卒業パーティで婚約破棄したら財産没収して平民落ちにする法律作ったら国が滅んだ
【卒業パーティ婚約破棄禁止法】
一、卒業パーティで婚約破棄した者はその身分及び婚約破棄の理由を問わず平民に落とし財産没収とする。
一、例え婚約の事実が無くとも、婚約破棄を宣言した者は婚約破棄をした者として上記の罰を受けるものとする。
一、婚約破棄で平民となった者は、今後いかなる手段を持っても元の地位への復帰は認めない。ただし、平民としての働きで得た報酬で地位を新たに獲得するのは認める。
一、他の法律とこの法律で対立が発生した場合、この卒業パーティ婚約破棄禁止法を優先するものとする。
「これでよし。これでこの王国では卒業パーティの婚約破棄は起こらんじゃろ」
とある王国で、卒業パーティでの婚約破棄に対して厳罰を与える法が発表された。これで、この国は卒業パーティの婚約破棄で滅ぶパターンは避けられる。ここまでして婚約破棄する奴はおらんやろと、人々は安心した。
だがしかし!卒業パーティの婚約破棄は起こってしまった!それは、法律の事を忘れたおバカ王子達によって…ではない!
平民未満の身分の者達による婚約破棄だった!
「へ、陛下!大変です!卒業パーティ会場に犯罪奴隷・山賊・修道院からの脱走者・逃亡犯が一斉に集まり婚約破棄しています!」
「何でっ!?」
「陛下の作ったアホな法律のせいですよ!あれのせいで平民より身分の低い奴らは卒業パーティに乗り込んで婚約破棄したら平民になれると思って突撃して来たのです!」
「なれる訳無いじゃろ!」
「なれちゃうんですよ!この法律文をそのまま読み込めば!」
国王は自分の作った法律の文面を何度も確認した後、あっちゃーと呟き、自分の額をペシリと叩いた。
「やっちゃったぜ!」
「どーするんですか陛下!」
「前科とか会場への侵入の罪で全員処してよくね?」
「ダメです!他の法律に対して婚約破棄禁止法は優先されます!侵入して来た奴らは全員が自分を王太子と主張し、適当な他者を悪役令嬢と呼び婚約破棄してます!よって、卒業パーティ婚約破棄禁止法が適用されます!」
「ちくしょう!取り敢えず現場に行くぞ!」
国王は大臣のケツバットで会場まで飛んでいくと、そこには地獄絵図が広がっていた。
「俺は脱走兵だけど今日は王太子だ、そこのお前は悪役令嬢だから婚約破棄する。ヒャッハー!これで自由の身だー!」
「私は昨年婚約破棄騒動で修道院送りになった男爵令嬢だけど、今年出た法律の方が刑罰緩いからここまで来たの!さあ、婚約破棄するわよーっ!」
「勇者の仕事なんてやってられません!聖剣抜けても抜けなくてもロクな目に遭わないです!そんな愚痴を言ってたら、バーガー屋の人がこんな良い方法を教えてくれました!ちよりゃー!婚約破棄ですよ!」
最悪が広がっていた。この国に害をもたらす者達、苦難に立ち向かう義務を負った者達、そういった連中が全員過去をリセットして平民として居座る!
「は、はわわ」
未来に広がる絶望を目の当たりにした国王は膝から崩れ落ちる。その音に気付いた、自称王太子数十人が一斉に彼の方を向いた。
「「「ち、ちちうえ。いつのまにー(棒読み)」」」
「…やかましい」
「「「わたしは、どうなってしまうのでしょつかー(期待の眼差し)」」」
「お前ら全員平民だこの野郎。だって法律にそう書いちゃったもん」
「「「そ、そんなあ(大歓喜)」」」
自分をこの国の王太子と思い込んだフリをしているド底辺達は、ニッコニコの笑顔で衛兵に引きずられていった。
「終わった。この国終わったよ。ワシが終わらせちゃったよ」
国王の言葉通り、この国はこの後に平民となった犯罪者がまた暴れたり、勇者不在による他国からの責任追及で、っちもさっちもブルドッグもどうにも行かなくなり、数ヶ月で地図から消えた。一説によると、法律の穴に気付いた敵対国が平民未満の者達を扇動したとも言われているが、真実は定かでは無い。