55話 届かぬ声、黄昏の姫君
タイトル変えようか悩んでます
案
『狐狂いのエンジニア、理想のVR世界で最弱の幼狐として生きる』
か
『狐狂いのVRMMO ~理想の狐を作ったら最弱の幼狐になりました~』
どうでしょうか?どちらの方が良い感じですかね?
石畳の両脇に古びた石造りの建物が並ぶ職人通りは、大通りとはまた異なる重厚な活気に満ちていた。軒先には染め上げられたばかりの布が揺れ、どこからか革を叩く小気味よい音が響いている。
カレンが暖簾をくぐったのは、間口こそ狭いが、良質な手芸用品を扱うことで知られる老舗の糸屋だった。
「あら、素敵な色……。ハルさん、この深緑の刺繍糸、ベルナデッタさんに合いそうじゃない?」
「そうだねぇ。この色なら、この細い銀糸を混ぜても綺麗に映えるだろうねぇ」
買い物をしながら、カレンは店主と世間話を交わしつつ街の流行を聞き出し、それを村の需要と照らし合わせていた。ハルもまた、村の女衆から頼まれた糸や修繕用布を真剣に吟味している。
その間、クズノハは店の入り口にある、使い古された木製の踏み台に腰掛けていた。
ハルの視線の端には入っているが、二人の意識が商品に集中している今、彼女の周囲には物理的な空白が生まれている。
クズノハは、自分の小さな掌をじっと見つめていた。指を一本ずつ折り、その節々の動きを確認する。かと思うと、空を見上げて足をプラプラと揺らしたりと、見るからに落ち着きがなく無防備な姿を見せていた。
しかし、その隙を狙っていた影があった。遠巻きに様子を伺っていた一人の男性プレイヤーがカレンたちが店主に背を向けたタイミングで、滑り込むように距離を詰めた。整えた髪型、それに上品に拵えた服から資産力と教養を持ち合わせていることが滲み出ている。
男はクズノハの正面で恭しく膝をつき、彼女の視界を塞ぐようにして、落ち着いた声で語りかける。
「……失礼。このような場所でお一人とは。何かお探しであれば、私と仲間が力になれるかもしれませんが?」
男には、打算的な考えがあった。掲示板で囁かれる銀髪の狐獣人は王族であるという噂。もし目の前の幼子がその類であればここで恩を売ることは、将来的にこのエリアの政治的な中枢へ食い込むための鍵となるかもしれない……と。
クズノハは、自分を覗き込む男を一度だけ見た。だが、その瞳に人間を認める色はなく、見る価値がないものとしてすぐに視線を外した。
「……お分かりいただけませんか? 私共は、貴女のような方を守護する準備がございます」
男がさらに一歩踏み込み、親愛を示すように手を差し出す。その瞬間、クズノハは無言で立ち上がった。
差し出された手を払うこともしない。ただ、そこに置かれた椅子でも避けるかのように、淀みない動作で男の脇をすり抜けた。
迷いのない足取りで店内に戻り、ハルの服の裾をぎゅっと掴む。背後で、男が空を掴んだまま呆然と立ち尽くしていたが、クズノハがその背中を振り返ることはなかった。彼女にとって、存在してもしなくても同じ存在に過ぎなかったからだ。
彼は、カレンがこちらを振り返る気配を感じ取ると、苦笑いをしてから顔を振り、ゆっくりと雑踏へと姿を消した。
しかし、路地の影からその様子を見ていた他のプレイヤーたちの間には、戦慄にも似た確信が走っていた。
「……あれではダメみたいだな。全く相手にされてない」
「まいったな……取り付く島もないぞ。やはり、周囲の関係者が重要なんじゃないか?」
「まずは保護者に話を聞くべきなのだろうな。だが、すでに警戒されてるんじゃないか? 穏当に会話を進める方法を考えよう」
カレンがリサーチを終え、満足げな顔で店を出てきたときには、プレイヤーたちはすでに次の接触条件を巡る考察のために、静かに散り始めていた。
「さて、いい買い物ができたわ。さあ、クズノハちゃん、戻りましょうか」
「そうだねぇ。……なんだか、今日は少し冷えてきたねぇ」
ハルに手を引かれ、クズノハは再び歩き出す。
その視線は街を囲む巨大な防壁と、その向こう側に広がる野生の空……そして、暖かく繋がれた手へと向けられていた。
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【藪に飛び込み】辺境スレ 雑談・攻略 28【蛇を出す】
341:名も無き冒険者 ID:xR2t5N9m
恭しく話しかけてみましたが、姫君は無関心な御様子でした。
この様子ですと……どうやら、直接に本人に話しかけても関心は得られない可能性は高そうですね。
342:名も無き冒険者 ID:p7L2n5vA
≫341
あれでも無理だと、そうっぽいなー。
と言うか、あの子の身の上については聞き出せた人は居るんかな?
343:名も無き冒険者 ID:Nth01Wp9
タスケテ……タスケテ……
とうとう、オオカミがガリガリ木の幹を引っ掻いて、登って来そうな気配出してきた……
344:名も無き冒険者 ID:r9X2p4Qn
すみません。
あの、私は北方に来て日が浅いのでよくわからないのですけど、何で皆さんは銀髪の子が王族だと断言しているのですか?
北方大陸って銀髪はよく見かけますよね?
345:名も無き冒険者 ID:m3K8v9nQ
≫343
諦めて、さっさと死ねば楽になりますよ?
ワンちゃんもご飯を食べれて、一石二鳥です。
346:名も無き冒険者 ID:k9M1m2n3
≫344
人間の銀髪は多いけど、獣人では銀髪はまず見かけないんだよね。
あと、ここらへんの住民の獣人って、ほとんどが身分が高い人なんだわ。
で、その中でも狐の獣人は身分が高いらしくて、特に銀髪については王家の血を引いてる人だけだって話らしい。
347:名も無き冒険者 ID:Nth01Wp9
いーやーだー!
せっかく集めたアイテム失いたくないー! タスケテー!!
348:名も無き冒険者 ID:kP7j3W8q
もうコイツは放っといても大丈夫なんじゃないかな?




