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江藤のこと
アイツ…江藤秋斗は、遥のお腹の子の父親だ。
江藤は山本の後輩記者だった。
江藤は幼いころに両親を亡くし、江藤の母の兄である叔父夫婦に育てられた。
叔父――津久井健二。
津久井は、いかにも「ひと昔前の記者」という言葉を体現したような男だった。
その背中を見て育った江藤は、迷うことなく記者になった。
そして、山本の隣のデスクに座ることになる。
一匹狼で無口な山本。
人懐っこく、場に溶け込むのが得意な江藤。
よく話しかけてくるが、それがうるさいではなく、どこか心地よかった。
正反対なのに、不思議と噛み合った。
津久井が退職してからは、江藤は完全に山本の後を追うようになった。
単独行動が基本なのに、自分の仕事が終わると必ず山本のところへ来た。
――その江藤が、半月前、忽然と姿を消した。
「今日の取材で、何かわかったの?」
今日の対象者はいけると思ったから、江藤のことに関して、期待させるようなことを遥に言ってしまっていた。
「わからなかった…。」
遙はため息をついた。




