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狐狂いのVRMMO ~理想の狐を作ったら最弱の幼狐になりました~  作者: かきのたね
五章 白銀の姫君と観察者達

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54話 乙女心とうわの空

 翌朝、冬の足音が間近に迫る辺境都市の市場は、早朝から活気に満ちていた。

 石畳を叩く馬の蹄の音、露店から立ち上る湯気、そして冬を越すための物資を求める人々の熱気。カレンが狙いを定めているのは、冬の間の貴重な楽しみとなる嗜好品だ。蜂蜜に漬け込まれたナッツの瓶詰め、南方のスパイスを贅沢に使った焼き菓子、そして色鮮やかな果実のシロップ漬け。


「これなら村の衆も喜ぶわね。冬の夜、暖炉の前でこれがあれば、少しは寒さも紛れるでしょ」


 カレンが商売人らしい目つきで、手際よく木箱の中身を吟味していく。ハルも隣で「あの子たちには、この飴が良さそうだねぇ……あら、ベルナデッタさんにはこれがいいかしらねぇ」と、楽しそうに品定めをしている。


 その傍らで、クズノハはハルの手に引かれながら、ぼんやりと石畳を見つめていた。

 それは心ここにあらずといった様子であり、ふと何かに気が付くかのように視線をあげるが、すぐに視線を落としている。周囲の様子を一切見ておらず、二人の話も聞いていないようである。

 

「クズノハちゃん、どれがいいかい?」


 しかし、ハルにたずねられても俯いたままで反応はなかった。


「クズノハちゃん、どうしたんだい? そんなに地面ばかり見て」


 ハルが心配そうに顔を覗き込んできた。クズノハはゆっくりと瞬きをし、ワンテンポ遅れて小首を傾げる。いったい何を心配しているのかも理解できていない。そのような様子でハルのことを見つめ返していた。

 そこにあるのは、いつもと明らかに異なる様子の幼子を心配する老婆の姿。だが、それが周囲の数少ない観測者の目を引いた。


 市場の柱の陰、あるいは向かいの露店。

 そこには、昨日の掲示板の書き込みを見て、半信半疑で銀髪の幼女を探していたプレイヤーたちが数人、遠巻きにこちらを伺っていた。


「……あ、いた」


 その中でも……ふと、買い物の足を止めた一人の女性プレイヤーが、クズノハに視線を留めた。彼女は周囲のプレイヤーと同様に、掲示板での幼女についての噂は目を通していた。

 目撃情報につられてやってきたそこにいたのは、あまりにも小さく、銀髪の綺麗な、どこか儚げな幼子だ。女性は威圧感を与えないよう、少し離れた位置で膝をつき、目線を合わせた。


「こんにちは、お嬢ちゃん。……これ、もしよかったら食べる?」


 彼女が手のひらに乗せて差し出したのは、鮮やかな色の小さな飴玉だった。クズノハは飴玉と女性の顔を交互に、感情の読み取れない静かな瞳で見つめた。

 クズノハは無言のまま、飴を受け取ることなく、ハルの服の裾をぎゅっと掴んでその背後に隠れる。幼子が知らない人から物を差し出されたときに行う、当然の警戒。しかし、彼女の瞳には拒絶というよりも関わりたくないという光が灯っていた。それに伴い、ハルも不審そうな視線を女性に向ける。


「あはは……ごめんね? びっくりさせちゃったかな。バイバイ」

 

 女性プレイヤーは苦笑し、深追いすることなく立ち去っていった。クズノハは、立ち去る彼女の背中を少し見つめた後、再び足元を見つめて思考の海へと意識を沈めていったのだった。



______________________________________________



【藪に飛び込み】辺境スレ 雑談・攻略 28【蛇を出す】


312:名も無き冒険者 ID:m3K8v9nQ

さきほど市場で例の銀髪ちゃんに会えました!

飴をあげようとしたら、じっと見つめた後にお婆さんの後ろに隠れちゃいました。

やっぱり、急に話しかけたら駄目ですね。無表情で避けられると、さすがの私も傷つきました……。

ショックです!


313:名も無き冒険者 ID:u8K9z2xM

≫312

また銀髪ちゃんの報告か。

でも飴スルーしたんだろ? 意外とクールな性格だよな。

あれぐらいの歳だと、普通はお菓子につられるよな?


314:名も無き冒険者 ID:p7L2n5vA

≫312

俺も遠くから見てたけど、そりゃ急に近づいて飴いる? は避けられるだろ。

そういえば、あの子買い物中ずっと足元を見てる感じだった。

なんか、悩み事とか考え事でもあるんかね?


315:名も無き冒険者 ID:j3R4k6tQ

≫314

あー、それだ。

その悩み事が何か大きなクエストのヒントになってるのかもな?

街の外で、何か怪しいものを見たーとか。


316:名も無き冒険者 ID:m3K8v9nQ

≫315

うーん……しばらく近くにいましたけど、銀髪ちゃんは一言も話していませんでしたから、もしかしたら言葉を話せないかもしれないですね。

仮にそうだとしても、聞き出すのは不可能なのではないでしょうか?

そんなことよりも、私はあの頭をなでなでしてあげたいものです。


317:名も無き冒険者 ID:k9M1m2n3

誰か、さりげなく追ってみるやついない?

あんまり近づくと怒られそうだけど、気になるわー。


318:名も無き冒険者 ID:Wp1O4z0X

あまり幼い子供を付け回すものではありませんわよ?

保護者の方も不審そうに見ていたではありませんの。

あんまりしつこいようですと、またどこかに行っちゃいますわよ?


319:名も無き冒険者 ID:Nth01Wp9

あの……銀髪ちゃんのこともいいけど、俺のことも忘れないでくれないかな!?

だれか!オオカミに囲まれてる俺を早く助けに来てくれ!!

今日から毎日更新に戻ります。

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