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狐狂いのVRMMO  作者: かきのたね
二章 村での生活

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17/25

15話 雪道と、薪と、小さな助っ人

やってみて初めてわかる事。

毎回同じ時間に投稿している先人の方々、本当に凄いです……。

 ハルお婆さんの家を包む、冬の朝の静謐。その中で、白銀の髪を持つ幼子、クズノハは、今日も手早く朝食を終えていた。

 空になった木椀を食卓に置くと、彼女はすぐさま椅子から降り、迷いのない所作で厚手の防寒着を装備し、いつも通りに隣の家へのおすそ分けを受け取ってから元気よく飛び出した。


 彼女が隣のベルナデッタの家へとお裾分けの品を届けた際、老婆からいつもの頼み事をされた。

「クズノハちゃん。今日も悪いんだけど、このお弁当を鍛冶屋の息子に届けておくれ。……いっぱい雪が降ったから、気をつけてね」


 クズノハは、即座にこくりと首肯した。

 ここ最近は少しだけ体力がついてきたのか、お使いから帰ってきたときに、自慢気に背筋を伸ばしているのを見る事がベルナデッタの楽しみなのである。


 家を出ると、クズノハはとてとてと一定の歩調で歩き出した。

 しかし、曲がり角を曲がった先で、彼女の足が止まった。昨夜の激しい積雪が、三歳児の小さな足首を完全に飲み込んでいたのだ。


 彼女が一歩進むごとに、ずぶりと深みに沈み込む。そして、バランスを崩して雪の山に、ぼふりと倒れ込んでしまった。


 彼女が無表情に、埋もれた雪の中から顔を上げた、その時だった。


「……ん? クズノハのお嬢ちゃんじゃねぇか。大丈夫か?」


 近くで雪かきをしていた大男、樵のゲルハルトが異変に気づき、野太い声で語りかけて少女を雪から拾い上げた。


「おいおい! ここは誰の担当だ!? ここだけ全然進んでねぇじゃねえか!!」


 樵たちの間に檄が飛びかう。暑苦しい筋肉が走り回る。彼らにとって、大雪の後の雪かきは、全員で行う一大業務だ。


「野郎ども、さっさと終わらせるぞ! 仕事はこれだけじゃねぇんだ!」


 ゲルハルトの怒号と共に、五人、十人と屈強な男たちが一斉にクワとスコップを振るった。


 ザッ、ザッ、ザシュッ!


 猛烈な勢いで雪が左右に跳ね飛ばされる。クズノハは道の脇で待機して、作業が進むのをじっと見守った。


「ほらよ、お嬢ちゃん。これなら通れるだろう? ああ、そうだ。ハル婆さんの家の薪がそろそろ無くなるだろ? 次の分を渡すから、このあとに小屋まで来てくれ」


 クズノハは相変わらず無表情のまま、コクリと頷いてから再び歩き出す。

 樵たちは、彼女が通り過ぎる間、脇道の雪を片付けながら後ろ姿を見守った。


「あの子……いつも同じぐらいの時間に頑張っていて偉いよな。さあ、次の場所に向かうぞ!」


 男たちは優しい目つきで少女を見送り、次の作業場へと向かった。


 除雪された専用道を通り、クズノハは鍛冶屋の工房へとたどり着いた。

 火花が飛び散り、重厚な金属音が響く仕事場。そこへ、雪にまみれてから服を払いもしていない白銀の幼子がとてとてと現れると、場にそぐわないほどの静謐が流れた。


 彼女は、いつも通りにコンコンと扉を叩き、中から出てきたガラムに無言でお弁当の包みを差し出した。


「……おお、お嬢ちゃんか。こんな雪の日にもありがとうな」


 煤で汚れた男は、少し屈んで少女に目線をあわせて表情を緩ませてから弁当を受け取った。


「そうだ。お前さんも薪をもらいに行くんだろう? 樵の小屋に行くなら、こいつをついでに渡してくれねぇか?斧の修理が終わったんだが、まだ受け取りに来ねぇんだ。俺はまだ手が離せねぇ作業があるから、持って行ってくれると助かる」


 クズノハは首肯し、斧を数本滞りなく受け取り踵を返した。

 次に向かった樵の拠点では、焚き火を囲んで休憩していた男たちが、彼女の姿を認めるなり挨拶をした。


「おお、お嬢ちゃん、薪かい? こっちに用意してあるぞ!」


 樵が指し示したのは、乾燥しきった良質な薪の山だった。

 クズノハは無言で薪の山へ歩み寄ると、その小さな指先で、薪の表面にちょんと触れ、1本ずつインベントリへと吸い込ませていった。


 全てのタスクを完了したクズノハは、男たちに向き直った。

 そして、預かった斧を取り出し、壁際に並べはじめた。


「ああ、わりぃ! わざわざ持って来てくれたんだな! これが修理代で、こいつはお駄賃だ!」


 筋肉質な男が幼い少女に目線をあわせ、幾ばくかのお金を手渡した。傍から見ると、何だかとても怪しい光景である。

 少女はそれを満足気に受け取り、もと来た道を引き返していった。


 その小さな背中が見えなくなるまで、樵たちが見守っていた。

 やがて、1人の樵が沈黙を破った。


「……あの子、良い子だよなぁ……。俺達みてぇな見た目でも、怖がらずに来てくれるんだもんな」

「ああ……。俺達を見たあれぐらいの子は、みんな泣いて逃げ出すからなぁ……」


 彼らの心には、暖かな何が灯っていた。


「……よっしゃあ! 野郎ども、あの子は今日も、自分にできることを精一杯頑張ってるんだ! 俺たちも頑張ろうじゃねぇか!」

「おう!次は南西部の雪囲いの作業が待ってるぞ!準備は出来てるか!!」

「「「おおおーーーっ!!!」」」


 冬の空を突き破るような咆哮。

 暑苦しい見た目の樵たちが、猛然と道を駆け抜けていく。

 クズノハは背後で叫ぶ男たちの事は無視して、次のお使いに向かうのだった。

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