す。


「撤退だ!!」


撤退、いやこれは完全な敗走だった。勇者達は曲がりなりにも冒険者だ。逃げることに集中すればなんとかなる。しかし、王女はそういうわけにはいかない。


結果、王女は龍に攫われてしまった。蒼龍からすればただの肉の塊。きっと食べられて終わりだ。アルド達は申し訳なさを感じながらも、自分でないことに安堵していた。


ーーーーーーーーーー


龍との戦闘後、勇者パーティは王都に戻ってきていた。民衆達は勇者の帰還を待っていた。しかし、民衆の目に飛び込んできたのはボロボロになった彼らの姿だった。


民衆がざわめく。


「ま、まさか負けたの?」


「支援術師様が抜けたらしいぞ」


「王女様がいないわ」


命からがら帰ってきた勇者達だったが、彼らに休んでいる時間はなかった。帰還した勇者達は王城へと半ば強制的に連行されていった。


そこで、ことの顛末を知った国王は、勇者達を叱責した。


「支援術師を勝手に追放しただと!?」


「も、申し訳ありません!!」


アルド達は首を垂れた。しかし、レオンを追放したことを反省はしていなかった。


「しかし、レオンがいた所で龍には勝てませんでした。俺たちはあの程度の支援魔法で頑張っていたのです!!」


アルドの発言に、パーティの面々は激しく頷いた。しかし、そんな言い訳を素直に聞くほど、国王という立場の人間は愚かでなかった。


「もう、貴様らに期待などしてはおらぬ。王女のこともあり、今すぐ八つ裂きにしてやりたいが、王女は王族の勤めを果たした結果だ。そこは問うまい。しかし、私怨でレオンを追放するなど許されぬ」


勇者達を叱責し終えた国王は、臣下に命じてレオンを招集した。


「レオン殿、龍の討伐を依頼したい」


「もちろんです国王様。しかし、それだけですか?」


レオンは、国王の責任感の強さを知っている。そして、どれだけ立派な方なのか知っている。己の願いを優先することができないことも。


「すまない・・・娘を、エレナを救ってくれないか?」


「お任せください」


その場には勇者達もいたが、レオンは彼らに一瞥もくれずこの場を立ち去った。龍が人を攫うこと自体が稀な話だ。食事ならその場で食べていただろう。理由はわからないが、きっとまだ生きている。


レオンは1人で蒼龍の元へ向かった。


ーーーーーーーーーー


「自分を支援するのは久しぶりだな」


今までは勇者達を支援いていれば勝てていた。そのため、自己強化など必要なかった。しかし、今は自分しかいない。攻撃魔法が使えない自分は、身体能力で勝負するしかない。今まで以上に魔法を重ねがけしていく。


「自己強化――多重展開」


身体能力十倍。

反応加速。

全状態無効。


世界が遅く見える。


竜の炎を躱す。


岩壁を蹴る。


一閃。


ただの鉄製の剣が龍の鱗を断つ。レオンは手を止めなかった。


龍の巨体に次々と傷をつけていく。次第に傷だらけになっていく龍は、何もわからぬまま息絶えることとなった。最後は喉を貫く一撃で蒼龍はゆっくりと崩れ落ちた。


激しい戦闘の後、静まり返る洞窟。


その洞窟の奥。微かに人の気配がする。レオンは急いで向かうと、そこには王女エレナの姿があった。連れ去られ怪我をしているものの、命に別状はなかった。レオンはすぐさま手当をする。


レオンに助け出されたエレナはそっと涙を流す。


「あなたが来てくれると、信じていました」


彼女は言う。


「私は、あなたの隣にいたい」


エレナの言葉に恐れ多くもレオンは微笑み、口をひらく。


「エレナ様、光栄です」


レオンはエレナの手を取り、王都へと帰還した。


ーーーーーーーーーー


レオンが龍を討伐し王女を救い出したことはすぐに広まった。


そして、王都は歓喜に包まれる。


無事に世界の危機を救った英雄に、国王は褒美を取らせた。英雄レオンと王女エレナが望んだのは一緒にいることだった。国王は反対することなく、正式に婚約を発表した。


英雄と王女の婚約発表に民衆は歓声をあげた。


その後方で、元勇者アルドの拳が震えていた。


「全部、奪われた」


もうアルドに正常な判断能力は残っておらず、そっと剣を抜く。


「全部お前のせいだ!!」


王女の隣に立ち、笑顔を見せるレオンに斬りかかる。


そんなアルドの姿をレオンはしっかりと捉えていた。レオンは小さく呟く。


「自己強化」


レオンは剣を素手で受け止める。それを信じられないと言わんばかりに大きな口を開けて驚くアルド。


「そ、そんなバカな」


膝から崩れ落ちた元勇者に王女が言う。


「嫉妬で剣を抜くようなあなたは、やはり勇者の器ではなかったのでしょう」


エレナの言葉に、頷いた国王。


「元勇者アルドを地下牢へ投獄せよ」


元勇者アルドは抵抗することなく、引きづられるように連行されていった。そんな姿に民衆は静まり返っていたが、すぐにレオンと王女をお祝いしようと再び歓声が上がった。


エレナはレオンの手をそっと握る。


「これからは私を支えてください」


「もちろんです。ですが、殿下も私を支えてください」


二人は並び立つ。


かつてパーティから追放された支援術師は、今や王国を支える柱となった。


レオンはずっと支えていきたい存在に出会った。そして、自分を支えてくれる存在に出会うことができた。きっと2人なら支え合って生きていける。


2人は、見つめ合うと柔らかな微笑みを浮かべた。


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