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第3話土地神様と元神様、葵に叱られる

「あなたは…誰」


「お前と同じ、神だよ。元、だけどな」

 そう言うと姿を現した。

 黒くて全然見えないのは夜のせいか、それともモヤのせいか……

 てか元神って…ということは……

 昨日居た、例の式神か……


「残念だが、その内容を見ちまったのならお前をここで殺さないといけなくなるんだが…」

 凄い殺気…まだ姿が見えないのに只者じゃない感じがする…


「そうか…」

 なら、久しぶりに本気を出すしかないようだ……

 この土地の人に手出しなんか絶対にさせない!!

 お母様から引き継いできたこの、素晴らしい土地を!!


「ふはっ、どうやらやる気みたいだなぁ…いいぜぇ…あたしも力を出せなくてうずうずしてたところなんだよ…!!」

 と言うと、恐ろしい程凄い気迫が来た。

 これは……

 1000年前も見たことがあるような…そんな感じの……


 でもやっぱりこの式神、昨日居た感じからしてただ者じゃない……

 全盛期のウチより強いんじゃない?


 辺りがピリついてる……

 凄い、多分普通の人じゃ立ってられないくらいのそんな圧がくる……

「やばいかもなぁ…でも…!!」

 手を下にかざし……陣が浮き出る。

 そしてそこから、ウチの愛刀が出る。


 その名もムラサメ


 天を切り裂き、英気を吸い取る。

 聞こえは悪いがこの刀に切られたものは何がなんだろうと自身の力を吸い取られる。

 それが例え…神だろうと…!!


「その刀、ムラサメだろ?」


「へぇ、知ってるんだ」


「そりゃあ、1000年前の決戦の噂…知ってるからなぁ。まさか、ホンモノにお会い出来るとは!!」


「てことは……ウチの実力知ってるわけか」


「ご名答」

 再び圧が増す……

 やっぱり……これは……


「最強に…近い」

 全盛期のウチよりもっと強かった神がいたといとう。

 それがウチのお母様……

 それに近いこの圧……

 ほんとに、負けちゃうかもしれないほどだけど……


 でも!!


「やるしか…無いか」


「いいぜ、どっからでも来いよ」


「分かった……行くよ!!」

 と刀を鞘から出す

 その刹那、自分でも倒れてしまうほどの溜まった霊圧が開放された感じがした。

 相手は全然ひるむことは無いだろう……


 だけど!!

 これを使わないと、守れないのなら…!!


「おお、すげぇ……」


「はぁぁ……はぁ!!」

 刀を振り、風を切る。

 辺り一体が一瞬にして暗くなる。

 多分……停電させちゃったかな……

 でも、しょうがない。


 この式神を倒すためなら、なんだってやるしか………


「行くよ…」


「おう」

 ウチ達の間にはこの言葉だけで充分。

 そして、いついかなる時も戦いにおいて慈悲など不要。

 だからこそ、やる事はただひとつ。


 全力で……倒す!!


 そう思い、斬り合おうとしたその瞬間……


「やめてぇぇぇぇぇえ!!!!」


「なっ……」


「葵……」

 葵ちゃんが来て寸止めで事なきを得た……

 けど、一歩間違ってたらウチが死んでるかもしれなかった……

 それだけ、ムラサメの力を使っても倒せなかったのだろうと思う……


 いや…そうじゃないかもしれない。

 多分だけどこの式神は……

 ウチの実力を分かった上でこの勝負を仕掛けに来たのか……

 それとも葵ちゃんが、仕組んで来たのか…

 ほんとにわかんなくなってしまう……


 一体これは……どういうことなんだろうか……

 葵ちゃんは……何者なんだ?

