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お金と紙と価値と

作者: 武田道子

お金と紙と価値と



お金がない

お金が欲しいのではない

ただ単純にお金がない

お金って一体なに?

昔々は金や銅だった

それから金が紙に変わった

一体どういうこと?

金と紙とは化学的に見ても

実物を見ても

どう逆さに見ても

共通点なんてなにもない

それがあるんですよ

人間が作った何だか知らない

こじつけた理由

その名は「価値」

ふむふむ・・なるほど

でも、さっぱりわからない

ほんの少し感動する

意味のない物に意味を持たせる人間に

ただ感動する

人間は馬鹿なのか優れているのか



お金がない

紙の束がない

(きん)は少しだけ持っている

細い金の結婚指輪

これの価値はどうつけるのか

無言の協定

いや、神前で誓いごとはしたのだった

この細い金の指輪を死ぬまで

薬指につけていることを

一生の誓い、きっと無限の

「価値」があるはず



お金がない

金の指輪と紙を交換しようか

・・・ふと思う

昔の定期券入れのような薄い財布

プラスチックのカード

携帯が発信する金のありか

ビットコイン

影も形もないが「価値」が存在する

信じるって恐ろしい

信じることで人は

こうして生きてきたのだ

物語を作り、物語の主人公になり

人間って純粋なところがある



小鳥たちは庭に飛んできて

高らかに歌を歌う

木々は伸び

花々は手入れをしなくても咲いてくれる

頭上の空は誰のものでもない

街の雑踏、誰も知らない人たち

私も誰かの誰も知らない人

同じ街に住んでいる

同じ時間と次元に

存在して生きていることが「価値」ならば

未来をただあるものだと信じていることは

仮想の価値を信じていることになるのだろうか



人の人生は

金のように高価な鉱石

紙幣(かみ)のように薄っぺらく儚い存在でもあり

未来のまるで予想できない仮想を創り上げ

「価値」という不確かなものを

(まこと)しやかに信じている

不思議な価値を持つ存在


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