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第8話 出会いと別れ



ーーガタガタ


 僕はあれから村を避ける形で最前線から遠く離れた村へ向かい馬車を雇った、馬車に揺られてもうかなりの日数が経過している。


 そろそろお尻が限界だ……ある程度整備されている街道だが、王族や貴族が乗るそれとは違いつくりも質素でだいぶ揺れる。


「おじさん、そろそろ馬を休ませてあげた方がいいんじゃない? それに、そろそろお昼時だよ?」


「ん? ああ、確かにそうだな! だがよ、坊主はいいのか?」


「はい! ゆっくりでも問題ないよ! あんまり走らせても馬がかわいそうだからね!」


「坊主は優しいな! しかしオメェみたいな年端もいかねぇ坊主が一人旅なんてなぁ……坊主! ワリィ奴に騙されんなよ?」


 御者のおじさんが馬に水と餌をあげながら僕に話しかけてきてくれる。


「オメェ冒険者になりたいんだろ? 坊主にも色々理由があんのかもしんねぇけどよ……冒険者なんてぇのは荒くれ者の集まりだ……ガキを騙して奴隷にするなんてのもザラにあるからなぁ……」


 この御者のおじさんはいい人で僕のことを色々気にかけてくれる、最初に会った時は顔も怖く旅の出だしからどうなるだろうと不安だったのだが……今ではすっかり打ち解けた。


「ありがとう、おじさん……でも大丈夫だよ! これでも僕、鍛えてるからね!」


「ハッハッハッ! 坊主みてぇな子供に言われてもな……まぁ、あと3日ぐらいで目的地に着くからよ……心の準備でもしておきな!」


 休憩が終わり再び馬車が走り出すと僕はズキズキ痛むお尻をさすりながら新しい生活に不安と期待感を抱き目的地に思いを馳せた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「坊主! そろそろ起きろ! 街が見えてきたぞ!」 


「う……ん……もう目的地に着きそうなんですか?」


「ああ! あれがこの世界で一番安全って言われてる“リオグライト”だ!」


 馬車の窓から顔を出して前を見ると遠目からでも大きさが分かる城壁が街の規模を教えてくれる……。


「うわぁ〜!!! すごい!! ここからでも街の大きさが伝わってくる!! おじさん! 僕早くあの街に行きたい!!」


「おうよ! 少し飛ばすからつかまってな! 」


ーーザワザワ


「いやぁ参ったな……坊主、残念だがこりゃかなり待つぞ? いつもはもっとすんなり入れるんだがな……検問場がこんなに混んでるとは……こらぁ何かありやがったのかもな」


「何かって?」


「そうだな経験上こういう時は魔族が街に紛れ込んだとか街の中でとんでもねぇトラブルが起こったんだろう」


「海沿いにある街で交易も盛んな場所だ……兵士の数も他の街とは比べ物にならないし警備も厳重……だから何かあればすぐに大ごとになっちまうのさ」


 やはり魔族は人類に受け入れられていないんだ……。 ゾフィーさんは大丈夫かなぁ。


「坊主も厄介な時に来ちまったなぁ……まぁ、心配すんな! ここに常駐している王国の兵士たちがなんとかしてくれるだろうよ! 王国の兵士は精強で有名だからな!」


「そんなに強いんだ……どれぐらい強いの!?」


「うーん……そうだな……俺が聞いた話だと王国兵の中でも特に強い奴等はたった四人でハイオークを倒しちまったんだってよ! まぁ二人死んだって話だがな……」


 ハイオーク……見た事は無いけどキングオーガより強いのかな……そんな強いモンスターを四人で倒しちゃうなんて……やっぱり外の世界は強い人が沢山いるんだ……。


「世界は広いねおじさん!」


「オイオイ、ガキがなーに言ってやがる、世界の広さを知るのはこれからだろ? 冒険者の中には伝説のドラゴンを一人で倒しちまった奴もいるみたいだからな……」


「なぁ……坊主……どうしても冒険者になるのか? 正直なところ俺は……」


「次!! 通行証を提示しろ!!」


「ああ……これでいいか?」


「行ってよし!! 次!!」


「おじさん、さっきなんて言ったの? よく聞こえなかったんだけど……」


「ああ? いや……何でもねぇ……とにかくここでお別れだな坊主……冒険者になりてぇなら一つ助言だ」


「“死ぬな”死んだらそこで終わりだ……だが死ななけりゃ次がある」


「生き汚さを覚えろ、人間は弱ぇ……魔物みたいな牙も無ければ魔族みたいに馬鹿みてぇな魔力も身体能力もねぇ、だがな生き汚なさだけは誰にも負けちゃいない」


 “だから頑張れよ! 死ぬんじゃねぇぞ!”


「おじさん……僕……」


 おじさんのしゃがれた声が遠くなる……僕が旅立ち初めて会った人……人混みに消えて行くおじさんを見ていると、咄嗟に声が出た……。


「おじさーーーーん!!!!! 僕、頑張るから!!!!!! おじさんも元気でね!!!!!」


 街ゆく人が突然の大声に振り返るが人々の奇異の視線が意識の中に入ってくることはなかった。


 人の波に消えて行く、いつも無愛想なおじさんは、僕の方を振り向き“フッ”と笑ったような気がした。


 さて! 別れを惜しむのはここまでだ! まずはギルドに行って冒険者登録しなきゃ! 


 えっと……確かおじさんの言っていた話だと……街の北側にあるんだったけ? もう、太陽が天上に昇ってるし……急がないと!。


ーーーーーー《冒険者ギルド》ーーーーーー



「ここが冒険者ギルド……思ってたより大きい建物だ……すごい! 」


 古びたドアが開く……


ここから少年の全てが始まった。


〜終〜


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