 ただの陰陽師では無い気がしてきた……

 ほんとにそれだけしか考えられないけれど……


 ー数分後ー

「まずは……その、ごめんなさい!!」


「い、いいんだよ……別に……」


「だって…澪さんが守りたいって言ってた場所を壊しかけて……」


「まあまあ……それはいいんだよ」


「…よく、ないです」


「はいすみません…」

 まあ…お母様が守りたいって言ったからかこの子にとっても傷付けてはいけない場所だと分かったのか、多分それだけ怒っているんだろうな。


「それに、カンナちゃん?忘れ物取りに行ってとは言ったけど澪さんを殺してとは頼んでないよ?」


「それは……その……」


「何?言い訳?」


「いや……違う……すまん……」


「よろしい」

 どうやら、この式神…カンナと呼んでいるこの子は葵ちゃんに頭が上がらないみたいだ。


「それで……どうしようかな…あのノート見ちゃったんですよね……」


「そういえば……そうだね」

 思い出せば、多分ウチのことしか書いてなかったからな。

 すっごく恥ずかしいんだけど……自分で見てて……


「見ちゃったのなら、話そうかな…」

 悲しい顔……

 いや恥ずかしい感じの表情を浮かべる。

 別に無理して話さなくてもいいのに……


「無理して話さなくても……」


「ううん、いいんです。何れは話さないといけないと思ったんですから」


「そっか……」

 そういえば……まだこの子のこと全然知らない

 あのノートだけじゃ、やっぱりまだこの子のこと分かってない。

 だから……聞こうじゃないか。

 この子の事を。


「そうですね…私の生まれとどうしてこの日記を書こうとしたのかを今日は話しますね」


「うん」


「カンナちゃんにはもう話したから多分聞き覚えはあるだろうけど……」


「あぁ、そうだな。まああたしは、とりあえず誰か来ないか見張っておくぞ」

 と言い何処かに行ってしまう。

 結局この子の姿はモヤにかかってて全然見えなかった……

「ありがとっ、それじゃあ…私の生まれから話そうかな」


『私の生まれは、西園寺家っていう代々陰陽師の家なんです

 恐らく、あのノートを見て薄々分かったと思いますが……』


『それは……そうなんだけど私を殺そうとした西園寺家……その末裔なんだよね』


『はい、そうですけど?』


『いや、それはいいんだけど…どうして私なんかと……』


『それを今から話しますよ、まあ明日になるかもしれませんが……』


『うん』


『話を戻します、私は西園寺家の娘として産まれました

 産まれた時は、やはり良い顔をされなかったみたいです

 また、霊力の無い子供が産まれた……と

 でも、そうじゃなかった』


『そうじゃ……なかった?』


『ええ、私は神様が生まれつき見えてたんです

 霊とかは全く見えませんが、神様だけはハッキリと

 なので、何も無いところで時々笑ったり話したりしたということを聞いたことがあります』


『そうなんだ……』


『それから、成長した私は霊を見るために色んなことをされました。視力を弄られたり、呪具を使ってなんとか適合させようとしたり、呪言の種類を覚えさせたり、式神の扱い方、陣の出し方、霊媒師の所に連れてかれて憑いてるものを払おうとまでしたみたいです

 でも、それをしたところで私は霊が見えるようになる訳ないんですよね』


『そう……だよね』


『まあ……澪さんが思ってる通り、私の家はそれだけ没落してしまったんですよ

 結局は、私が産まれるその前からもう家は廃れていると聞いていましたがほんとにその通りでしたね』


『それで……葵ちゃんは』


『まあ……察しの通り家から出ていきましたよ。追い出された、という方があっていますが』


『酷い……』


『あはは……慣れてます。それに、この日記をなんで書き始めたかっていうのは……いつか私があの酷い家で死ぬ時にふざけんなって顔して貰いたいからですよ

 なんせ、神様が見える貴重な人間を殺してどれだけ勿体ないことしてるんだろうと嘲笑うための……ちょっと性格悪いノートですが……』


『ううん……そんな事ない、それぐらいしてもいいと思う』


『えへへ……ありがとうございます。でも、このノートにはまだ見られて欲しくない部分が沢山あるんです』


『例えば……?』


『んー……契約の儀の内容……とか』


(それは見なくてよかった……)


「まあ……私の事、ノートを記していた理由はこんな感じかな……」

 と幻影の陣を解除する。

 どうやら、この子の幻を知らない間に見せられていたようだ。

 神が気付かないほどの実力…流石だ。


「すみません……陣を使ったので少し眠く…」


「ううん、大丈夫。また明日おいで?」


「い、いいんですか?」


「うんっ、もっと君のこと知りたいから」


「それでは……遠慮なく……」

 と立ち上がろうとするけどふらついてる。

 危ないから支えたけど凄い脱力感……

 それと一緒に襲ってくる、軽い感じ……

 ほんとに、酷い。


「ったく、無茶しやがって…」


「すみません…あとは、お願いします」

 と言い葵ちゃんを任せる。

 てかどこからやってきたんだ……

 カンナちゃんもほんとに怖いな……

 とりあえず……安静にしててね、お願いだから……


「なんであんたが謝るんだよ…」


「えへへ、つい…」


「まあ、いいけど…あ、それと」


「はい?」


「お前、もう時期《《死ぬぞ》》?」

 バレたか………

 というか……こんなにすぐ消えることが…バレるなんて


「……やっぱり、気付かれましたか」


「いいのか?」


「……はい、覚悟の上です」


「わかった……葵には伝えないでやるよ」


「ありがとうございます」


「おう…」

 と、ウチの前から消え去った。

 もう……この身体……もたないんだ……

 そう思うと脱力してしまう……


 でも……


 最後まで、この土地のために……捧げるんだ……


 その前に、一眠りつこう。


 to be continued

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