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エピローグ
山本は大きく息を吐いた。
酔っ払いのいない別のベンチに移り、腰を下ろす。
ふと、ベンチの脇に視線を落とした。
そこには、意味のわからない線が刻まれている。
普通の人には読めないその線……
先輩記者・津久井健二が残したであろう速記だ。
「今どき速記なんて……」
そう言った山本に、津久井は笑って答えた。
「スマホはな、充電切れたら終わりだろ。そうしたら困るだろ…」
山本は、その線をそっと指でなぞる。
「津久井さん……待っててください」
考え事をするとき、気持ちを切り替えたいとき、
津久井はいつもこのベンチに座っていた。
そして――
江藤も、ここに来てこのベンチに座ったのだろう…
(江藤…無事でいてくれ)




