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Prologue

初投稿です。

 強い雨音が支配する昼下がり。

 灰色の雲に覆われた街は薄暗く、人の気配も殆ど無かった。


 濡れてぬらぬらと反射する石畳。そこに水を叩く足音と、ひどく乱れた呼吸音が響く。


 エヴァ・ガーデナーは、裏路地をひた走っていた。

 嵐の痛みに顔を顰めながら。

 コーラルオレンジの髪は水を吸って暗く沈み、顔や首筋に張り付く。彩度の高いアンバーの瞳だけが、鈍色の世界で鮮やかな光を纏っていた。


 汚れた外壁に行き当たったところで左を向けば、人ひとりがやっと通れるくらいの細道。その奥に人影がひとつ。フード付きのローブを纏っている。


(居た!)


 エヴァは息を整えながら近づいていく。


 本当にいた。

 彼がそこにいた。

 激しい雨の中、一切濡れることなく。

 目を凝らせば、黒いローブに染みるはずの雨粒が、触れる直前で弾かれて仄かに光っている。


「防御魔法……」


 震えるエヴァの唇から不確かな驚きが漏れた。


 今の時代、魔法どころか魔力を持つ者自体がとても珍しい。知識として学ぶことはあっても、若い世代にとって魔法や魔力は遺物と化している。


 そんな若者の一人であるエヴァは、相手の顔を恐る恐る見上げた。大きなフードを被った魔法使いの表情は窺い知れない。

 切羽詰まった緊張感を抱えるエヴァに対して、彼は何の感情も示さない惰性のようなセリフを吐いた。


「いらっしゃい、お嬢さん。ご用件をどうぞ」


 男にしては高めの涼やかな声色。

 意外だ、と頭の片隅でぼんやり思う。

 そのおかげか、護衛も付けずにこのような場所までやってきた恐怖心も少し和らいだ。


 夢じゃなかったのだ。

 魔法使いは本当に……。


 エヴァは心を決め、今度こそはっきりと言葉を放った。


「どうかお助けください。私の婚約者を」


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